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ツィリル編
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--半年後。
謁見の間に集まったのは父と母と私。そして進行役の宰相。
対面するのは汗を拭きながら恐縮しっぱなしのシャロドア伯爵と夫人。そしてフラヴィ嬢。
「王国の太陽であらせられる陛下にお会いできた事を嬉しく思います。本日、デネソール・シャロドア並びに妻のアシュレイ、娘のフラヴィが命により参上致しました」
「シャロドア伯爵、突然呼び出してすまないな。実は打診していたあの話だ。受けてくれて嬉しく思う」
あれから父と母に私から話をした。
父達はやはり後ろ盾がない事や派閥の中で令嬢を選ぶ事に拘っていた。教会からも聖女を押す声も煩かったのだとか。
なんなら弟を王太子にしても良かったのだが、それは認められないようだった。
そして彼女を認めた最大の理由はやはり魔法が使えるようになった事も大きい。
母は薄い緑、父は黄色に赤い毛が一束入っていた。両親にも魔力がある事を伝えた。
母は魔法をほんの少しだけ使う事が出来るようになったが植物魔法なので自分の庭にあるお気に入りの花を元気にさせる事しか出来ずにぼやいていた。
父はというと、光魔法が使える様になった。残念ながら生まれてから使う訓練をしてこなかったため今の聖女程度の治癒魔法や解毒魔法しか使えない。
が、とても喜んでいた。
もちろん魔法が使える事は秘密となった。
魔法が使えるのは大きな事だ。
いまのうちから魔法が使える者を囲い込みたいとの考えだったのだろう。
今後はより魔法使いを増やすために貴族に幼少期より魔法の訓練が課されるのかもしれない。
そして父へ私から流す魔力、アレフィオから流す魔力、グリーヌから流す魔力の違いに気づいて貰った。
魔法の事を理解してもらい、ようやく彼女を婚約者に認めてもらったんだ。
そして伯爵家に打診をしたのだが、一度伯爵に断られた。
理由は娘には苦労を掛けっぱなしで結婚くらいは好いた相手と結婚をさせたいと。
貴族にしては珍しいが子を大切に思っている事がとても伝わった。
私の親とは大違いだな。
そこで私は伯爵に打診をしつつ、フラヴィ嬢とも仲良くなる事を決めた。
もちろん仲良くなる事はいいこと尽くめだろう。
彼女も最初は王太子である私に遠慮をしていたけれど、一緒に訓練を行っていくうちにお互い理解が進んでいった。
彼女は才女と謳われていたが、そこに人には見せない努力があった。
とても優しくて気遣いがあってやはり魔力の形がしっくり合ったように私には無くてはならない存在だと思わせる。
彼女も会って話をしていく内に私の事に興味を持ってくれた。
どうやら彼女は絵本に書かれていた魔法使いの話を読んで自分も魔法使いになりたいと思っていたようだ。
伯爵家は弟が継ぐための費用を貯めなければならず、自分は領地で働きながら学校に通っていたらしい。
そこで王宮から魔法使い募集の話を聞いて夢だった魔法使いになって伯爵家のために働こうと思っていた。
少しずつ距離を詰めていき、ようやく今日という日に漕ぎ着けたのだ。
「ツィリル王太子との婚約、二年後に婚姻で構いませんかな?」
宰相の言葉に伯爵は構いませんと返事をする。すると、フラヴィ嬢は疑問に思っていた事を口に出した。
「すみません。我が家は貧乏伯爵家。王家の後ろ盾となるような財産はありません。それでも構わないのでしょうか?」
「あぁ、それについてはこれから話そうと思っていた所だ。現在、屑宝石と呼ばれている魔獣から取れる石を知っているか?」
父の言葉に頷く伯爵。
「あれを大小構わずに全て買い集めるのだ。無くなれば領地の魔獣を狩って魔石を採るのがいいだろう」
「あれを集めてどうするのでしょうか?」
「うむ。その魔石は魔法を込める事が出来るらしい。魔法が込められた石は様々な場面で使用する事ができる。
伯爵であれば水魔法が使えるらしい。水魔法が込められておれば、騎士団の水補給に大いに助かる。
普段の湯浴みも問題なく出来るし、魔獣討伐にも使えるそうだ。
魔石に魔法を込めて売る。残念ながら今はフラヴィ嬢しか出来んが、幼い息子もおるのだろう? 今から訓練すれば十分に使えるとツィリルは言っておるな。
ああ、伯爵は強制だ。魔法を覚えるように」
「私も、扱う事が出来るのでしょうか……?」
伯爵は降って湧いたような話に驚きながらも興味津々とばかりに聞いてきた。
「少しだが使える様になるだろう。フラヴィ嬢の疑問には答えられたかな?」
「有難うございます」
「もちろん、現在はツィリルの護衛であるアレフィオやグリーヌが火と植物の魔法を魔石に込めている。シャロドア家で水魔法を込めていけばいい収益となるだろう。水は生活に直結する分、需要は高い」
王家も一枚噛んで儲けるつもりだろう。
父も母もそうした上で婚姻の許可をしたのが分かる。伯爵はその話を聞いてホッと胸を撫でおろした。
「フラヴィ嬢! 今から結婚が楽しみだ」
「ツィリル王太子殿下、これから殿下のことを精一杯支えていきますので宜しくおねがいします」
こうして無事に婚約者となった。
謁見の間に集まったのは父と母と私。そして進行役の宰相。
対面するのは汗を拭きながら恐縮しっぱなしのシャロドア伯爵と夫人。そしてフラヴィ嬢。
「王国の太陽であらせられる陛下にお会いできた事を嬉しく思います。本日、デネソール・シャロドア並びに妻のアシュレイ、娘のフラヴィが命により参上致しました」
「シャロドア伯爵、突然呼び出してすまないな。実は打診していたあの話だ。受けてくれて嬉しく思う」
あれから父と母に私から話をした。
父達はやはり後ろ盾がない事や派閥の中で令嬢を選ぶ事に拘っていた。教会からも聖女を押す声も煩かったのだとか。
なんなら弟を王太子にしても良かったのだが、それは認められないようだった。
そして彼女を認めた最大の理由はやはり魔法が使えるようになった事も大きい。
母は薄い緑、父は黄色に赤い毛が一束入っていた。両親にも魔力がある事を伝えた。
母は魔法をほんの少しだけ使う事が出来るようになったが植物魔法なので自分の庭にあるお気に入りの花を元気にさせる事しか出来ずにぼやいていた。
父はというと、光魔法が使える様になった。残念ながら生まれてから使う訓練をしてこなかったため今の聖女程度の治癒魔法や解毒魔法しか使えない。
が、とても喜んでいた。
もちろん魔法が使える事は秘密となった。
魔法が使えるのは大きな事だ。
いまのうちから魔法が使える者を囲い込みたいとの考えだったのだろう。
今後はより魔法使いを増やすために貴族に幼少期より魔法の訓練が課されるのかもしれない。
そして父へ私から流す魔力、アレフィオから流す魔力、グリーヌから流す魔力の違いに気づいて貰った。
魔法の事を理解してもらい、ようやく彼女を婚約者に認めてもらったんだ。
そして伯爵家に打診をしたのだが、一度伯爵に断られた。
理由は娘には苦労を掛けっぱなしで結婚くらいは好いた相手と結婚をさせたいと。
貴族にしては珍しいが子を大切に思っている事がとても伝わった。
私の親とは大違いだな。
そこで私は伯爵に打診をしつつ、フラヴィ嬢とも仲良くなる事を決めた。
もちろん仲良くなる事はいいこと尽くめだろう。
彼女も最初は王太子である私に遠慮をしていたけれど、一緒に訓練を行っていくうちにお互い理解が進んでいった。
彼女は才女と謳われていたが、そこに人には見せない努力があった。
とても優しくて気遣いがあってやはり魔力の形がしっくり合ったように私には無くてはならない存在だと思わせる。
彼女も会って話をしていく内に私の事に興味を持ってくれた。
どうやら彼女は絵本に書かれていた魔法使いの話を読んで自分も魔法使いになりたいと思っていたようだ。
伯爵家は弟が継ぐための費用を貯めなければならず、自分は領地で働きながら学校に通っていたらしい。
そこで王宮から魔法使い募集の話を聞いて夢だった魔法使いになって伯爵家のために働こうと思っていた。
少しずつ距離を詰めていき、ようやく今日という日に漕ぎ着けたのだ。
「ツィリル王太子との婚約、二年後に婚姻で構いませんかな?」
宰相の言葉に伯爵は構いませんと返事をする。すると、フラヴィ嬢は疑問に思っていた事を口に出した。
「すみません。我が家は貧乏伯爵家。王家の後ろ盾となるような財産はありません。それでも構わないのでしょうか?」
「あぁ、それについてはこれから話そうと思っていた所だ。現在、屑宝石と呼ばれている魔獣から取れる石を知っているか?」
父の言葉に頷く伯爵。
「あれを大小構わずに全て買い集めるのだ。無くなれば領地の魔獣を狩って魔石を採るのがいいだろう」
「あれを集めてどうするのでしょうか?」
「うむ。その魔石は魔法を込める事が出来るらしい。魔法が込められた石は様々な場面で使用する事ができる。
伯爵であれば水魔法が使えるらしい。水魔法が込められておれば、騎士団の水補給に大いに助かる。
普段の湯浴みも問題なく出来るし、魔獣討伐にも使えるそうだ。
魔石に魔法を込めて売る。残念ながら今はフラヴィ嬢しか出来んが、幼い息子もおるのだろう? 今から訓練すれば十分に使えるとツィリルは言っておるな。
ああ、伯爵は強制だ。魔法を覚えるように」
「私も、扱う事が出来るのでしょうか……?」
伯爵は降って湧いたような話に驚きながらも興味津々とばかりに聞いてきた。
「少しだが使える様になるだろう。フラヴィ嬢の疑問には答えられたかな?」
「有難うございます」
「もちろん、現在はツィリルの護衛であるアレフィオやグリーヌが火と植物の魔法を魔石に込めている。シャロドア家で水魔法を込めていけばいい収益となるだろう。水は生活に直結する分、需要は高い」
王家も一枚噛んで儲けるつもりだろう。
父も母もそうした上で婚姻の許可をしたのが分かる。伯爵はその話を聞いてホッと胸を撫でおろした。
「フラヴィ嬢! 今から結婚が楽しみだ」
「ツィリル王太子殿下、これから殿下のことを精一杯支えていきますので宜しくおねがいします」
こうして無事に婚約者となった。
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