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第二章 鬼ヶ島鬼神面殺人事件
第十七話 鬼面の殺人
しおりを挟む一行は皆、送迎バスに乗って、東京の離島、鬼ヶ島にきていた。
ホテル前に停車し、続々と人が入っていく。
涼たちが降りてくる。同時に翔、若菜、カナも一緒だ。
目の前に姫君恭子のポスターが大きく張られていた。
余りにもドセクシーすぎて、妖艶だった。
これには涼と翔も一目見て、鼻の下を伸ばしていた。
「やっとついたな。鬼ヶ島ホテルってのはここか?」
「ここであるのね、姫君恭子のディナーショー」
「せんぱい、早く中に入りましょうよ」
カナと若菜が機嫌の悪そうなトーンでささやかにいった。
翔が突っかかってきた。
「そうっスよ、ホテルみてても仕方ないっス。恭子ちゃんの麗しの肢体が見たいっス」
「麗しの肢体って」
その翔の一言で大ブーイングがおきた。
「やっぱり、敵よねぇ~、かわいいから」
「なーによ、わたしの方がかわいいもん」
「あたしだって負けないくらいかわいいです」
女性陣は、余りに完璧すぎるかわいくてきれいなアイドルに嫉妬のまなざしを寄せていた。
言葉使いが、嫉妬に満ちていた。
翔と涼はきくと、やばいと青ざめていた。
そうしながら、涼たちはホテルの中に入っていった。
☆☆
涼たちは記念撮影が行われるステージ前にきていた。
「記念撮影会場ってここか?」
涼がそういったときだった。目の前のステージの舞台にひときわ輝く女性がいた。
もしや、この人は?
「きゃー、あれ、姫君恭子よー」
「へぇ、ほんものだ」
「悔しいけど、やっぱり垢抜けしててかわいいね」
カナが悔しそうな顔でそういったときだった。
もう、好き好き度数が止まらない人物がいた。
「笑顔げっちゅーっス! げっちゅー」
「はぁ、おまえなあぁーしょっぱなからそれかぁ」
涼が呆れて嘆息をついたとき、部屋にナレーション放送がかかった。
「おこしの皆さま、中央に集まってください。姫君恭子、ディナーショー記念撮影を行います」
ナレーションいざしらず、翔はビデオカメラを回しっぱなしだった。
ビデオには姫君恭子の姿が鮮明に撮られている。しかもアップで。
翔は鼻息を荒くしている。
「げぇちゅ、ブッ」
「(お前なぁ、なにがゲッチューだ、翔、黙ってろ)」
「二人とも何してるの? 姿勢正しくしなさいよ」
この一連の模様をみて、若菜はご立腹だった。気に入らないみたいだ。カナもだ。
涼があははと、嘆息めいた顔をしながら話し出した。
「らしいぜ、大人しくしようぜ」
姫君恭子を真ん中にし、記念撮影を涼たちはした。
目の前からプロカメラマンが全体を映るように撮った。
撮り終わり、しばらくして、ステージから皆がテーブルの椅子に着席していく。
「お渡し致しました、テーブル番号にご着席ください。ただいまから豪華メニューが出てまいります」
司会者がマイクを持ち、客を誘導していく。
「へぇ、豪華メニューだって!」
「俺たちはテーブル番号14だな。前の方でよかったな。若菜、カナちゃん、座ろうぜ」
「うん」「そうですね」
その座った時だった。
姫君恭子がステージに出てきた。
「みなさま、今日はお忙しい中、私のディナーショーにお集まりいただき、誠にありがとうございます。僭越ながら、QLB41のヒット曲、『アイウォンチューゲッチュー☆』をお聴きください」
そういい、姫君恭子は椅子に座った。
「バラードですので、立っている皆様、座ってお聴きくださいね」
「へぇ、あのヒットナンバーだよ。聞きたかったんだ」
「げっちゅーッス、恭子せんせの笑顔げっちゅーっス」
「おまえなぁ、恭子せんせって、俺たちと同世代じゃねーかよ」
「ふんだ、なによ、あんな女。どこがかわいいのよ」
「そうですよ、こんな近くにモデル真っ青のあたしだっているのに」
カナと若菜が仁王面で鬼のようだった。嫉妬は無限大だ。
「(こえー)」
その時だった。姫君恭子がマイクを持ったときだった。
「きゃー、なにあれー」
「なんだ?」
その場に何かが落ちてきて、大きな音と紅い液が飛び散った。
「人が上から落ちてきた」
「鬼のお面を着てる?」
「大変だ、死んでる。幕を下ろせ!」
ステージに怒号が相次いだ。
ステージの上から急いで幕が下りていく。
涼の顔つきが変わった。
「いけない、これは殺人かもしれねー事件だ! 野志穂警視に連絡だ」
涼はすかさず、急いでスマホで野志穂警視に連絡した。
電話がつながった。しかもテレビ電話だった。
「野志穂警視、大変だ、鬼ヶ島で人が死ぬ事件が起きた。すぐきてほしい」
なにやら、涼の顔色が赤い。
野志穂警視はお風呂に入っていた。
「あら♡ 私今入浴中よ、ほら、綺麗でしょ、ノーブラよ」
そういい、タオルからチラッと大きな胸を見せつけ、綺麗な長い脚を上にもちあげた。
高校生には刺激が強く、涼は赤らめた。
「ほらじゃねー、なんでいつも、そんな露出高いんだよ」
「あら♡ 照れちゃって、かわいい。私の入浴姿みたいくせに」
「(いつか、襲われる)う、とりあえず、きてください。早急に」
「わかったわ」
急に野志穂警視はスイッチが入ったように真顔でいうと、涼は電話をきった。
翔が言い寄ってきた。
「師匠、また例のAV女優みたいな警視さんですか」
「そうだ。いっつもほとんど裸なんだよ、電話したら、しかも、テレビ電話だぜ」
「いいじゃないっすか、美人の警視で。そんな上司うらやましいっす」
「テレビ電話じゃねーといけないっていうんだぜ、電話だとかけてもでないんだよったく」
「なんてセクシーな警視。憧れるっス」
そのときだった。
「いてー」
「フンだ。しらなーい」
若菜の足蹴が涼の足に飛んだ。
鬼の面を付けた状態で殺された人は一体誰なのか。憶測が飛び交っていた。
「まさか、夏元靖せんせ」
「きゃー」
怒号が飛び交った。どうやら、有名人のようだ。
姫君恭子は、余りの出来事にその場にへたりこんだ。
これは殺人なのか。なら、一体、誰が何の目的で鬼の面をつけそんなことを。
☆☆
近日UP予定。感想おまちしてます。
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