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嵐の中の騒がしさ
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早田との話を終えた頃、懇親会のプログラムも着々と進んでいた。
食事しながらナンパに勤しんでいた豊田は再びステージに上がった。
「両部長、壇上にお願いします。」
柔道部部長の西田春二とバスケ部部長の高田美冬の2人がが壇上に上がる。
「知ってる人は今後ともよろしく、知らない人は初めまして……」
両校の部長の取り留めのない挨拶だ。
リハーサルも無くほぼアドリブで良くまとめたと言えよう。
ほぼ選手宣誓だったのは生徒達にはスルーされた。
部長の威厳である。
プログラム順調に進んでゆき有志による余興が始まった。
急遽知らされた懇親会であったため、準余興は準備不足だった。
正直なところ良く言っても微笑ましいレベルだ。
内輪ネタで笑いを誘う者、しもネタに走る者……。
意外なところでは木下のものまね芸『1人SLAM DUNK』が好評だった。
赤木と魚住しか登場しなかったが……。
プログラムはカラオケに進み、ステージにカラオケ機材が運ばれて来た。
稲葉島スポレクのカラオケ設備は高齢者の寄り合いで継続的に利用しており最新式だ。
「機材チェックのためしばらくお待ち下さい」
豊田はマイクで皆に知らせながら、カラオケ側のマイクのチェックをしている。
コードリールで電源を引き入れてモニター、ミキサー、アンプと接続する。
佐々木は機械に疎く生徒頼みだ。
「ちょっとボリューム小さいかも、あげて」
客席側にある音響調整室の宮本から豊田に指示が出る。
「は~い。これくらいでいい?」
豊田は手元の機械でカラオケのボリュームを調整する。
宮本は幼少期に演劇を志していたことから音響、幕の操作、照明の操作を友人の小林と一緒にそつなくこなしていた。
稲葉スポレクの設備はなかなかのもので幕やバトンの操作は自動化されておりスイッチで上げ下げ出来る。
しかも今回は使用していないが回転舞台の操作も出来るようだ。
「オッケー、カラオケ始めます。トップバッターは、もうスタンバイしている。佐々木先生だぁ」
佐々木は短パンに上半身裸でステージに上がる。
ミラーボールから体育館中に鮮やかな光が広がる。
「そしてセレクトする曲は、当然」
「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」
佐々木はノリノリで歌い出すが姿は、
『ありのままのワガママボディ僕は君だけに見せつけたい』
状態である。
それでも盛り上がれるのが若さである。
生徒達も立ち上がりノリノリで手拍子している。
「あんたのとこの先生。凄いね」
「いや俺も初めて見たぞこんなはっちゃけた佐々木」
流石に食べ過ぎた榎田は体育館を背もたれにして休んでいる。
榎田の横にちょこんと座った大葉は大音響のなか声が聞こえるように榎田の耳元で話す。
「そういえば京極先輩の密室の件、あっさりと引き下がったわね」
「それは気になった。私の時と全然違わない?」
水島も同調する。
水島は榎田を挟むように大葉の反対側に座る。
「あれ別にほぼ密室ってだけで、密室じゃないだろ、重要なのはなぜ京極先輩が殺されたのかだし」
榎田が二人に告げる。
「どういう事?」
「極端な話、大葉なら割合簡単に厨房を密室に出来るだろ」
「えっ?」
榎田の言葉に大葉と水島は目を見合わせる。
「例えばそうだな首を釣っていた柱に手足でぶら下がる。その後片足をショーケースに置いて、えいっと食堂側に飛び降りれば脱出完了、密室の完成だ」
「ショーケースって乗ったら壊れるって言ってなかった?」
「俺が乗ったらな、ショーケースの耐荷重が約20キロって言ったって全体重で乗るわけじゃないだろ。大葉は体重60キロ無いよな?」
「無い絶対ない」
大葉は力一杯否定する。
「なら腕と片脚で30数キロを支えて残った片脚で20キロを支える出来るだろ?」
「出来そう……ね」
大葉と水島は頷く。
「まあ俺だって、犯人がこんな馬鹿な方法したとは思ってないぞ。早田も言っていたが不安定な体勢で食堂のリノリウムの床に着地したら最低でも打撲、運が悪けりゃ骨折するからな」
大葉は「うげぇ」といった表情だ。
「ほかにも返却口のシンクの底に血液を貯めておいて、蛇口から少量の水を出しておく。強度がありそうな固定されている下の返却口の中を通って食堂に脱出する。時間が経てばシンクに水が貯まり密室の完成。シンクが血と水で満たされる前なら血も洋服についたりしない。これも出来るだろ」
榎田は大葉の胸と腰回りを見て話した。
大葉は『どこ見てんのよ』と思いつつも、
「出来そうね、悲しいけど」
とため息をつきながら答えた。
「ぱっと思いつくのはこれくらいだけど犯人の特定には些細な問題だ。犯人の特定と動機の方が大事だし、一番は無事に帰る事だ」
榎田は決意を新たにした。
「君たち仲いいね。これでステージでデュエット歌い出したらはっ倒すから」
水島は榎田と大葉を見てあきれている。
「まあコイツが犯人じゃないのが分かってるから例え話が出来るんだけど。事件のあった時は俺の隣で寝てたしな」
榎田の言葉に、
「誤解を招く事を言うなー!!」
顔を赤くした大葉の右ストレートが榎田の顔面に炸裂したのだった。
食事しながらナンパに勤しんでいた豊田は再びステージに上がった。
「両部長、壇上にお願いします。」
柔道部部長の西田春二とバスケ部部長の高田美冬の2人がが壇上に上がる。
「知ってる人は今後ともよろしく、知らない人は初めまして……」
両校の部長の取り留めのない挨拶だ。
リハーサルも無くほぼアドリブで良くまとめたと言えよう。
ほぼ選手宣誓だったのは生徒達にはスルーされた。
部長の威厳である。
プログラム順調に進んでゆき有志による余興が始まった。
急遽知らされた懇親会であったため、準余興は準備不足だった。
正直なところ良く言っても微笑ましいレベルだ。
内輪ネタで笑いを誘う者、しもネタに走る者……。
意外なところでは木下のものまね芸『1人SLAM DUNK』が好評だった。
赤木と魚住しか登場しなかったが……。
プログラムはカラオケに進み、ステージにカラオケ機材が運ばれて来た。
稲葉島スポレクのカラオケ設備は高齢者の寄り合いで継続的に利用しており最新式だ。
「機材チェックのためしばらくお待ち下さい」
豊田はマイクで皆に知らせながら、カラオケ側のマイクのチェックをしている。
コードリールで電源を引き入れてモニター、ミキサー、アンプと接続する。
佐々木は機械に疎く生徒頼みだ。
「ちょっとボリューム小さいかも、あげて」
客席側にある音響調整室の宮本から豊田に指示が出る。
「は~い。これくらいでいい?」
豊田は手元の機械でカラオケのボリュームを調整する。
宮本は幼少期に演劇を志していたことから音響、幕の操作、照明の操作を友人の小林と一緒にそつなくこなしていた。
稲葉スポレクの設備はなかなかのもので幕やバトンの操作は自動化されておりスイッチで上げ下げ出来る。
しかも今回は使用していないが回転舞台の操作も出来るようだ。
「オッケー、カラオケ始めます。トップバッターは、もうスタンバイしている。佐々木先生だぁ」
佐々木は短パンに上半身裸でステージに上がる。
ミラーボールから体育館中に鮮やかな光が広がる。
「そしてセレクトする曲は、当然」
「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」
佐々木はノリノリで歌い出すが姿は、
『ありのままのワガママボディ僕は君だけに見せつけたい』
状態である。
それでも盛り上がれるのが若さである。
生徒達も立ち上がりノリノリで手拍子している。
「あんたのとこの先生。凄いね」
「いや俺も初めて見たぞこんなはっちゃけた佐々木」
流石に食べ過ぎた榎田は体育館を背もたれにして休んでいる。
榎田の横にちょこんと座った大葉は大音響のなか声が聞こえるように榎田の耳元で話す。
「そういえば京極先輩の密室の件、あっさりと引き下がったわね」
「それは気になった。私の時と全然違わない?」
水島も同調する。
水島は榎田を挟むように大葉の反対側に座る。
「あれ別にほぼ密室ってだけで、密室じゃないだろ、重要なのはなぜ京極先輩が殺されたのかだし」
榎田が二人に告げる。
「どういう事?」
「極端な話、大葉なら割合簡単に厨房を密室に出来るだろ」
「えっ?」
榎田の言葉に大葉と水島は目を見合わせる。
「例えばそうだな首を釣っていた柱に手足でぶら下がる。その後片足をショーケースに置いて、えいっと食堂側に飛び降りれば脱出完了、密室の完成だ」
「ショーケースって乗ったら壊れるって言ってなかった?」
「俺が乗ったらな、ショーケースの耐荷重が約20キロって言ったって全体重で乗るわけじゃないだろ。大葉は体重60キロ無いよな?」
「無い絶対ない」
大葉は力一杯否定する。
「なら腕と片脚で30数キロを支えて残った片脚で20キロを支える出来るだろ?」
「出来そう……ね」
大葉と水島は頷く。
「まあ俺だって、犯人がこんな馬鹿な方法したとは思ってないぞ。早田も言っていたが不安定な体勢で食堂のリノリウムの床に着地したら最低でも打撲、運が悪けりゃ骨折するからな」
大葉は「うげぇ」といった表情だ。
「ほかにも返却口のシンクの底に血液を貯めておいて、蛇口から少量の水を出しておく。強度がありそうな固定されている下の返却口の中を通って食堂に脱出する。時間が経てばシンクに水が貯まり密室の完成。シンクが血と水で満たされる前なら血も洋服についたりしない。これも出来るだろ」
榎田は大葉の胸と腰回りを見て話した。
大葉は『どこ見てんのよ』と思いつつも、
「出来そうね、悲しいけど」
とため息をつきながら答えた。
「ぱっと思いつくのはこれくらいだけど犯人の特定には些細な問題だ。犯人の特定と動機の方が大事だし、一番は無事に帰る事だ」
榎田は決意を新たにした。
「君たち仲いいね。これでステージでデュエット歌い出したらはっ倒すから」
水島は榎田と大葉を見てあきれている。
「まあコイツが犯人じゃないのが分かってるから例え話が出来るんだけど。事件のあった時は俺の隣で寝てたしな」
榎田の言葉に、
「誤解を招く事を言うなー!!」
顔を赤くした大葉の右ストレートが榎田の顔面に炸裂したのだった。
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