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第九話 新たなスキルの覚醒と謎の手袋

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 片手に一本ずつ針金を持つと……二本の針金の先端が、一方向に強く引っ張られる。

 ……どうやら、これで使い方は間違ってないみたいだな。
 俺はその方向に向かって、進んでいくことにした。

 そして、30秒ほど走ると……曲がり角を曲がったところで、二体のウルフ系魔物に遭遇した。
 はさみうちでは無いが、敵の数は倍。
 いきなりこんな状況になるとは……連射速度半分で対処できるかを確認しておいて、正解だったな。

 針金を一旦ポケットにしまい、掌を魔物に向けると……俺はめいっぱいの連射速度で、マナボールV3をグミ撃ちした。
 最初のうちは、何発かは避けられたが……一発当たりだすとその後は連続で命中しだし、俺はすぐに魔物を絶命させることができた。

<古谷浩二はレベルアップしました>

 そんな音声が聞こえてくる中、ドロップした魔石を拾いにいく。
 魔石をレジ袋に入れると、俺はまたポケットから針金を取り出し、針金の先端が引っ張られる方向へ移動した。


 次の魔物は……30秒ほど走ったところで、また現れた。
 そしてその状況から、俺はこう確信した。

 この針金……確実に魔物発見効率アップに繋がっているな。
 4階層で狩りをしていた時は、平均してだいたい5分に1体、魔物を発見できていたが……この針金を使い始めてからは、発見のスパンが大幅に短縮されている。

 この分なら、一時間あたりの魔物討伐数が倍……いや、それ以上にまで増やせるだろう。
 そう計算すると、俺はますますやる気が沸き上がってきた。


 ◇


 そして……また俺は一時間ほど、魔物討伐に夢中になっていたのだが。
 25体目あたりの魔物を倒し、ドロップ品を拾いに行こうとしたところで……一つ、異変が起きた。

<古谷浩二はレベルアップしました>
<スキル:「階層完全探知」を獲得しました。アイテム:「ダウジングワイヤー」は消滅します>

 そんな脳内音声が流れたかと思うと……手に持っていた針金が、消滅してしまったのだ。

 ……どういうことだろう。スキル名や状況的に……アイテムがスキルに昇華した、みたいな感じだろうか?
 これは一旦、確認が必要だな。
 俺はステータスウィンドウを開き、すぐさま「階層完全探知」なるスキルをタップしてみた。

 すると……こんな説明が出てきた。

 ─────────────────────────────────
 ●階層完全探知
「階層完全探知」と詠唱すると、目の前に階層マップと敵の位置の表示画面が出る。
【獲得条件】アイテム「ダウジングワイヤー」獲得後一時間以内に、そのアイテムで探知した魔物の討伐でレベルを6上げること。スキル獲得の代償として、ダウジングワイヤーは消滅する
 ─────────────────────────────────

「階層完全探知」は……やはり、さっきの針金がスキル化したもので間違いなかった。
 あの針金、「ダウジングワイヤー」って名前だったんだな。
 スキルの効果としては、階層全体のことが把握できるあたり、ダウジングワイヤーの完全上位互換って感じだろうか。

 ……にしても、この獲得条件を満たしたってことは、どうやら俺はこの一時間でレベルが6上がったってことだよな。
 そっちも確認してみるか。
 俺はステータスウィンドウの画面を一個戻し、俺のステータスを表示させた。

 ─────────────────────────────────
 古谷浩二
 Lv.12
 HP 180/180
 MP ∞/140
 EXP 210/2400

 ●スキル
<アクティブ>
 ・マナボールV3
 ・階層完全探知
<パッシブ>
 ・ダンジョン内魔素裁定取引

 ●装備
 ・革鎧
 ─────────────────────────────────

 ステータスは……こんな感じで変化していた。
 HPは2.5倍、MPはちょうど2倍に増えているな。
 レベルやEXPを見るに……今回のスキル獲得は、結構ギリギリで条件を満たしたみたいだ。

 ……ま、その辺は結果オーライってとこで。
 などと思いつつ、俺はドロップ品を拾った。


 ちなみにドロップ品は……なんか一対の謎のナックルグローブだった。
 ダウジングワイヤーがドロップして以来、今に至るまでは、魔石ばかり落ち続けていたのだが……ここへきて久しぶりに、魔石以外のものがドロップしたというわけだ。

 革鎧も効果はただのHP微強化だったし、これも多分大丈夫だと思うが……一応、着ける前に工藤さんに聞いてみるか。

「階層完全探知」

 俺は階層全体の地図を表示させると、最短ルートで地上に帰ることにした。
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