魔双戦記アスガルドディーオ 神々の系譜

蒼井一

文字の大きさ
上 下
58 / 203
第九章 神玉の冒涜

第百十二話 現れた無数の巨躯

しおりを挟む



ウィード、ファイ、レイティス、オネイロスの四人は、西に歩を歩ませ、池の前まできていた。

 来た途端、ウィードが手の平を広げた。
「ディスチャージ! フィンウィンド!」
「ディスチャージってまさか」
 手元にウィードは、透明状態にしていた、魔剣を出でさせた。
 そして、段平を裏返した。

「みなさん、離れてて」
 いうと、ウィードの紋章を介し、ラスタが発生した。
風魔弾ウィンドブリッド!」
 ウィンドブリッドが数発、池の前の地面に突き刺さった。
「それ、地面をえぐりあげろ! かまいたち!」

 SHUUUN!
 
 何と、地面にウィードの風の術が炸裂し、爆風を巻き起こし、その場の地面がえぐれた。
 そこからは、地盤が抉れ、塊のようなものがたくさん出てきた。
 技の使い方に、みな、きょとんとした。
 こういう使い方もできるわけだ。

 ポカンとなってるところ、オネイロスが第一声を発した。
「地面を掘りあげた?」
「地中から貝みたいなのが?」
「ウィード様、この貝は?」
「ああ、この貝ですか。川や池に生息する、シジミュンという食べれる貝です。毒はありません」
 ファイの言葉にうなずくとウィードは持っていたオケに貝を入れだした。
 そして、落ちていた大量のシジミュンを四人はしばらくの間、拾い集めた。

「よし、オケ一杯にとれた。これでみんなの食料になる」
「あとは、魚がほしーな。だけど、釣り竿じゃ、暗いしらちが明かねーな」
 ファイはそういうと、池の方に歩み寄った。
 池は底が見えないくらい深かった。

「前みたいにもぐるか」
「お前、デッドラインに差し掛かってるのに、前みたいに潜って、水魔竜みたいなのがでたらどうするんだよ」
 レイティスが心配そうな顔つきでファイに言い寄った。

 そのとき、ウィードが答えを返した。
「この池なら、魚はいると思いますよ。比較的大きい池ですし」

「よし、俺がいく。もぐって時間が大分して出てこなかったら、キュラ様に報告してくれ」
「そんな、ファイ無茶な」
 レイティスが心配そうな顔つきで再三やめろといった。

 だが、ファイの見解は変わらなかった。山菜といっても、肉系はない。みなの食料を確保するには肉系は必至だとファイは判っていた。力を伴うものも。
 そして、一呼吸おいて、ファイはレイティスの方を向いていった。
「大丈夫だ。こうみえても俺は魔剣士だ」
 レイティスは言いたそうな口を閉じた。オネイロスがポンとレイティスの肩をたたいた。
 
すると、今度はウィードの方をファイは一瞥いちべつした。
「ウィード様もそこにいてくれ」
「しかし、一人では」
「俺だけ行く。よし、いくぞ。大きいのを捕まえてきてやるからよぉ」
 いうと、ファイは池の中にドボンと飛び込んだ。

 レイティスが顔を手で抑えながら言葉を紡いだ。
「ああ、飛び込んだ。ほんとに戻ってこれるのか」
「大丈夫だ、レイティス、あいつを信じろ」
 オネイロスは信頼しきった顔で言った。
 レイティスもファイを信頼していた。ウィードも。
 
三人はファイが獲物を捕らえて無事出てくるのを祈りながら待っていた。
 この間にもキュラたちの夕食の準備は着々と進んでいた。







☆☆
 

その頃、エリューたちも、山菜を見つけ、ファイたちとは逆方向の東側の森林にいた。
 しばらくの間、ズット山菜を摘んでいた。

そして、またエリューが何かを見つけ、声音を発した。
「ありました、これはシイタケンっていうきのこですね」
 そういい、エリューはきのこを摘んだ。

「あ、エリュー、こっちにもあったよー」
 ニミュエも同じきのこを見つけ、小さい体で精一杯にきのこを引っ張り、きのこをちぎった。

 そのとき、ヒョウが何かを見つけた。
「この植物は食べれるのじゃないのか」
「ヒョウさん、それはワラビンっていう山菜ですね。食べれますよ」
「さすが、魔法使いだけあって、植物の知識も博識だな。調合とかもできるのじゃないか?」

「いえ、そんなことないです。よく子供の時、お母さんに連れられて森や山に入って採ってましたから」
 エリューは大人しい声でトーンを落としながらいった。

 ヒョウは軽くうなずいた。すると、ニミュエがしゃべりだした。
「ファイたち大丈夫かな。食料調達できたかなぁ」
「きっと、ファイさんたちなら大丈夫ですよ。腕はあるし」
「……全部丸焼きだなんて、燃やしてなきゃいいがな」
「そんな、ファイさん本気でやったら丸焦げじゃないですか」
 エリューの言葉にヒョウは微笑した。ニミュエも笑った。

 ヒョウは調達してたまっていたオケを見遣った。
 オケはきのこや、他の山菜で満タンだった。
「よし、結構、集まったな、オケ一杯だ。帰るとするか」
「そうですね」

 そのときだった。
「エリュー、待って、何かいる!」
 ニミュエがエリューの肩に急いでとまり身震いをした。
 ヒョウの鋭い眼光が光る。何かを察知している。
「殺気、気をつけろ、邪悪なものがいる」
 ヒョウは邪悪な何かがいることに気づき、瞬間的に魔剣アイスブレイカーを手元に出した。
 エリューも警戒し、辺りを見回した。

 辺りには紅い目の眼光がみえた。
「まさか、モンスター? デッドラインテリトリーだから?」

「三、四、五……八、多いな、二人とも俺から離れるな!」
 ヒョウが敵の数を察知した時だった。
 頭上から何かが舞い降りてきた!
「(殺気)上だと! ええい」
 急いで感知し、ヒョウはエリューを片手で抱きかかえ、ニミュエも一緒に抱え、遠くに飛んだ。
「きゃぁ」

DWOOONN!

 何者かがヒョウが飛んだ後に、大音をたてて、舞い降りた。
 その姿は人の何倍もあろうかという巨体の猿だった。
「なんだ、あの異様な大猿は?」
 大猿が群れを成して、三人を狙っている。

 だが、それに負けるヒョウでもなかった。
 周りを囲まれている。逃げ道もだ。
 三人は、背水の陣だった。
「くそ、戦力が分断してるようなときを狙ってか、いいだろう、大猿、返り討ちにしてやる!」
 いうとヒョウは魔剣の段平を裏返した。

「こい!」
 ヒョウの雄叫びとともに戦闘が始まった。








☆☆
明日アップ予定。気軽にキャラでも内容のことでも感想をかいてくれるとうれしいです。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...