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10 フェルディナンドside3
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「父上っ!!!」
「どうしたんだ? フェルディナンド。何処かへ泊まると聞いていなかったが?」
「……申し訳ありません……」
「何があったんだ?」
僕の様子を見て父が心配そうに聞いてくる。
「く、薬を、盛られました」
「何!? 身体は大丈夫なのか!? すぐに医者を呼べ!」
「いえ、薬は、もう切れているので、大丈夫だと、思うのですが……」
僕は言いにくそうにしていると、父は察したのか顔色を変えた。
「まさか……」
「ロジーナ・フリッジ子爵令嬢と、昨晩夜を過ごしました」
「お前!!! なんてことを!! お前の婚約者はリヴィア様だろう!? 何故その令嬢と共に過ごしたんだ!?」
そこから父は家族全員を呼び、すぐに家族会議が行われた。父は怒り、母は涙で目を腫らし、兄達は呆れていた。
「私の方でもフリッジ子爵のことを調べておくが、お前はしばらく部屋から出るな!」
「……わかりました」
そこから学院をしばらく休み部屋から一歩も出ることなく過ごしていた。事態は進展しないままだったが、学院を休み続けることは難しいため一週間した後、普段通りに登校を始めた。
ロジーナは、というと、僕が休んでいる間、クラスの前をうろついていたようだ。
その後、諦めたのかクラスへ顔を出さなくなっていた。ホッとしたのは言うまでもない。
彼女があんな女だったとは。
そうして二ヶ月経った頃、父から呼び出された。どうやらフリッジ子爵がほくほく顔でロジーナと共に公爵家へ来たらしい。
子供が出来たと。
父は僕が報告してから子爵をずっと見張っていたが、ロジーナは他の令息に会う事はなかった。僕の子供に間違いはないようだ。
そこから僕の気持ちを置いて物事は駆け足のように進んでいった。
王宮へ知らせに行き、リヴィと婚約解消になった。リヴィは王妃様に殴られ、父も母もひたすら王妃様に謝っていた。全ての原因が僕にあるというのにリヴィが殴られた。
今更ながら僕は事の重大性を理解する。
兄たちは人の裏が読めないお前には無理なんじゃないかとずっと心配していたのに。
ロジーナはそんなことをする子じゃないと信用していた。
リヴィに、もう会えない。
改めて現実を見せられた僕は絶望しかない。
「フェルディナンド。卒業間近だ。お前は学院をとりあえず卒業しなさい。ロジーナ嬢との婚姻もある。あとは書類を出すだけだ」
「……僕は、フリッジ子爵家に婿養子に入るのですか?」
「ああそうだ。だが、子爵家は場合によっては取り潰しになるかもしれん。覚悟しておけ」
「わかりました」
改めて突きつけられる現実に目の前が真っ暗になる。こんなはずじゃなかった、と感じた。リヴィに一言謝りたくて手紙や面会を希望しても拒否されてしまった。
父からも『これ以上お前はリヴィア様に関わるな。貴族たちの動きが活発な今、これ以上我が家の足を引っ張るな。それにお前が関わればその分リヴィア様は心を痛め、不幸になる』と言われ、僕はそれ以上何も出来なくなった。
惨めな自分に、後悔しかない。
すぐにリヴィア様との婚約解消が発表された。発表後、リヴィア様は持病が悪化したため療養に入ったと風の噂で伝えられた。リヴィア様は既に単位を取り終えているので、このまま卒業しても問題ないらしい。
彼女は学院に来ることもなく、僕は会うことも叶わないまま彼女は離宮に入ってしまった。
婚約解消の理由は彼女のことを思って陛下が公表を控えたのだと思う。
『お飾り妃の娘はやはり公爵家でも邪険にされ、腫れ物扱いだったんだろう』
『男の一つも繋ぎ留められない不出来な王女』
口さがない貴族たちはリヴィア様を悪く言っていた。
言い訳しようにも、当事者の僕には口を噤むことしか許されていない。
まだ公爵家に籍がある僕が口を開けば影響が出てしまう可能性があり、父たちから沈黙で通す様に言われている。
そして学院の卒業と同時に書類だけで、フリッジ子爵へ婿養子に入った僕。
ロジーナは盛大な結婚式を望んでいたが、これ以上王家に目を付けられるわけにはいかないため、結婚式はしないことになった。
僕が子爵家に入ったその日、子爵は口を開くことはなかったが、夫人は大喜びだった。
公爵家と繋がりが出来たと。
そして……ロジーナが言っていた家族と不仲だという話が嘘だということがわかった。
子爵は婿養子で夫人に強く言えないようだ。
ロジーナはべったりと僕にくっついて離れない上に、公爵家からの支度金でロジーナと夫人は服や宝石を気の向くまま買い漁り散財している。
二人に散財を続けていると子爵家が潰れてしまうと注意をするけれど、公爵家から援助してもらえばいいの一点張りだ。
……話が通じない。
そうしていくうちに、ロジーナのお腹は大きくなっていく。これが僕の罰かと思うと絶望しかない。
騙された。
リヴィア様は今、どう過ごしているのだろうか。
「どうしたんだ? フェルディナンド。何処かへ泊まると聞いていなかったが?」
「……申し訳ありません……」
「何があったんだ?」
僕の様子を見て父が心配そうに聞いてくる。
「く、薬を、盛られました」
「何!? 身体は大丈夫なのか!? すぐに医者を呼べ!」
「いえ、薬は、もう切れているので、大丈夫だと、思うのですが……」
僕は言いにくそうにしていると、父は察したのか顔色を変えた。
「まさか……」
「ロジーナ・フリッジ子爵令嬢と、昨晩夜を過ごしました」
「お前!!! なんてことを!! お前の婚約者はリヴィア様だろう!? 何故その令嬢と共に過ごしたんだ!?」
そこから父は家族全員を呼び、すぐに家族会議が行われた。父は怒り、母は涙で目を腫らし、兄達は呆れていた。
「私の方でもフリッジ子爵のことを調べておくが、お前はしばらく部屋から出るな!」
「……わかりました」
そこから学院をしばらく休み部屋から一歩も出ることなく過ごしていた。事態は進展しないままだったが、学院を休み続けることは難しいため一週間した後、普段通りに登校を始めた。
ロジーナは、というと、僕が休んでいる間、クラスの前をうろついていたようだ。
その後、諦めたのかクラスへ顔を出さなくなっていた。ホッとしたのは言うまでもない。
彼女があんな女だったとは。
そうして二ヶ月経った頃、父から呼び出された。どうやらフリッジ子爵がほくほく顔でロジーナと共に公爵家へ来たらしい。
子供が出来たと。
父は僕が報告してから子爵をずっと見張っていたが、ロジーナは他の令息に会う事はなかった。僕の子供に間違いはないようだ。
そこから僕の気持ちを置いて物事は駆け足のように進んでいった。
王宮へ知らせに行き、リヴィと婚約解消になった。リヴィは王妃様に殴られ、父も母もひたすら王妃様に謝っていた。全ての原因が僕にあるというのにリヴィが殴られた。
今更ながら僕は事の重大性を理解する。
兄たちは人の裏が読めないお前には無理なんじゃないかとずっと心配していたのに。
ロジーナはそんなことをする子じゃないと信用していた。
リヴィに、もう会えない。
改めて現実を見せられた僕は絶望しかない。
「フェルディナンド。卒業間近だ。お前は学院をとりあえず卒業しなさい。ロジーナ嬢との婚姻もある。あとは書類を出すだけだ」
「……僕は、フリッジ子爵家に婿養子に入るのですか?」
「ああそうだ。だが、子爵家は場合によっては取り潰しになるかもしれん。覚悟しておけ」
「わかりました」
改めて突きつけられる現実に目の前が真っ暗になる。こんなはずじゃなかった、と感じた。リヴィに一言謝りたくて手紙や面会を希望しても拒否されてしまった。
父からも『これ以上お前はリヴィア様に関わるな。貴族たちの動きが活発な今、これ以上我が家の足を引っ張るな。それにお前が関わればその分リヴィア様は心を痛め、不幸になる』と言われ、僕はそれ以上何も出来なくなった。
惨めな自分に、後悔しかない。
すぐにリヴィア様との婚約解消が発表された。発表後、リヴィア様は持病が悪化したため療養に入ったと風の噂で伝えられた。リヴィア様は既に単位を取り終えているので、このまま卒業しても問題ないらしい。
彼女は学院に来ることもなく、僕は会うことも叶わないまま彼女は離宮に入ってしまった。
婚約解消の理由は彼女のことを思って陛下が公表を控えたのだと思う。
『お飾り妃の娘はやはり公爵家でも邪険にされ、腫れ物扱いだったんだろう』
『男の一つも繋ぎ留められない不出来な王女』
口さがない貴族たちはリヴィア様を悪く言っていた。
言い訳しようにも、当事者の僕には口を噤むことしか許されていない。
まだ公爵家に籍がある僕が口を開けば影響が出てしまう可能性があり、父たちから沈黙で通す様に言われている。
そして学院の卒業と同時に書類だけで、フリッジ子爵へ婿養子に入った僕。
ロジーナは盛大な結婚式を望んでいたが、これ以上王家に目を付けられるわけにはいかないため、結婚式はしないことになった。
僕が子爵家に入ったその日、子爵は口を開くことはなかったが、夫人は大喜びだった。
公爵家と繋がりが出来たと。
そして……ロジーナが言っていた家族と不仲だという話が嘘だということがわかった。
子爵は婿養子で夫人に強く言えないようだ。
ロジーナはべったりと僕にくっついて離れない上に、公爵家からの支度金でロジーナと夫人は服や宝石を気の向くまま買い漁り散財している。
二人に散財を続けていると子爵家が潰れてしまうと注意をするけれど、公爵家から援助してもらえばいいの一点張りだ。
……話が通じない。
そうしていくうちに、ロジーナのお腹は大きくなっていく。これが僕の罰かと思うと絶望しかない。
騙された。
リヴィア様は今、どう過ごしているのだろうか。
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