魔双戦記アスガルドディーオ 神々の系譜

蒼井一

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第五章 古代から生き永らえたもの

第六十八話 魔装具

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真っ二つに身体が割れて、片足、片腕だけで仁王立ちになっているではないか。血飛沫が飛び散り、その場に血溜まりが出来た。
「ググッ、がはぁッ、デカラビアよ、生きているかァッ? あの一撃を真面に喰らっていたら、幾ら、お主でも、死んでいたかもしれんぞッ」
リビコッコは、身体が微動だに震えながらも、立ち、苦しそうな声で言った。
デカラビアは、その場の光景に目を疑った。リビコッコに近寄ろうとした。
「偏屈の野郎、土壇場でデカラビアを庇いやがったか」
「魔族の連携プレーか、やってくれるぜ」
ファイが魔剣を強く握り返し、段平をぎらつかせながら言う。
隣にいたヒョウも構え直し、間合いを詰めだした。
「だが、見ろ、ダメージは確実だな」
ヒョウが鋭い眼光で一瞥し、考察しながら言う。
ファイも見遣る。確かに、リビコッコは致命傷だ。
デカラビアが瓦礫の山から立ち上がり口を開いた。
「お主、半身が……」
「察するな、ワレは、鋼の鎧で、仮だが身体が完全に元に戻る! こんな風になぁ!」
その瞬間、血だらけのリビコッコの身体が、オーラの力で勢いを上げて、輝き出した。
激しくオーラが満ち溢れ、威圧感が漂う。
そして、それは、リビコッコに集束していく。
ファイたちにまさかと懸念の色が走った。
「!」
「させるかぁッ、もう一撃!」
「はぁぁあぁぁがぁあぁぁぁぁぁぁあぁっぁッ!」
ヒョウが咄嗟に動いたが、それより速くリビコッコの術は始動した。
リビコッコが雄叫びを上げた瞬間、何と、無くなった身体が見事に元通りに復元していた。
だが、身体の色は元の地肌ではなく、鋼鉄などの鉄の色だった。
「そ、そんな、無くなった身体が元に戻るなんて」
イーミ姫さまが遠くから、唖然となりながら、声を漏らす。誰もが目を疑った。
エリューも隣にいたが、開いた口が塞がらない。
「ッ!」
ファイが悔しそうに舌打ち歯軋りを噛んだ。
「チィ、半身が鋼の身体か、再生しなければ、即死だったのにな、運のいい奴だゼ!」
ヒョウが、言いながら、魔剣の段平を裏返した。
奴の攻撃に対して、威嚇をしている。
「済まぬ、リビコッコ。借りが出来たな。一緒に戦って、ケリを付けるぞ」
デカラビアが筋肉を膨らませ、戦闘態勢に入った。間合いをジリリと詰めだす。
隣にいた、リビコッコも不敵な笑みを見せた。
リビコッコはニヤリと笑い、新しく出来た身体の半身を試すかのように、手足を右往左往させ、動かしていく。
「デカラビア、珍しいな、我らが、こう、本気で一緒に戦うのはな」
リビコッコが身体の骨を鳴らしながら、獰悪に言う。
「我らは、魔族、魔を滅する者には負けん! 死霊騎士様の為にもな、行くぞ、リビコッコ!」
「おう!」
リビコッコが応答したその瞬間だった。デカラビアが動いた。
「透明状態解除(ディスチャージ)、死霊星手裏剣(デス・スターダート)!」
「な、何! 魔装具だとッ!」
ファイが驚き、懸念した。その時、デカラビアの手の辺り一面に、オーラを纏った手裏剣のようなものが、無数現れていた。紅い闘気を纏っている。
これが戦闘の合図だった。火蓋を切り、デカラビアが俊足に動き、間合いを詰めた。
「我が、無数の手裏剣からは、逃れられん! ほうら、ほうらぁッ!」
無数の手裏剣が放たれ、勢いを上げて、空を切り、ファイ目掛けて追いかけていく。
ファイは後ろに飛び跳ねて、リーチを稼ごうとした。
だが、予想以上にデカラビアの武器は速かった。風切り音が立ち上がる。
「クッ、速い、(追いつかれる)」
ファイは、後ろに飛びながら、眉毛を吊り上げ、怪訝な面持ちを見せた。
間合いが狭まり、追いつかれ、手裏剣がファイに直撃しようとした!
「行けぇ、魔剣士をギチョギチョに切り刻めぇッ!」
「しゃあねぇ、こい、弾き返してやるッ、うらぁぁぁぁあぁあぁぁッ」
躱すのが、無理と判断したのか、ファイは立ち止まり、空中に飛んだ状態で、堪えようとし、次々と、上手いこと手裏剣を魔剣で弾いていく。
だが、その時だった。
リビコッコが、見えない速さで移動し、間合いを近接状態まで詰めて、ファイの左側から、大振りのパンチを繰り出した。
しかし、何か様子が変だ。
「もらったぁッ!」
「ッ!」
「(速い、何! クローだと?)」

KAKINN!

リビコッコの右手に見たこともないようなクローが出現していた。クローから、オーラを噴出しながら、凄い威力だろう一撃を、上手いことファイは魔剣で挟み込んで受け止め、防御した。
一撃を受け止めた瞬間、ファイは瞬速移動で前からの手裏剣に対しての間合いを咄嗟に取った。
近接攻撃が飛ばない所まで移動するのに成功した。
だが、焦りの色が出ていた。
後ろの方で、エリューとイーミ姫さま、テアフレナがその模様を心配そうに見詰めてた。
エリューは飛翔魔法で飛んで行こうとしていたが、イーミ姫さまがそれを上手く捕まえて牽制していた。
ヒョウも気配を消し、ジリリと間合いを詰めだした。
「ほう、瞬速移動か? やってくれるな」
デカラビアが舌を這いずり出し、獰悪な瞳で声音を漏らした。
その視線は殺すこと一つに専心しているようだった。
「グヘへ、ワレの死霊鋼武拳(デスフィスト)の一撃をよく躱したな、褒めてやるぞ! だが、もう一撃、腹にボディブローが入ったのは残念だったな、ゲヘへ」
リビコッコが何かに成功したような自信過剰な面持ちを見せ、ニヤリと不敵な笑みを見せながら言った。
「(何て重い一撃だ)グ、がはぁッ」
ファイはその瞬間、苦しそうな表情で腹を押さえ、片膝を地面に落とした。
魔剣を地面に突き刺し、立っている姿勢を保つのに必死だった。
それほど、強烈な威力だったのか。
「迂闊だッた、あいつも、魔装具を持ってやがったのか」
苦しそうな顔でファイは言う。
突き刺した魔剣を軸にして、どうにかして、立とうとした。
「ファイ様!」
エリューが見ていられないといった面持ちで飛び立とうと、歩を歩ませた。
「ダメよ、エリュー行っちゃぁ。大丈夫よ。ああ見えても、彼は、炎の魔剣士よ」
「ッ!」
イーミ姫さまがエリューの前に立ち開り、腕を掴んで必死に行くことを制止した。
エリューは少し辛そうな顔をしたが、すぐ、聞き分けた。
その時、丁度、上手い具合にヒョウがファイの元に近付いてきた。
重厚な声でヒョウは口を開いた。
「大丈夫か? 見えたぞ。一瞬だが、懐に奴のパンチが入ったな、ファイ!」
そう言い、魔剣を構え、ヒョウは、ファイを守るようにファイの前に立った。
「へへ、すまネーな。あのリーチで、どっちも防ぐってのは、出来ネーもんだな。くそ、オーラ技を躱すので精一杯だった」
ファイが眉毛を吊り上げ、少し咳き込んで、顰め面で、言葉を濁すように言った。
その時だった。強烈な威圧感を感じた。







☆☆
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