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第42話 残すは融合使徒のみとなった
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「そもそもあの乗り物は勇者のだろ。何俺たちの従魔だと勘違いしてんだ」
タイラーノの奴らは尚も続ける。
「アレがあるってことは、フワジーラの選手には魔王妃を倒した奴がいるってことだぜ?どっちかって言えば、集団で倒すべきはそっちなんじゃねえのか」
……なるほど。それでバレたって訳か。
放送席とミットナーモ、エノコの選手は従魔だと勘違いしてくれたって事を考えると、本当にあと一歩だったって感じだな。
まあ、バレてしまったものはしょうがない。
一気に集まってくるのだとしたら、それはそれでやりようがある。
まずは先輩たちに標的が分散しないよう、透明化を解くか。
カワサキを自分の元へ帰らせ、みんなからよく見えるように収納する。
これで、他学院全員のターゲットが確定したはずだ。
「あいつだ、やれ!」
タイラーノの選手の1人が号令をかけた。
それに伴い、号令をかけた奴以外のタイラーノの選手と、ミットナーモ、エノコの選手全員がこちらに向かってくる。
おそらく号令をかけた奴が融合使徒だろうから、威力は低めで大丈夫だな。
「サイレントヒル」
魔王妃ハコネの魔法を再現する。
思った通り、攻撃を仕掛けてきた全ての選手は吹き飛ばされ、場外にて失格となった。
……と、その時だった。
会場全体に、異変が起き始めた。
どういうわけか、観客が一斉に逃げ始めたのだ。
何故だ。
今の魔法で、観客が身の危険を感じたとは考えにくい。
試合場は使徒の紋章を持つ聖騎士たちが全力で結界を張っているので、手加減したサイレントヒル程度ではビクともしないはずだからだ。
だが、観客たちは何かに怯えるかのように逃げていく。
融合使徒が何かしたかと思ったが……融合使徒と思われる奴も、この状況を呑み込めないでいるようだ。
逃げ惑う観客をキョロキョロと見回している。
そんな中、放送席から実況が鳴り響く。
「アレは……間違いありません! 魔王妃ハコネが得意とする伝説の魔法、『サイレントヒル』そのものです! 観客の皆さん、魔王妃の襲撃に巻き込まれないよう、全力で避難をお願いします! 聖騎士の方々は観客の誘導を!」
……まさか。そういうことなのか?
俺は魔法で聴覚を強化してみた。すると……
「まずい! 魔王妃の奴、まだ生きていやがったのか!」
「でもあいつらはあそこの勇者さんが倒してくれたはずじゃ……?」
「いや、よく思い出せ。確か、あの場にいた魔王妃は2人だった。残りの1人が報復に来たんじゃねえのか?」
「クソがっ……! 白熱した試合をみれるとか思った俺が馬鹿だった。死にたくねえよぉ!」
……そうなのか。
こいつら、俺の攻撃を魔王妃の乱入と勘違いしたんだな。
ぶっちゃけ、今の聖騎士ならハコネくらい単騎で軽々と取り押さえられる。
だがよく考えたら、人々は何も知らないわけだ。
魔王妃は全員死んでいることも。
魔王も代替わりしていることも。
俺が紋章を改造した奴らが、魔王を軽く凌ぐほど強化されているって事も。
……そりゃ、逃げるか。
見ると、聖騎士たちは実情を話して観客を落ち着かせるどころか放送に従って観客を避難させている。
あいつらも、強化された事による自信より1撃で魔王妃に吹き飛ばされた恐怖の方が勝ってしまっているのかもな。
「……おい、何だよこれ」
融合使徒と思しき奴が、狼狽えながらそう聞いてくる。
「あー、俺が使った魔法がな。どうやら魔王妃を連想させてしまったらしく、こうなってしまった」
「何それ馬鹿じゃねえの」
これとばかりは融合使徒に賛同してしまいそうになる。
「しかしまあ……これで野次馬も消えた事だし、結界の崩壊とか気にせず全力で戦えるじゃねえか。むしろラッキーと思おうぜ」
融合使徒の発想に、思わずなるほどと感心してしまった。
確かに、そういう見方もできるな。
仮に魔王妃が生き返って乱入したところで何もできないくらい万全な会場警備も、俺と融合使徒が全力でぶつかり合えば跡形も無く消し飛んでしまうだろう。
何たって、お互い魔神を超える力を保持しているのだからな。
ある意味、観客の行動は正解なわけだ。
……それにしても融合使徒の奴、魔神をあそこまで慌てさせるからどんな凶悪な奴かと思えばわりかし優しい奴ではないか。
俺の施術を受けたことは、すっかり忘れてしまっているみたいだが。
必ず始末しなければならない脅威というよりは、良き実験パートナーって感じっぽいな。
こいつには、ここから俺の実験に付き合ってもらおうか。
タイラーノの奴らは尚も続ける。
「アレがあるってことは、フワジーラの選手には魔王妃を倒した奴がいるってことだぜ?どっちかって言えば、集団で倒すべきはそっちなんじゃねえのか」
……なるほど。それでバレたって訳か。
放送席とミットナーモ、エノコの選手は従魔だと勘違いしてくれたって事を考えると、本当にあと一歩だったって感じだな。
まあ、バレてしまったものはしょうがない。
一気に集まってくるのだとしたら、それはそれでやりようがある。
まずは先輩たちに標的が分散しないよう、透明化を解くか。
カワサキを自分の元へ帰らせ、みんなからよく見えるように収納する。
これで、他学院全員のターゲットが確定したはずだ。
「あいつだ、やれ!」
タイラーノの選手の1人が号令をかけた。
それに伴い、号令をかけた奴以外のタイラーノの選手と、ミットナーモ、エノコの選手全員がこちらに向かってくる。
おそらく号令をかけた奴が融合使徒だろうから、威力は低めで大丈夫だな。
「サイレントヒル」
魔王妃ハコネの魔法を再現する。
思った通り、攻撃を仕掛けてきた全ての選手は吹き飛ばされ、場外にて失格となった。
……と、その時だった。
会場全体に、異変が起き始めた。
どういうわけか、観客が一斉に逃げ始めたのだ。
何故だ。
今の魔法で、観客が身の危険を感じたとは考えにくい。
試合場は使徒の紋章を持つ聖騎士たちが全力で結界を張っているので、手加減したサイレントヒル程度ではビクともしないはずだからだ。
だが、観客たちは何かに怯えるかのように逃げていく。
融合使徒が何かしたかと思ったが……融合使徒と思われる奴も、この状況を呑み込めないでいるようだ。
逃げ惑う観客をキョロキョロと見回している。
そんな中、放送席から実況が鳴り響く。
「アレは……間違いありません! 魔王妃ハコネが得意とする伝説の魔法、『サイレントヒル』そのものです! 観客の皆さん、魔王妃の襲撃に巻き込まれないよう、全力で避難をお願いします! 聖騎士の方々は観客の誘導を!」
……まさか。そういうことなのか?
俺は魔法で聴覚を強化してみた。すると……
「まずい! 魔王妃の奴、まだ生きていやがったのか!」
「でもあいつらはあそこの勇者さんが倒してくれたはずじゃ……?」
「いや、よく思い出せ。確か、あの場にいた魔王妃は2人だった。残りの1人が報復に来たんじゃねえのか?」
「クソがっ……! 白熱した試合をみれるとか思った俺が馬鹿だった。死にたくねえよぉ!」
……そうなのか。
こいつら、俺の攻撃を魔王妃の乱入と勘違いしたんだな。
ぶっちゃけ、今の聖騎士ならハコネくらい単騎で軽々と取り押さえられる。
だがよく考えたら、人々は何も知らないわけだ。
魔王妃は全員死んでいることも。
魔王も代替わりしていることも。
俺が紋章を改造した奴らが、魔王を軽く凌ぐほど強化されているって事も。
……そりゃ、逃げるか。
見ると、聖騎士たちは実情を話して観客を落ち着かせるどころか放送に従って観客を避難させている。
あいつらも、強化された事による自信より1撃で魔王妃に吹き飛ばされた恐怖の方が勝ってしまっているのかもな。
「……おい、何だよこれ」
融合使徒と思しき奴が、狼狽えながらそう聞いてくる。
「あー、俺が使った魔法がな。どうやら魔王妃を連想させてしまったらしく、こうなってしまった」
「何それ馬鹿じゃねえの」
これとばかりは融合使徒に賛同してしまいそうになる。
「しかしまあ……これで野次馬も消えた事だし、結界の崩壊とか気にせず全力で戦えるじゃねえか。むしろラッキーと思おうぜ」
融合使徒の発想に、思わずなるほどと感心してしまった。
確かに、そういう見方もできるな。
仮に魔王妃が生き返って乱入したところで何もできないくらい万全な会場警備も、俺と融合使徒が全力でぶつかり合えば跡形も無く消し飛んでしまうだろう。
何たって、お互い魔神を超える力を保持しているのだからな。
ある意味、観客の行動は正解なわけだ。
……それにしても融合使徒の奴、魔神をあそこまで慌てさせるからどんな凶悪な奴かと思えばわりかし優しい奴ではないか。
俺の施術を受けたことは、すっかり忘れてしまっているみたいだが。
必ず始末しなければならない脅威というよりは、良き実験パートナーって感じっぽいな。
こいつには、ここから俺の実験に付き合ってもらおうか。
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