魔双戦記アスガルドディーオ 神々の系譜

蒼井一

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第四章 虚実の幽霊船

第五十一話 鬼の死霊団マレブランケ

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ファイたちは船に乗り込んで、アレクサンドロスへ向かう為にマリーンを出て、航海をしていた。
その時だった、異変が起きた!
「何だ? この瘴気は!」
ファイが血相を変えて、船室から出てきた。
突拍子のない慌てた声を上げる。
「お前も気が付いたのか!  ファイ!」
船外にいたヒョウが、出てきたファイに視線を遣り、眉毛を燻らし、怪訝な面持ちを見せる。
「あれは?」
海上に霧が立ちこみ、視界が悪くなっている。その霧が出ている向こう側に、薄っすらと船のような物が見えてきだした。
ファイの表情が一変した!
「来るぞ! 例の幽霊船だ!」
ヒョウも瘴気を感じ取り、身を乗り出し警戒する。
冷静な面持ちだが、声高になっている。
その時だった!
「あッ、エリューにキュラ様!」
エリューとキュラだ。
胸騒ぎがしたのか、状況を察知して、船内から出てきた。
ファイは困惑していた。
「ファイ、ヒョウ、我らも出来る限り戦う」
「私も、魔法で手伝います!」
キュラとエリューが意思聡明をはっきりし、訴えた。
「キュラ様、姫様は?」
ファイが気にかかっていたことをいった。
キュラはコクリと頷いた。
「大丈夫だ。テアフレナに他のものが用心深くみている」
キュラがいうと、隣にいたエリューももう、戦う意気込みになって、杖を構えている。
「……!」
ファイが困惑し、暫くの間、互いに譲れない沈思黙考の状態が続いた。
「しかし、もしものことがあったら……!」
「おい、ファイ、お前が説得できる相手か? そんなことより、構えろ! 何か来るぞ!」
ヒョウは、固唾を呑んでいるファイに急かし、言い聞かす。
その間にも幽霊船は近付いてくる!
「マリーンを出てみりゃ、即座にまた一難か。上等じゃネーか!」
ファイは甲板に出て、魔剣イフリートを透明状態解除(ディスチャージ)から解除し現せて、段平を引っくり返し、ぎらつかせる。完全に警戒し戦闘状態だ。
「フハハ、相変わらず威勢の良いことだ!  ん、今度は手勢が多いのぅ!」
至近距離まで近付いてきた幽霊船から、鎧マスクを被り、背中にドラゴンの羽のような物を引っ提げた騎士が現れた。
赤い目を空中で光らせ、人差し指で人数を黙殺するように数える。
「死霊騎士(デスナイト)か!」
ファイが甲高い声で第一声を発した。
一同に動揺が走る。
「魔剣士どもよ、また会ったな!」
鎧マスクの下から赤い目を鋭く光らし、威嚇するようにデスナイトはいった。
銀光が炯炯としている。エリューが後ろで身震いしながら、構えていた。エリューは怖いのだ。魔族らしき強い奴と戦うのが。だが、ファイたちにそれはなかった。
強い奴ほど、挑発するようなそんな素振りだった。
「骸骨、後悔するなよ、俺が地獄へ送ってやる!」
ヒョウが構え、死霊騎士(デスナイト)を凝視し、重圧のある声で、地獄へ落ちろのジェスチャーを右手でする。
「ひい、ふう、みぃ、よ、フフ、ワレが戦うまでもないわ! そおら、古代より甦った鬼の死霊団マレブランケよ! 行け!」
死霊騎士(デスナイト)がそういった矢先、白い靄のようなものが薄っすらと現れ、幽霊船から死霊のような物が大勢うようよ現れた!
「鬼の死霊団マレブランケだと?」
ファイが怪訝な面持ちで、眉毛を燻らし、構え直し、動揺の色を浮かべる。その瞬間だった!
「キャー!」
エリューが死霊に囲まれている。
今にも死霊の鋭い凶弾にやられそうだ。
「エリュー!」
ファイは必死でそのエリューを囲んでいる死霊を魔剣を振るい、追い払った!
「(赤い骸骨? 白い目!)ファイ、気を付けろ、死霊ムオーデルだ! 奴ら、ムオーデルを従えてるぞ!」
ヒョウがふと思い出したように、ハッとし、急いで身を乗り出して、ファイに忠告する。
「やっかいだな、物理攻撃が全く効かない敵だ!」
隣にいたファイが、苦渋に満ちた面持ちで、魔剣イフリートの切っ先を掲げ、けん制するように構え直す。
「いいや、そうとも限らないぞ! 普通の剣捌きならともかく、俺たちの攻撃は魔闘気付きだ」
「試しに斬ってみろってことかッ!」
「フハハギャ、死霊を斬るなんてこと、本当に出来ると思っているのかギャ!」
「何奴!」
「おぉ、リビコッコとデカラビアか!」
「我は死霊騎士(デスナイト)様に使える死霊魔兵、デカラビア也!」
「同じく、ワレが死霊魔兵、リビコッコだギャ!」
「クッ! 死霊魔兵だとッ! 魔兵か何だか知らないが、見るからに敵には違いネーって訳か!」
「死霊だろうが、アンデッドだろうが、一矢、報いる以上、潰すまでだ! 偏屈、こい、相手になってやる!」
「フハハ、威勢の良いことだ! どれ、ワレは高みの見物と行くかのう!」
「逃げるのか、死霊騎士(デスナイト)!」
「逃げるのではない、ワレの重臣二人を倒せたら、いつでも相手になってやるわ。だが、倒せたらな、フハハ!」
「アイツ!」
「冷静になれ、ファイ! 敵の思う壺だ。俺達を挑発してるんだ!」
「……ッ!」
「デカラビア、手を出すな! あのワレを偏屈といった奴を、ワレが殺す!」
「そうか、じゃ、我はお前の獲物には手を出さん、我は、隣の魔剣士を殺させて貰うぞ!」
「何グタグタ言ってるんだ、こいッ、偏屈ッ! 怖気づいたか?」
「いわせておけば小僧!」
「行け、死霊ムオーデル!」

GUOOOOOOOOOOON!

「ファイ、ムオーデルの赤い瞳に気を付けろ! 奴らの目は、夢魔の死の魔法と同じ効力を持っているぞッ!」
「あぁ、判ってる! よく知らネーが、確か、呪いの魔法?」
「ファイさん、夢魔も使う属性が死の、死呪印(デス・カーズ)系の魔法は古の死神が使っていたと言われる、死の魔法で魔法使いの間では御法度になっている禁呪魔法です」
「おい、エリュー、一体その死の魔法ってどんな魔法だ!」
突拍子のない声でファイが聞き返す。
「私が、簡単に説明してやる。一度、呪いを掛けられると精神世界から、魔法汚染してきて、自身の精神力がその魔法の呪縛に勝てないと、死に至るっていう、人間の内面から攻撃する恐ろしい魔法だ」
「それじゃぁ、その死の魔法に掛けられたら、俺達の精神が勝てないと死ぬっていうことか?」
動揺し、ファイは声を強張らせる!
「そういうことだ! 気をしっかり持てファイ! 今まで以上に違うポテンシャルの難敵だ!」
ヒョウが魔剣を構え直し、怪訝な面持ちで前を睨み付けた。


☆☆
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