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第六章 追憶の魔船

第八十四話 闇の狭間

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「やったか!」
「なにをしている! 息の根を止めるまで攻撃の手を休めるな!」
 レヴェルは、ヒョウとファイに檄を飛ばす。
 そして、レヴェルはすかさず、瞬速移動で動き、テュポンとの間合いに飛び込み、魔闘気を一瞬のうちに爆発させた。
 魔剣に魔闘気が集中していく。
 レヴェルはニヤリと笑い、魔剣を振り被った。

「おらよ、おまけだ、とっときな」
「闇剣(ダークブレイド)連撃!」

 DWOOOOON!

 大型の闇の力を付したダークブレイドの連撃がテュポンにぶちあたっていく。
 壁にひびが入った。
 効いている。技の効果は確かにあった。
 そして、レヴェルはニヤリと笑い、瞬速移動でテュポンの攻撃を躱しつつ、懐へ入りこんだ。その時だった。

「もっかい、魔界で寝んねしてな」
「うらあああぁ!」
 なんと、テュポンのヒビが入った闇の障壁に魔剣を突き刺したではないか。
 ヒビが大きくなっていく。一部が壊れて闇のバリアが崩壊した。
「すごい、テュポンの防御壁を破った!」
「同じ属性だから、壁を壊せるんだ」
 ファイとヒョウはレヴぇルの猛攻に息を呑んだ。
 破った好機をレヴェルは見逃さなかった。
 レヴェルの魔剣に闇のエネルギーが爆発的に集束していく。
 次の瞬間!
「闇魔殺斬(ダークブレイク)!」 
「ぐはぁ!」
 レヴェルの大技がテュポンに炸裂した。一瞬のうちに大爆発が起き、拡充していた闇のエネルギーで辺りは紫色に染まった。この一撃は見事にテュポンの闇の障壁を完全に破るのに成功していた。

「なんてスピードだ」
「ぐ、まずい、闇のエネルギーを使い過ぎた。奴のエネルギーを吸収しなければ、ぐ、くそ! こんなときに」
「レヴェルさん!」
 レヴェルは心臓を手で掴み、松葉づえ地に刺したようにがくんと足をついた。
 身体を蝕まれている証拠だった。
 テュポンは不敵な笑みを見せた。

「よくぞ、我が壁を突き破り、斬りこんだな。フハハ、実に惜しい。魔神剣士といえど、生身の人間。闇の魔剣アンタレスバロールは生気を吸収するはず、お前も、闇の力に囚われ、体を蝕まれていよう、勝ったな」
「くそっ、後一撃、喰らわせれば!」
「しねぇ、邪炎波(ダークフレイム)」
 テュポンから闇の炎が瞬く間に発せられた。
 レヴェルとの距離はもうない。至近距離過ぎて躱す余地がなかった。
「(しまった、やられる!)」
「レヴェルさん!」

DWOOON!

レヴェルに闇の炎がクリーンヒットし、可也の威力だろう爆発が生じた。
 このテュポンの一撃を喰らっていれば、ファイと言えど、致命傷だ。生きていたとしても立てるかどうかわからないくらいの攻撃だった。
 爆炎が飛び散り、砂塵が舞った。
 砂塵が舞い、レヴェルの姿は見えず、生きているかどうかも確認できなかった。
 しばらく経ち、砂塵が収まり始めた。
 そのときだった。

「魔剣士たちよ、よくきけ、奴の弱点は胸に光るあの紫色のコアだ。あれが闇の力を永久的に漲らせている基だ。それを壊せば、力は供給されなくなる」
 なんと、一同が垣間見たものは、みたことのある人物の姿だった。レヴェルは無傷で生きていた。あれだけの衝撃波をこの人物は軽く防いだのだ。

 テュポンは睨みをきかせた。勝機を見出せるか。



☆☆
第八十五話につづく。Up予定。気軽に感想かいていただければ嬉しいです。
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