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 翌朝、部屋の扉がノックされる。

「ギンコ、起きているか?出発するぞ」

私は荷物を持って外に出る。支払いをしてから街の広場までグレンと共に歩く。

「徒歩でも2日でローゼンに着くんだが、今回は馬車を手配した。昼過ぎにはローゼンに着くから」

 そんなに近いのか。と思いきや徒歩で2日?広場に到着すると、それは豪華な馬車が停まっていた。グレンが手配したのは魔馬車だったのだ。とてつもなく高そう。流石Aランク。そんなに急ぐ理由が出来たのか。

大変だな。
 
私はそんな事をぼんやりと考えつつ、魔馬車に乗り込む。

魔馬車で揺られること6時間。ローゼンの検問所が見えてきた。

「通行証を見せろ」

グレンが通行証を出した。私も見せようと馬車から顔を出した時、

「殿下、お帰りなさいませ」

え?殿下??

私はグレンに視線を向けると、グレンは何も無かったように黙って片手を挙げる。
私の動揺を無視するかのようにそのまま馬車はゆっくり走りだし、着いたのは王宮。

「グレン。どういうこと?」

「ああ。言ってなかったな。俺はこの国の第3王子なんだ。武者修行の旅に出ていたんだよ」

またしても王侯貴族と関わってしまってた!嫌な予感しかない。これは早くここから立ち去るべきだ。脳内に警報が響き渡る。ハヤクタチサレと。

「私、ここ、用事ない。一般市民。街に泊まる。じゃ」

「ダメダメ。今日はここに泊まるって言っただろ?大丈夫だって。親父に報告しに行く前にちょっと着替えてくるわ」

 そう言うとグレンは自分の部屋と思わしき部屋に入り、私は隣の部屋へと案内される。煌びやかで落ち着かないわ。

とりあえず、私は汚くないはずだけど、一応、【クリーン】。これでベッドに寝っ転がっても大丈夫。ふっかふかなベッド。お尻でビョンビョンと跳ねてみる。あぁ、このベッド欲しい。ベッドで遊んでいるとノックされ扉を開ける。

「!!」

バタン。やばい。すぐさま扉を閉めた。

「おーい。開けてくれ」

「誰だ。知らない人。扉開けちゃいけない」

「いやいや。俺だよ。グレンだから」

 すこーしだけ扉を開けて覗いて見ると、正装した王子、グレンがいた。

「今から親父に帰ったの報告をするから一緒に付いてきて」

 私の抵抗も虚しく、グレンはガバリと扉を開けた。

・・・仕方ない。グレンの後ろを歩いて付いていく。

「陛下。第3王子グレン。ただ今戻りました」

「おぉ。グレン。見違える程逞しくなったの。色々と報告は受けておる。よく頑張った。ゆっくりと休め。ところで、後ろのローブは?」

「はい。旅で見つけた僕のパートナーです。ゆくゆくは僕の妃としても迎え入れたいと考え連れてきました」

え!?またこのパターン?突然結婚って言われても困るんだけど!?

「ほぉ、どこの家の者だ?」

「彼女は身寄りのない冒険者です。ですが、優秀な魔法使いなのです」

「ローブを外せ」

言われた通りにローブを脱ぐ。ここで抵抗しても意味がない事は私でも分かるわ。

「ふむ。名は?」

「ギンコと申します」

「グレンとはいつ知り合った?」

「ホランの街の宿で食事をしていた所、グレン様から声をかけられました」

「グレンは妃にと言っているが?お主はどうなのだ?妃になれる程の後ろ盾はあるのか?」

「父上!!」

グレンが止めに入ります。

「私はグレン様と夫婦になるつもりはありません。私は一介の魔法使いであり、後ろ盾もございません」

「グレンが入れ込むとはな。グレンよ、第二夫人としてなら迎えても良い。今日はもう下がってもよい」

 グレンと共に謁見室を出るとすかさずローブを着る。

「ギンコってちゃんと話せるんだな。何故話さないんだ?」

「話す必要が無いから」

「俺はギンコを第二夫人ではなく、王子妃として迎えたいんだ」

「私は、「「グレン様が居ましたわ!」」」

 話の途中で遮られたわ。遮った声の方を見ると令嬢達がわらわらと集団で向かってくる。一人一人着飾り綺麗だけれど、集団で来ると怖いね。

「グレン様、お久しぶりですわ。ずっと待っていましたの」

黄色い声の主達はグレンを取り囲む。

「やぁ。可愛いレディ達。元気にしてたかい?」

 令嬢達と会話する様を見ると、グレンはやっぱりチャラ男だわ。とりあえず、私は部屋に戻るかな。侍女さんに案内してもらいさっきの部屋まで帰る。

 さて、どうやって出国するかな。第二夫人?あり得ないでしょ。

私の価値観では一夫一婦制よ!
冒険者でも一般市民でも構わない。

私だけ、愛してくれる人がいいのよ。
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