魔双戦記アスガルドディーオ 神々の系譜

蒼井一

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第五章 古代から生き永らえたもの

第六十五話 古に伝わる伝説の種族

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「出て来い、死霊団マレブランケ! どうせ、そこらで身を隠して聞いてんだろ? 出て来やがれ」
ファイが、拳を胸の前で握り、ベイリン村に響き渡るくらいの大声で雄叫びを再び上げた。
ヒョウやレギン、エリューも家の中から出てきた。
後から、イーミ姫様、他の皆も、キュラ、テアフレナ、アザレ、恐る恐る、ボンの姿もあった。
辺りが、静まり返り、一瞬、空間が歪みどよんだ。その時だった。
「言わずとも出てきてやるわ!」
空間の歪みから、ゆっくり身体を出してきた悪魔がいた。
死霊魔兵のデカラビアだった。
獰悪な声で吠え、ファイたちに威圧感を与えていく。
そして、隣の空間がまた歪んだ。何かが出てきている。
「グヘへ、今度は、逃がさんぞ、小僧!」
死霊魔兵、二人が完全に姿を現した。
その雰囲気は異様というよりかは、ベイリン村の民を皆殺しにした、凶悪な存在だった。
ヒョウがキッとリビコッコを凝視した。
「丁度いい、お前らの遣り方には、虫唾が立ってたんだ! 偏屈ども殺してやる」
ヒョウはギラりと魔剣の段平をギラつかせ、闘志を剥き出しにしていた。ヒョウの気迫のオーラが出ていた。
だが、皆、気持ちは一つだ。許せなかった。
「左手のお返しはさせてもらうぞ、小僧! その台詞そっくりそのまま返してやるわ」
リビコッコが左手を右手で被りながら言う。
そして、どうしたのか、目線を後ろにいたレギンに移した。
「ん、見慣れない大男がいるな、お前らの仲間か?」
「!」
リビコッコの言葉にレギンは睨み返し、一瞬、黙り込んだ。
「仲間だとしたら、どうした? 俺を殺すのか?」
レギンはニヤリと不敵な笑みを見せ、フフンと余裕たっぷりに言い返した。
死霊魔兵が二人とも嘲笑った。
だが、レギンは動じなかった。
「お前など、普通の人間風情が何を言う? 言葉に気を付けるんだな、挑発的な言葉は死を招くぞ。今のうちに背を向けることだな、フハハ!」
リビコッコが小馬鹿に罵ったその時だった。レギンが動いた!
「普通の人間ならな! くらぇぇッ!」
「な、何、速い」
「ぐはぁッ」
何と、レギンが俊足に動き、ボディブローをリビコッコにお見舞いしていた。
流石のリビコッコも油断していたのか、レギンの動きについて来れなかったようだ、真面に喰らい、数歩、グググと足をおどけさせ後退る。
周りにいたファイたち皆が驚いていた。
あのヒョウと遣り合った魔族のリビコッコに一撃を与えたからだ。
「大丈夫か、リビコッコ! あやつ、一体、何者じゃ! 人間の動作速度を超えている!」
デカラビアがレギンの方を見遣り、同時に睨み返しながらいう。リビコッコは片足を地面につき、腹を抱えていた。
普通の人間の攻撃ではないのか?
「坊主、俺は判ってたぜ、お前達も普通の人間じゃねーな、さっきの技を見て判った。お前らは、魔神剣士だな!」
レギンが両腕を構え、一瞬、後ろにいたファイたちを一瞥し、警戒に言う。
だが、緊迫感は犇めいていた。
「レギンさん!」
ファイが一歩、歩み寄り、心配そうに言う。
ヒョウが、待てのジェスチャーをし、相槌を打った。
「封印しとこうと思っていたが、こいつらは、恐らく魔族、なら、俺も本気を出すまでよ」
次の瞬間、何やら、レギンの身体から、魔闘気のようなものが満ち溢れていた。地面が揺れる。空間のズレを感じる。
レギンが魔闘気を高め、最高潮に達した時だった。異変が起こった。
「クラあぁぁッぁあっぁぁぁぁぁあぁぁぁっぁぁあッ!」
何と、レギンの人間の姿が昂揚した雄叫びと同時に、白い豹の姿に変身していた。
レギンから圧倒する、漲る力を感じる。
ファイもヒョウも、死霊魔兵もその場にいた誰もが、威圧感を感じていた。
「な、何? 獣に変身しただと?」
リビコッコが立ち上がり、声音を上げ驚嘆する。
デカラビアも隣で鋭い目付きをしていた。
「この姿になるのは久しぶりだ! お前ら、目を向けて歩けると思うな」
そういい、レギンは不敵な笑みで、死霊魔兵の方に歩みをゆっくり寄せていく。
「姿が白豹に変わった?」
ファイが唐突な出来事に驚き、唖然となりながら言った。
「人白豹(ワージャガー)だわ」
「人白豹(ワージャガー)? 一体、イーミ姫様、何なんですか?」
ファイが隣にいたイーミ姫さまに答えを返した。
イーミ姫さまが怪訝な面持ちで何か知っているような顔つきで続け様に喋った。
「昔、ソレイユ王立図書館にあった古文書で読んだことがあるわ。古の森パルティアには、人から白豹に変身する伝説の種族が存在すると」
一瞬、イーミ姫さまの言動に驚嘆し静まり返った。
驚きが凄かった。
「まさか?」
「彼が恐らく伝説の種族の一人ね、まさか実在するとは思わなかったわ」
耽々とイーミ姫さまは述べていく。
レギンがその会話のを聞いたのか、ファイたちを一瞥した。
「フフ、驚いているようだな、よく知っているな、その通りだ、俺が古の森パルティア、伝説の種族イーリアスの生き残りだ!」
「イーリアス?」
ファイが怪訝な面持ちで聞き返す。
レギンは不敵な笑みで笑った。
筋骨隆々の獣の姿は威圧感とともに漲る力を発していた。






☆☆
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