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第23話 一番来てはいけない奴が来た
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言われた通り3日後に魔王直轄領とアタミ領の境に来てみると、確かに集まっている魔族の数は先日の比ではなく、「大々的なイベントがあります」感が出ていた。
出場選手は全部で32名、試合はトーナメント方式で行われるらしい。
試合が始まるのは3時間後。正直、暇だ。
折角なので、鑑定魔法を使って相手の強さを数値化できないか試してみることにした。
数日前の魔族との手合わせも、よく考えたら相手が初手で必殺技を出してくれなかったら上手く手加減できなかっただろう。もっと効率的な測定手段を用意しておくに越したことはない。
自分の強さを1として、出場者の強さを鑑定してみる。
「0、0、0、……0」
どうやら有効数字が足りないようだ。
限界まで精度を上げてみる。
「0.00183、0.00188、 ……」
……強さの基準を別の人にした方がいいかもしれない。
ただ、これでも優勝候補に目星をつけることはできた。
強さ0.00234の屈強な大男か、強さ0.00236の赤髪の少女かのどちらかが優勝するだろう。
ちなみに故魔王・プレート=テクト=ニクスの強さはいくつくらいなのだろうか。
戦いを脳内で振り返りながら、記憶に鑑定をかけてみる。
上手くいくかはわからないが……
「0.34428」
……ぶっちぎりの規格外じゃねーか。
まあ鑑定方法が杜撰にもほどがあるので、脳内で大幅に記憶が美化されている可能性もなくはない。
とはいえ、ここに揃っている出場者たちとは一線を画した強さなのは明らかだ。
パワーバランス保持の為にも、加護はかなり強力にしなければならないだろうな。
☆ ☆ ☆
第1試合が始まった。
0.00192と0.00193の試合からだ。
これは、0.00192の方が辛勝した。
まあ、数値上に多少の優劣があるとはいえこれはトーナメント制の一発勝負。
勝負所の見極めとか、その場限りの要素での逆転は可能な範囲だろうな。
……そう思っていたのは第1試合までだった。
その後、一度として数値の低い方が勝った試合は無かったのだ。
最初の1試合は、よほどの奇跡だったのかもしれない。
それだけでなく、数値の差は如実に戦況に出ていた。
差が0.00001~0.00005くらいの間だと「最初はほぼ互角だが徐々に数値の低い方がジリ貧となり、負ける」というケースが多い一方、差が0.0001以上開いてくるとほぼ一方的な試合展開となるのだ。
特に強さ0.00234の屈強な大男対0.00188の魔族の試合なんかでは、大男側は一歩も動かずに勝ってしまうという有様だ。
そして、準決勝第2回戦。
ここが件の大男対赤髪の少女の試合となった。
……どっちが勝ち上がろうと、決勝は消化試合になるな。
まあ現実はこんなもんだろうな。毎度毎度漫画みたいに決勝でライバル同士がぶつかるとはいかないというものだ。
この試合は相当の盛り上がりを見せた。
熾烈な魔法の応酬。ふと準決勝第1回戦の勝者に目をやると、「アレとやりあうのか、決勝……」と戦意喪失してしまっている。
そっと心の中で「諦めることはないよ。両者の実力はほぼ互角だし、疲れ果てたところを漁夫の利といけるかもしれないじゃないか」とエールを送っておいた。
おっといけない。ちょっと目を離したスキに、もう赤髪の少女の方が優勢になっている。
すまん、今のエール撤回で。
かくして……「少女に緊急事態が発生し、試合は波乱の展開に」などということもなく、決勝戦も予想通りの決着となった。
まあ、"魔神"が直々に観戦に来ているとなれば小細工を仕掛ける気にもならんか。
☆ ☆ ☆
横槍が入ったのは、いよいよ優勝者に加護をかけようとしたその時だった。
「お待ちください、魔神様。その者に加護をかける前に、一つ解決しなければならない疑問があるかと存じます。それは──『何故、故プレート=テクト=ニクス様はお亡くなりになったのか』です」
この言葉に、魔族たちの反応が真っ二つに分かれる。
半数が「往生際が悪いぞ」「何を此の期に及んで」と横槍を入れた魔族を批判する中、もう半数はその魔族の次の言葉を待っているように見える。
この温度差は何なのだろうか。
疑問は残るが、俺は魔族の発言の続きを促した。
「そもそも、あれほどの強さを誇る魔王が急死するなど不自然でしかないのです。唯一考えられる死因としては、夜の時間にアタミ様の青酸に耐えられなかったというのは考えられますが……当のアタミ様は、ひと月ほど前に亡くなっておるではないですか」
……あの魔王、流石にそこまでポンコツでは無いのでは?
そう思っている間にも、魔族の発言は続く。
「そこで先日、先魔王様の遺体を発見した際、畏れながら遺体を念入りに調べさせていただいたのですが……どうも、魔王様は感電死なさったようなのです」
それを聞いた魔族たちは、今度は反応が割れることなく全員がざわつきだした。
……まずい。このままでは俺が黒幕(という表現もいかがなものかと思うが)だとバレてしまう。
場を納める方便を考えていた、まさにその時だった。
「やり方にいろいろ物申したい部分はあったが、結果論で言えばお手柄だ、淳」
魔神が、そこにいた。
出場選手は全部で32名、試合はトーナメント方式で行われるらしい。
試合が始まるのは3時間後。正直、暇だ。
折角なので、鑑定魔法を使って相手の強さを数値化できないか試してみることにした。
数日前の魔族との手合わせも、よく考えたら相手が初手で必殺技を出してくれなかったら上手く手加減できなかっただろう。もっと効率的な測定手段を用意しておくに越したことはない。
自分の強さを1として、出場者の強さを鑑定してみる。
「0、0、0、……0」
どうやら有効数字が足りないようだ。
限界まで精度を上げてみる。
「0.00183、0.00188、 ……」
……強さの基準を別の人にした方がいいかもしれない。
ただ、これでも優勝候補に目星をつけることはできた。
強さ0.00234の屈強な大男か、強さ0.00236の赤髪の少女かのどちらかが優勝するだろう。
ちなみに故魔王・プレート=テクト=ニクスの強さはいくつくらいなのだろうか。
戦いを脳内で振り返りながら、記憶に鑑定をかけてみる。
上手くいくかはわからないが……
「0.34428」
……ぶっちぎりの規格外じゃねーか。
まあ鑑定方法が杜撰にもほどがあるので、脳内で大幅に記憶が美化されている可能性もなくはない。
とはいえ、ここに揃っている出場者たちとは一線を画した強さなのは明らかだ。
パワーバランス保持の為にも、加護はかなり強力にしなければならないだろうな。
☆ ☆ ☆
第1試合が始まった。
0.00192と0.00193の試合からだ。
これは、0.00192の方が辛勝した。
まあ、数値上に多少の優劣があるとはいえこれはトーナメント制の一発勝負。
勝負所の見極めとか、その場限りの要素での逆転は可能な範囲だろうな。
……そう思っていたのは第1試合までだった。
その後、一度として数値の低い方が勝った試合は無かったのだ。
最初の1試合は、よほどの奇跡だったのかもしれない。
それだけでなく、数値の差は如実に戦況に出ていた。
差が0.00001~0.00005くらいの間だと「最初はほぼ互角だが徐々に数値の低い方がジリ貧となり、負ける」というケースが多い一方、差が0.0001以上開いてくるとほぼ一方的な試合展開となるのだ。
特に強さ0.00234の屈強な大男対0.00188の魔族の試合なんかでは、大男側は一歩も動かずに勝ってしまうという有様だ。
そして、準決勝第2回戦。
ここが件の大男対赤髪の少女の試合となった。
……どっちが勝ち上がろうと、決勝は消化試合になるな。
まあ現実はこんなもんだろうな。毎度毎度漫画みたいに決勝でライバル同士がぶつかるとはいかないというものだ。
この試合は相当の盛り上がりを見せた。
熾烈な魔法の応酬。ふと準決勝第1回戦の勝者に目をやると、「アレとやりあうのか、決勝……」と戦意喪失してしまっている。
そっと心の中で「諦めることはないよ。両者の実力はほぼ互角だし、疲れ果てたところを漁夫の利といけるかもしれないじゃないか」とエールを送っておいた。
おっといけない。ちょっと目を離したスキに、もう赤髪の少女の方が優勢になっている。
すまん、今のエール撤回で。
かくして……「少女に緊急事態が発生し、試合は波乱の展開に」などということもなく、決勝戦も予想通りの決着となった。
まあ、"魔神"が直々に観戦に来ているとなれば小細工を仕掛ける気にもならんか。
☆ ☆ ☆
横槍が入ったのは、いよいよ優勝者に加護をかけようとしたその時だった。
「お待ちください、魔神様。その者に加護をかける前に、一つ解決しなければならない疑問があるかと存じます。それは──『何故、故プレート=テクト=ニクス様はお亡くなりになったのか』です」
この言葉に、魔族たちの反応が真っ二つに分かれる。
半数が「往生際が悪いぞ」「何を此の期に及んで」と横槍を入れた魔族を批判する中、もう半数はその魔族の次の言葉を待っているように見える。
この温度差は何なのだろうか。
疑問は残るが、俺は魔族の発言の続きを促した。
「そもそも、あれほどの強さを誇る魔王が急死するなど不自然でしかないのです。唯一考えられる死因としては、夜の時間にアタミ様の青酸に耐えられなかったというのは考えられますが……当のアタミ様は、ひと月ほど前に亡くなっておるではないですか」
……あの魔王、流石にそこまでポンコツでは無いのでは?
そう思っている間にも、魔族の発言は続く。
「そこで先日、先魔王様の遺体を発見した際、畏れながら遺体を念入りに調べさせていただいたのですが……どうも、魔王様は感電死なさったようなのです」
それを聞いた魔族たちは、今度は反応が割れることなく全員がざわつきだした。
……まずい。このままでは俺が黒幕(という表現もいかがなものかと思うが)だとバレてしまう。
場を納める方便を考えていた、まさにその時だった。
「やり方にいろいろ物申したい部分はあったが、結果論で言えばお手柄だ、淳」
魔神が、そこにいた。
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