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2,黄色いりんごの樹の下で

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 ソラの呟きに、ロワールは我に返った。

「あっ! ご、ごめん! 夢中で、ソラの体に出してしまった……。精液は、そのうち消えるからね」

「消えるの? あ、お風呂がいらないのと同じ理由だね……」

 この楽園にはトイレもシャワーもなかったが、洗浄が必要な事態はそうそうないらしいことを、ソラも経験していた。

 不浄なものは、時間が経てば消えてしまうのだ。

「消えるまで、僕のシャツを羽織っていて。本当にごめん。僕、精液の量が多くて……」

 シャツを払ってから、ロワールはソラの肩に羽織らせた。

「ここは暖かいから、少しくらい裸でいても平気だよ」

 ソラは、微笑して見せた。

 ほっとしたロワールは、ソラの背後にあるりんごの樹に気づいて、頬を緩めた。

「ソラ、見て……」

「あ……」

 ソラがりんごの樹を見上げてみると、さっきまで枯れかけていたことが嘘のように、青々とした葉を茂らせていた。

「よかった……、元気になったんだね」

「うん。……ありがとう、ソラ」

 ロワールは、ソラを抱きしめた。

 ソラは、ロワールの腕に手を添えて言った。

「枯れた樹を見つけたら、私を呼んでね。……ロワールとだったら、幸せをいっぱい感じられるから」

 ソラは照れながらも、本心を告げた。

 すると、ロワールは神妙な面持ちになった。

「ソラ」

「……なに?」

 ソラがロワールを見つめると、ロワールは真剣な眼差しを向けていた。

「……枯れた樹がなくても、ソラを抱いていい?」

 ロワールは言った。

 ソラは、驚いて目を泳がせた。

「……どういう意味?」

 そのとき、草を踏みしめる足音が聞こえた。

「誰か来る。ソラは着替えて」

 ロワールはシャツをソラに預けたまま、下半身だけ着衣を整えて足音がするほうへと様子を見に行った。

 ソラが自分の服を着ようとしたとき、体にべったりとついていた精液は、きれいに跡形もなくなっていた。
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