「釘」

いちどめし

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感染る話

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 これはたぶん、口から耳に伝染するんですよ。

 ああ、わからないっていう顔ですね。
 いえ、遠まわしな言い方をしてしまったようです。
 もっとわかりやすく言いますとね、これは、話を聞いたらうつるんですよ。
 あくまでも私の予想、ですがね。

 え。

 いや、じらしているわけじゃあないんですよ。
 言い表すのが難しいだけです。

 そうですねぇ、あるお話を聞くとかかる、病気みたいなものなんです、これは。

 いいえ。
 私だって、おかしなことを言っている自覚ぐらいありますよ。
 だからね、これは私の推測なんです。
 だって、私のこの症状、と言うんでしょうか、これは、そのお話を聞いたときから始まったんですから。

 私にそのお話を聞かせてくれた方も、この症状のことを言ってしましたし、信憑性は高いのではないかと思っているんですがね。

 そんな。

 じらしているように聞こえるかも知れませんが、そんなつもりはありません。

 確かに、あれやこればかりで、聞いているぶんには気持ち悪いかも知りませんが、
 私だってなんとか伝わりやすいように――。

 はぁ。

 それは、聞きたいっていうことですか。
 でも、私と同じ症状に苦しむかも知れないんですよ。

 ええ。

 気のせい、ねぇ。

 そう、気のせいなんだって、私もそう思おうとしているんです。
 だけど、気味が悪くって……。

 ははは、わかりましたよ、言います。
 実を言いますとね、気味が悪いなりに、私自身、誰かに喋りたくてうずうずしていたところなんです。
 私は、あなたならこの話を聞いてくれるだろうと、心のどこかでは期待していたのかもしれません。

 じゃあ、言いますね。

 期待しないでくださいよ。
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