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第二十五話「竜の女王」
しおりを挟む―聖者の塔
ここは聖者の塔の頂上。
ルシファーとフォルス、そして竜の女王レンが雌雄を決しようとしていた。
「こちらからいかせて貰うぞ!」
灰色のポニーテールに赤き竜の鱗の鎧を着た竜の女王レンが炎を纏った大剣を片手で持ちルシファーに迫る。
ルシファーはそれを片手で受け止めるが受け止めた手が燃え焦げていく。
あまりの高熱に手を放しそうになったがルシファーはそれをやめた。
強引に大剣を掴みその怪力で大剣をへし折った。
しかしその剣の欠けた所から炎の渦が現れルシファーを飲み込む。
しかしルシファーは漆黒の翼を広げるとそれをはばたかせ炎の渦を掻き消した。
真のルシファーに変身を果たしたルシファーにとって人型のレンは相手にならなかった。
「こんなものか、最強の竜の女王の実力は」
「おのれ!図に乗るなよ!」
レンは額から角をメキメキと生やし巨大な翼を広げ尻尾を生やした。
大口を広げルシファーに向けて灼熱のブレスを吐く。
先程の炎の剣より強力な炎だ。
ルシファーは耐えきれず上空へ逃げる。
レンも翼を広げ上空へ舞った。
レンは再び炎を吐こうとしたが、ルシファーが手をかざすと身動きが取れなくなり苦しそうに首を押さえている。
ルシファーが手を握るとレンの首がへし折れ地面へと落下した。
しかしまだ終わりではなかった。
レンの体が赤く輝くと大きくなり、巨大なドラゴンに変身した。
これが真の姿なのだろう、これまで見たドラゴンよりも何倍も大きいドラゴンだ。
グオオオオオオオオオオオ!!!
凄まじい咆哮が天に響く。
ルシファーは銀の短剣を構えるとレンの尻尾にしがみついた。
心臓である竜核に辿り着くまでにはしがみついて巨体をよじ登らなければならない。
ルシファーが背中の方に辿り着いた所でレンの灼熱の炎が迫る。
自身の体でさえ焼けるのを躊躇しない攻撃だ。
しかしルシファーはそれに耐え着実に腹にある竜核へと歩みを進めていく。
必死に振り落とそうとするレンに対しルシファーは必死でしがみついた。
そしてようやく胸の竜核にまで辿り着き大天使の短剣を突き立てた。
グギャアアアアアアア!!!
「なぜ死なない!心臓を貫いたのに!」
レンの竜核は特別頑丈だった。
大天使の短剣といえどもう一押し足りないのだ。
もう一押し、もう一押しあれば……。
「困ってる様だな、手を貸そう」
いつのまにかルシファーの後方にいたのはフォルスであった。
フォルスは天使の短剣をレンの竜核に突き立てると凄まじいエネルギーが生じ爆発した。
ルシファーとフォルスは床に叩きつけられたがルシファーはなんとか無事だった。
ルシファーは瀕死のフォルスに近付き額に手をやった。
瞬間、フォルスの傷は癒えた。
「さて、竜の女王様も倒したし次は魔王軍かな」
「場所は分かっているんだろう?私の翼で飛んでいく」
こうしてルシファーとフォルスは竜の女王レンを倒す事に成功し、魔王の所へと向かった。
―魔王城
「逃げ帰った手負いのドラゴンなど相手にもならんわ」
魔王スカーレットが意気揚々と敗退したドラゴン達を殲滅していると、突如目の前にルシファーとフォルスが現れた。
「!?、急に出て来るな!びっくりするではないか!」
「そんな事より竜の女王を倒したぞ」
「おお!でかした!好きな褒美を取らすぞ!」
その魔王の言葉を聞き怪訝な顔をするルシファー。
「何か勘違いしてないか?僕は君に降伏勧告しにきたんだよ」
「なん……だと?」
「魔王軍が勝てない相手を僕が倒した。加えて魔王軍はボロボロだ。どっちが上か分かるよな?」
「くっ!しかし私は誇り高き魔王!こんな所で降伏する等……」
その言葉を聞いてルシファーが本来の地獄の魔王の顔をしてスカーレットを睨みつけた。
その何者も畏怖する赤い瞳にスカーレットは恐怖した。
「同じ魔王として忠告しておく。魔王は魔族の長なんだ。その責任を果たせない者に名乗る資格は無い」
ルシファーは地獄の檻に幽閉されるまでは、悪魔の長として長らく君臨していたのだ。
多少乱暴な所はあったが、悪魔達の管理はしっかりとこなしていた。
一方で今のスカーレットは部下の魔物の大半を失い、自身も大きく魔力を消費している。
今回の失態は魔王を降ろされる理由としては十分だろう。
「どうしても魔王をやめる気が無いならここで殺してやってもいい」
スカーレットは熟考した結果答えを出した。
「わかった、魔王の座をお前に譲ろう。私は隠居でもするよ」
「そんな強い魔力を野放しにするのは危険、もとい勿体ない。僕の店で働かないか?」
「私が酒場で……?ふ、惨敗したみじめな私には相応しい末路だな」
こうしてルシファーが新しい魔王となりこの世界の魔族を全て手に入れた。
後はミカエルとメタトロン一味である。
あのコンビを放っておくと脅威になりかねないと判断したルシファーは二人の捜索を始める事にした。
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