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最終話 卒業 君と綴る未来

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 今日は高校の卒業式。
 今までの俺ならバックれていたが、それはしない。何故なら。
 クラスの席には、こいつの写真。先生とあいつの友達が、一緒に卒業式に参加出来るようにと用意していた。
 本当は二年のままだったが、未来と同じ時を過ごした俺達と一緒に卒業出来るようにと、特別に許可が降りた。
 卒業生と同じく未来の名前が呼ばれ、卒業証書を受け取るのはあいつの母親。
 両親共に、未来の写真をただ抱きしめていた。

 卒業式が終わり、写真を撮るクラスメイト達。
 未来の写真と共に撮影を続ける姿に、何故あいつはここにいないのだろうと、どうしようもない考えに至る。

「一緒に写真撮らない?」
 話しかけてきたのは未来の友達。
 葬式で、「どうして病気のこと言ってくれなかったの?」と泣き崩れていたあいつの友達だ。
 あいつが何も言わずに姿を消したのは、大事な友達を傷付けたくなかったからだろう。
 今までの俺なら、こんな申し出さっさと断るが、今は。
「いいか?」
 そう言い、女子達のグループに入る。
 その後も男子に声をかけられ、地元に残る者同士連絡を取ろうと連絡交換を提案された。
 俺は約束通り、あいつが病気と戦っている時に大学受験をし、合否を待っていた。
「ありがとう」
 気付けばそう呟く自分。
 互いに進路の話をし、地元メンバーで集まろうと盛り上がった。
 話せば気が合って、楽しくて、いい奴だったクラスメイト。
 俺が未来のことで憔悴していたから、話しかけてくれたようだ。

 俺は何、片意地張っていたのだろう?
 人間は裏切るものだと決めつけて、相手を見ていなかった。
 父親が以前より歩み寄ろうとしているのに、俺は気付かない振りをして無視を決め込んでいた。
 高校三年の春。大学に行きたいと言ったら、「金の心配はするな」と言い切った父親。
 準備していないと、即答など出来なかっただろう。
 父親は、金以外にも俺が気付かないところでしっかり親として育ててくれていた。
 そんなことにも気付かないぐらい俺はガキだったのだと、ようやく気付くことが出来た。
 そう思えるようになれたのも未来があの時に話を聞いて、俺の代わりに泣いてくれたからだろう。

 空を見上げれば、どこまでも広がる青色に白い雲。そして柔らかな日差しが俺達を照らしてくる。
 その暖かさが、あいつが見守っているようで。

 未来が、最後の言葉を伝えなかったのは、俺を縛り付けないようにする為だろう。
 バカだな。
 まあ。自分から言わなかった俺は、大バカだけどな。

 ……俺は、「お前が綴った物語の俺」に負けたくない。
 友達を作る。大学で文学についての勉強する。働く。いつか達也と仲直りする。
 そして小説を書くよ。未来、お前の物語を。
 全部やり遂げて、お前が思い描いた俺を越してやるから、覚悟しとけよ。

 君と綴る未来。

 未来と──。





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