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「リヴィア様、お待たせしました。この街の食糧自給率と農家の詳細です」
ティポーが役所から持ち帰ってきた書類に目を通す。
この街の自給率は六十パーセント程。主に野菜が栽培されているようだ。小麦を生産している農家はいるが、小麦の産地から取り寄せているらしく数は少ない。
「ティポー、私のドレスと装飾品を売ってちょうだい。そのお金で農家の小麦畑を買い取るのと小麦の増産をしたいわ。後、塩も取り寄せて欲しいわ。父からのお金はあとどれくらいあるかしら?」
「全ての小麦を買い付ける分には足りませんが、まとまった数は買えます。後で手配しておきます」
こうして指示は速やかに行われていったわ。何もないと良いのだけれど。
庭の畑もジャガイモや人参、玉ねぎ、小麦など長期間保存できる野菜を育てている。
「ロン、ごめんね。大事な庭の花たちを野菜に変えてしまって」
「リヴィア様、むしろ私たちの事を気遣ってくださるばかりでこっちが心配になります。リヴィア様、最近あまり睡眠を取られていないのでしょうか? 顔色が悪い。後でダリアに庭で採れたハーブを渡すのでお召し上がりください」
「最近、そうね。こうして動いていないといけない気がして。ダリアにも怒られたばかりなの。少し休むようにするわ」
私はロンや他の使用人たちからも心配されているようだ。でも、常に何かを考えて動いていなければいけないような気がするの。
焦燥感や不安に駆られる感じ。
私はまだ第二王子のドルク様と婚姻せず一国の王女が離宮で細々と過ごしている状態だ。戦争が始まれば属国の人質として扱われるかもしれない。
たまに届くシャーロット妃からの手紙には国内の情勢が書かれている。シャーロット妃は自分が第二王子の妃なので直接政治に関わることができないことを歯がゆく思っているようだ。
そして、自分の領地に帰ることが許されていないため怒っている。
今は現公爵が対応しているが、シャーロット妃に領地へ戻り、指揮を取るように言ってきているのだとか。
そしてドルク様はというと、他人事らしく愛妾と毎日遊んでいるようだ。
戦争が起きた場合の話も書いてあった。
シャーロット様はドルク様を捨ててすぐに領地へ向かうらしい。今はその準備をしているのだとか。
戦争が起きれば彼らは王宮の事で手一杯となり、離宮まで手が回らないだろうから、なんとしても生き抜いて欲しいと。
シャーロット様の気遣いが本当にありがたいわ。私はすぐに返事を書いた。
戦争が起これば治安は悪化する。
シャーロット様の護衛たちだけで領地まで戻る事が可能なのか?
領地ではどのような対応をすれば生き残ることが出来るのか。
思いつく限りの逃げ延びる方法を紙に書き出し、検討した後、シャーロット様への手紙にしたためる。
どうか無事でありますようにと願いを込めて。
こちらの方も準備を怠らないようにより一層気を引き締めていく。
そこから約四ヶ月。
シューンエイゼット国の外交官とカインディール国の宰相が話し合いを続けているが、結果は芳しくないようだ。
国境付近で睨み合いの状態が続いており、いつ戦争の火蓋が切られてもおかしくはない状況らしい。
このまま戦争が始まれば、勢いのあるシューンエイゼット国が勝つのが目に見えている。シャーロット様はどの時点で王宮を離れるのだろうか。
離宮の方はというと、作物も育ち始めもう少しで収穫が可能になる。
邸に働きに来ている者たちも毎日基礎訓練を欠かさずに行っている。その動きは街にも波及してきている。
やはり街も戦争が近づいているんじゃないかと漠然とした不安が人々の心を支配し始めている。
近くの村では盗賊が出たという話も出始めている。人々は不安で品物を買い漁り、一部では暴動も出始めていると商人たちが言っていた。
「リディア様、街長から面会の申請がありました。お会いになりますか?」
「ええ。会うわ」
街長はモニカに案内されサロンで待っていた。
「お待たせして申し訳ないわ」
「こちらこそリヴィア王女様にお会いできたことを嬉しく思います」
「挨拶はいいわ。用があるのでしょう?」
「は、はいっ。その、最近国の情勢が著しく悪化の一途を辿っています。自衛すればいいとは頭では分かっているのですが、具体的に私たちはどうすればよいか分からずに途方にくれているのです。
以前から何度となくティポーさんと話をしていたのですが、どうかリヴィア様のお力をお貸しいただければと思い……」
恐縮しながら話す街長。
ティポーが役所で様々な街の書類を持っていたのは街長のおかげなのね。
「街長様、いつも大事な書類を見せていただいてありがとうございます。おかげで私たちもどのように動くべきか考えることができました。私の考えでよければお話しいたしますわ」
戦争までもう時間はない。
私たちにできることは限られているのよね。それでもやらないよりかはマシ。
食料品の確保と治安維持が喫緊の課題といってもいいかもしれない。
離宮は食糧品を備蓄しているが、この備蓄もどこまで持つか分からない。
まず街民に備蓄の準備を促した後、治安維持のための巡回を増やす手はずを整えること、もしもの時の避難する場所の確保、避難民が押し寄せてきた場合の場所の確保など街長と話し合った。
ここは王都から少し離れている。
地理的に王都が先に攻撃を受けるためこの街を直接攻め落とす理由はないはずだ。
軍に対処するような設備もないし、軍隊もいない。防衛する術がないのよね。
王都が落とされればこの街は降伏するだけ。街の人にとっては王や一部の治める領主が代わるだけで問題ない。
だが、注意しなければいけないのは戦争によって避難してきた人たちがここに流れてくること。
この街の食糧事情を知り、集まってくる可能性がある。そうすれば治安は一気に悪化し、暴動、略奪が起こる可能性も出てくる。
不安は尽きないけれど、一つ一つ丁寧に対策をしていくほかない。
こうして何度も街長と話し合いをして街の方も戦争に向けた動きを取っていくことになった。
ティポーが役所から持ち帰ってきた書類に目を通す。
この街の自給率は六十パーセント程。主に野菜が栽培されているようだ。小麦を生産している農家はいるが、小麦の産地から取り寄せているらしく数は少ない。
「ティポー、私のドレスと装飾品を売ってちょうだい。そのお金で農家の小麦畑を買い取るのと小麦の増産をしたいわ。後、塩も取り寄せて欲しいわ。父からのお金はあとどれくらいあるかしら?」
「全ての小麦を買い付ける分には足りませんが、まとまった数は買えます。後で手配しておきます」
こうして指示は速やかに行われていったわ。何もないと良いのだけれど。
庭の畑もジャガイモや人参、玉ねぎ、小麦など長期間保存できる野菜を育てている。
「ロン、ごめんね。大事な庭の花たちを野菜に変えてしまって」
「リヴィア様、むしろ私たちの事を気遣ってくださるばかりでこっちが心配になります。リヴィア様、最近あまり睡眠を取られていないのでしょうか? 顔色が悪い。後でダリアに庭で採れたハーブを渡すのでお召し上がりください」
「最近、そうね。こうして動いていないといけない気がして。ダリアにも怒られたばかりなの。少し休むようにするわ」
私はロンや他の使用人たちからも心配されているようだ。でも、常に何かを考えて動いていなければいけないような気がするの。
焦燥感や不安に駆られる感じ。
私はまだ第二王子のドルク様と婚姻せず一国の王女が離宮で細々と過ごしている状態だ。戦争が始まれば属国の人質として扱われるかもしれない。
たまに届くシャーロット妃からの手紙には国内の情勢が書かれている。シャーロット妃は自分が第二王子の妃なので直接政治に関わることができないことを歯がゆく思っているようだ。
そして、自分の領地に帰ることが許されていないため怒っている。
今は現公爵が対応しているが、シャーロット妃に領地へ戻り、指揮を取るように言ってきているのだとか。
そしてドルク様はというと、他人事らしく愛妾と毎日遊んでいるようだ。
戦争が起きた場合の話も書いてあった。
シャーロット様はドルク様を捨ててすぐに領地へ向かうらしい。今はその準備をしているのだとか。
戦争が起きれば彼らは王宮の事で手一杯となり、離宮まで手が回らないだろうから、なんとしても生き抜いて欲しいと。
シャーロット様の気遣いが本当にありがたいわ。私はすぐに返事を書いた。
戦争が起これば治安は悪化する。
シャーロット様の護衛たちだけで領地まで戻る事が可能なのか?
領地ではどのような対応をすれば生き残ることが出来るのか。
思いつく限りの逃げ延びる方法を紙に書き出し、検討した後、シャーロット様への手紙にしたためる。
どうか無事でありますようにと願いを込めて。
こちらの方も準備を怠らないようにより一層気を引き締めていく。
そこから約四ヶ月。
シューンエイゼット国の外交官とカインディール国の宰相が話し合いを続けているが、結果は芳しくないようだ。
国境付近で睨み合いの状態が続いており、いつ戦争の火蓋が切られてもおかしくはない状況らしい。
このまま戦争が始まれば、勢いのあるシューンエイゼット国が勝つのが目に見えている。シャーロット様はどの時点で王宮を離れるのだろうか。
離宮の方はというと、作物も育ち始めもう少しで収穫が可能になる。
邸に働きに来ている者たちも毎日基礎訓練を欠かさずに行っている。その動きは街にも波及してきている。
やはり街も戦争が近づいているんじゃないかと漠然とした不安が人々の心を支配し始めている。
近くの村では盗賊が出たという話も出始めている。人々は不安で品物を買い漁り、一部では暴動も出始めていると商人たちが言っていた。
「リディア様、街長から面会の申請がありました。お会いになりますか?」
「ええ。会うわ」
街長はモニカに案内されサロンで待っていた。
「お待たせして申し訳ないわ」
「こちらこそリヴィア王女様にお会いできたことを嬉しく思います」
「挨拶はいいわ。用があるのでしょう?」
「は、はいっ。その、最近国の情勢が著しく悪化の一途を辿っています。自衛すればいいとは頭では分かっているのですが、具体的に私たちはどうすればよいか分からずに途方にくれているのです。
以前から何度となくティポーさんと話をしていたのですが、どうかリヴィア様のお力をお貸しいただければと思い……」
恐縮しながら話す街長。
ティポーが役所で様々な街の書類を持っていたのは街長のおかげなのね。
「街長様、いつも大事な書類を見せていただいてありがとうございます。おかげで私たちもどのように動くべきか考えることができました。私の考えでよければお話しいたしますわ」
戦争までもう時間はない。
私たちにできることは限られているのよね。それでもやらないよりかはマシ。
食料品の確保と治安維持が喫緊の課題といってもいいかもしれない。
離宮は食糧品を備蓄しているが、この備蓄もどこまで持つか分からない。
まず街民に備蓄の準備を促した後、治安維持のための巡回を増やす手はずを整えること、もしもの時の避難する場所の確保、避難民が押し寄せてきた場合の場所の確保など街長と話し合った。
ここは王都から少し離れている。
地理的に王都が先に攻撃を受けるためこの街を直接攻め落とす理由はないはずだ。
軍に対処するような設備もないし、軍隊もいない。防衛する術がないのよね。
王都が落とされればこの街は降伏するだけ。街の人にとっては王や一部の治める領主が代わるだけで問題ない。
だが、注意しなければいけないのは戦争によって避難してきた人たちがここに流れてくること。
この街の食糧事情を知り、集まってくる可能性がある。そうすれば治安は一気に悪化し、暴動、略奪が起こる可能性も出てくる。
不安は尽きないけれど、一つ一つ丁寧に対策をしていくほかない。
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