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 翌日、私は陛下と共に城の最深部へと向かう。どうやら第一王子や王女は母親の態度からそれとなく察してはいた様だけれど、王妃様の口から語られた真実に衝撃を受けたらしい。

私が母に会いに行く事が決まってから王子達は付いて来ようとしていたらしいけれど、陛下の一声で諦めたみたい。


 最深部は石造りになっていて暗い牢獄を思わせるような作りになっていたが、中央部の魔法陣だけは青白く浮かび上がり、部屋全体がその光の反射でほのかな灯りが付いているような明るさだった。

魔法陣の中央には母が眠っていた。

深い眠りに付いているせいか、結界のせいか母は歳を取っておらず、20歳そこそこに見える。私は母が寝ている術式をそっと読み解く。

……古い術式だわ。

前世の中でも古いとされる術式の知識を思い出す。 

 母がここで寝ている限り母の魔力を使い結界を維持している事になっているのね。母の魔力が回復しないのは結界のせいだと判明したわ。

魔人の方はどうかしら。

 私は目に魔力を流し、魔人の影響を読み解く。影響するものはもう残っていないわ。けれど、魔法陣の中で抵抗したせいね。

魔人は結界に取り込まれないように抵抗し、母を引っ張ったせいで結界に母の精神の一部が引き込まれているわ。目覚めないのはそのせいね。

 前世の私は呪いの解呪方法や結界の術式に手を加える方法は分かっても魔力が足りなかったわ。でも、今は母を助けるほどの魔力を持っている。

「陛下、少し離れていて下さい」

「どうする気だ」

「魔法陣に魔力を流し、母を助けます」

「何百年前の術式をいじるのか?」

「ええ。魔人の影響を受けた術式は読み解けました。詳しくは後で報告しますから。では、入り口付近まで下がって下さい」

 陛下に下がるように促し、移動したのを見届けてると魔法陣に魔力を流し始める。

母の精神を引き込んでいる部分には特に丁寧に魔力を流す。私が触れている部分から淡い光が波紋のように広がった。

途中、結界は少し揺らいだけれど、結界が母の精神を引き込んでいる部分を直す事が出来た。

後は私の魔力をありったけ流し込む。これで当分は結界が維持できるわ。ふらふらになりながらも母を魔法陣から引っ張りだす。

その様子を後ろから見ていた陛下が慌てて駆け寄る。

「お母様。起きて。目覚める時間よ」

陣の外に母を出した後、私の残りわずかな魔力を少しずつ母へと流す。

陛下も母の魔力が枯渇している事に気づき、私の代わりに母を抱きながら魔力を流し始める。母の体内に陛下の魔力が行き渡り始めると母は微かに動いたわ。

陛下は魔力を止めて様子を見ている。

「陛下。もう少しで母は目覚めます」

「ソフィ。凄いな。短時間であの魔法陣を読み解くとは。ソフィも魔力が底を突きそうな程の魔力を使ったのだな。部屋で少し休むといい」

 陛下はそう言って母を抱き抱えると結界のある最深部から部屋へと戻る。

私は城の通路で待機していたルイに支えられながら自室に辿り着き、ベッドへ寝かされる。

「何があったんだ。こんなに青い顔をして。ソフィの魔力が空っぽじゃないか。俺の魔力を少し分けるから。少し休まないといけないな」

「ルイ。有難う。もう限界、ね、るわ」



 意識を手放してからどれくらい経ったのかしら。魔力は半分程度回復をしている。目覚めた事に侍女が気づいた様で飲み物を持ってきてくれた。  

侍女に聞くと、私は丸一日は寝ていたみたいね。

母の具合はどうかしら。侍女に聞いてみるが、もうすぐ陛下から呼ばれるとの事で教えて貰えなかったわ。

しばらくしてから私は陛下に呼ばれて部屋を出る。

もちろん、ルイは私を支えるようにエスコートしながら。陛下の待つ部屋へと入ると、そこには陛下と母の2人が居た。

 母を見るとやはり王妃とされるだけあってとても美しい。私も似てるはずたがら美人だとは思っているけれどね。

「ソフィよ、フィラが目覚めたぞ」

陛下は満面の笑みで私を迎える。

「ソフィ。こちらへいらっしゃい」

「はい。お母様」

ルイのエスコートを離れ、そっと母へと近づくと、母はギュッと私を抱きしめた。
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