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02話 お師匠様のリアルな夢
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それにしても、お師匠様とは何の師匠なのか。それは小説家というお仕事の師匠という事らしい。住み込みの弟子がひとりいて身の回りの雑事をしていた。この弟子がお師匠様と呼ぶので、チュビーノはお師匠様を「お師匠様」と呼んでいるのだ。弟子は時間が空いた時、お師匠様に自分が書いたものの添削を受ける。お師匠様の添削はからかった。弟子はそれだけ自分に伸びしろがあるんだと信じてがんばった。
先日ハクはこのお師匠さんをチュビーノに紹介されて驚いたことは記憶に新しい。父さん母さんから聞いた人間というものは、恐ろしい生物で残虐極まりない存在だった。しかしお師匠様は違った。巣から落ちたスズメのチュビーノを救い、野に放してからもご飯を上げているという奇特な人間だ。その様子を見た仲間のスズメたちが俺も俺もと集まってきてお師匠様にご飯をもらう。その数は日を追うごとに増えてゆく。もちろんスズメたちは他所の人間が恐ろしい存在であることを知っている。お師匠様の屋敷の庭は治外法権なのだ。しかし普通のスズメはお師匠様を100%信じることはないので特等席、つまりお師匠様の手のひらの上は、今のところチュビーノが独占している。しかしこの状況もすぐに多くのスズメたちが後を追うだろう。そして特等席は早い者勝ちになる。そして順番待ちの行列ができることは目に見えていた。
あれからというものハクはこのスズメの大集会に加わった。チュビーノの紹介という事でチュビーノと一緒に特等席で食べられることになった。お師匠様はスズメじゃなくても歓迎した。一羽だけハクセキレイだけど気にしない。お師匠様は差別したりしない。本当に優しい人間だった。愛鳥家と言ったらよいのだろうか。または前世が鳥だったのではないかという事も疑われる。それほど鳥を可愛がった。頭を撫でたり、両手のひらですくいあげて鼻先に持って行って匂いを嗅いだりもした。そしてすこぶる満足感を味わっているようだった。ハクもこの屋敷の周辺は誰もなわばりにしてないことを知り、ここ一帯を自分の縄張りとした。ご飯がただで手に入るのはありがたい。
そんなある日のことだ。いつものようにチュビーノが手のひらに留まって、ご飯をついばんでいると、お師匠様はいつものようにチュビーノの背中を撫でた。チュビーノが「くすぐったいよ」と話しているような気がしたと思っていると、お師匠様は何やら不思議な感覚に包まれた。そしてお師匠様はふいに「あぁー」と悲鳴を上げて気を失ってしまった。体が「メリメリ」と縮んで小さくなり、チュビーノやハクと同等の大きさの小人になってしまったのだ。しばらくしてお師匠様が我に返ると巨大なスズメとハクセキレイに挟まれているのに気づき再び冷静さを失った。
チュビーノが話し始めた。
「おや、お師匠様が小さくなってる」
お師匠様は自分の気がおかしくなったのだと思った。しかしこんな時は、冷静さを失わず元に戻る算段をすることだと自分に言い聞かせて
鳥が人間の言葉を話していることなぞ無視して尋ねた
「チュビーノ。おまえの背中をさすったらこうなったのだ。もう一度さすれば元に戻れるんだよなそうさそのはずさ。背中をこっちに向けなさい」
ハクが答えた。
「これは驚いた。お師匠様と話せるぞ」
お師匠様は尋ねた
「君は何という名かね」
「ハクセキレイのハクです」
「いいだろう覚えておこう」
「早くチュビーノ、背中をこちらに向けなさい」
「あーらよっと」
チュビーノはお師匠様の方に背を向けた
「ここを撫でれば元に戻るはずだ」
そしてそっとなでてみた
するとお師匠様は今度、急に風船が膨らむように「シュー」と音を立てながら元の大きさに戻っていった。しかしやはり気を失った。しばらくしてお師匠様は我に返ると、ほっと溜息をつき、安心した。
「どうやら夢を見ていたようだ」
と独り言ちた
「しかしそれにしてもリアルな夢だった」
お師匠様は気を落ちつけてそう言った。
先日ハクはこのお師匠さんをチュビーノに紹介されて驚いたことは記憶に新しい。父さん母さんから聞いた人間というものは、恐ろしい生物で残虐極まりない存在だった。しかしお師匠様は違った。巣から落ちたスズメのチュビーノを救い、野に放してからもご飯を上げているという奇特な人間だ。その様子を見た仲間のスズメたちが俺も俺もと集まってきてお師匠様にご飯をもらう。その数は日を追うごとに増えてゆく。もちろんスズメたちは他所の人間が恐ろしい存在であることを知っている。お師匠様の屋敷の庭は治外法権なのだ。しかし普通のスズメはお師匠様を100%信じることはないので特等席、つまりお師匠様の手のひらの上は、今のところチュビーノが独占している。しかしこの状況もすぐに多くのスズメたちが後を追うだろう。そして特等席は早い者勝ちになる。そして順番待ちの行列ができることは目に見えていた。
あれからというものハクはこのスズメの大集会に加わった。チュビーノの紹介という事でチュビーノと一緒に特等席で食べられることになった。お師匠様はスズメじゃなくても歓迎した。一羽だけハクセキレイだけど気にしない。お師匠様は差別したりしない。本当に優しい人間だった。愛鳥家と言ったらよいのだろうか。または前世が鳥だったのではないかという事も疑われる。それほど鳥を可愛がった。頭を撫でたり、両手のひらですくいあげて鼻先に持って行って匂いを嗅いだりもした。そしてすこぶる満足感を味わっているようだった。ハクもこの屋敷の周辺は誰もなわばりにしてないことを知り、ここ一帯を自分の縄張りとした。ご飯がただで手に入るのはありがたい。
そんなある日のことだ。いつものようにチュビーノが手のひらに留まって、ご飯をついばんでいると、お師匠様はいつものようにチュビーノの背中を撫でた。チュビーノが「くすぐったいよ」と話しているような気がしたと思っていると、お師匠様は何やら不思議な感覚に包まれた。そしてお師匠様はふいに「あぁー」と悲鳴を上げて気を失ってしまった。体が「メリメリ」と縮んで小さくなり、チュビーノやハクと同等の大きさの小人になってしまったのだ。しばらくしてお師匠様が我に返ると巨大なスズメとハクセキレイに挟まれているのに気づき再び冷静さを失った。
チュビーノが話し始めた。
「おや、お師匠様が小さくなってる」
お師匠様は自分の気がおかしくなったのだと思った。しかしこんな時は、冷静さを失わず元に戻る算段をすることだと自分に言い聞かせて
鳥が人間の言葉を話していることなぞ無視して尋ねた
「チュビーノ。おまえの背中をさすったらこうなったのだ。もう一度さすれば元に戻れるんだよなそうさそのはずさ。背中をこっちに向けなさい」
ハクが答えた。
「これは驚いた。お師匠様と話せるぞ」
お師匠様は尋ねた
「君は何という名かね」
「ハクセキレイのハクです」
「いいだろう覚えておこう」
「早くチュビーノ、背中をこちらに向けなさい」
「あーらよっと」
チュビーノはお師匠様の方に背を向けた
「ここを撫でれば元に戻るはずだ」
そしてそっとなでてみた
するとお師匠様は今度、急に風船が膨らむように「シュー」と音を立てながら元の大きさに戻っていった。しかしやはり気を失った。しばらくしてお師匠様は我に返ると、ほっと溜息をつき、安心した。
「どうやら夢を見ていたようだ」
と独り言ちた
「しかしそれにしてもリアルな夢だった」
お師匠様は気を落ちつけてそう言った。
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