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第二章 封印の書
第三十七話 起死回生の一撃
しおりを挟む「(……ん、あれは?)!」
ヒョウは顔色を変えることもなく、何か判ったように冷静に斬られたファイの亡骸(なきがら)を見る。
それは血が出ることはなく、炎が亡骸(なきがら)から立ち上がっているだっけだった!
「(炎? この形容(タイプ)は! 炎残像(フレアシャドウ)か?)!」
ヒョウは勘付き、ニヤリと冷淡に笑った。
そのとき、ヒョウも全て魔月輪(デビルチャクラ)を瞬速移動で俊敏に華麗に躱していく。
「散れ!」
そのときだった。
どこからか、瞬速移動で上手く躱したファイは掌を握った!
すると、みるみるうちに亡骸(なきがら)が燃えて薄くなり消えていく。
やはり、ファイは生きていた。キュラやエリューが安堵の色を浮かべ、胸をなでおろした。ニミュエも息を吐いた。
「俺を殺(や)るんだったら、ここにこい! ぶちあててみろ! 半端な攻撃じゃ効かネーぜ!」
ファイは過剰気味に喉元に右手の親指を突き刺すようにグッとつき押し止め、エウリュアレを皮肉たっぷりに挑発する。
「クケケケケ、そうこなくっちゃッ、面白くネーぜ! 魔剣士どもよぉぉぉぉ!」
奇声を放ち、語尾が激しく昂揚し、次の瞬間、間髪を入れず、エウリュアレは動いた!
「まだまだぁぁぁぁ!」
エウリュアレはほざくと手を素早く動かし、全て計九個の魔月輪をファイの方に誘導させて追撃をしていく。
魔月輪が空を切る!
「クッ!」
ファイはとっさに身を翻し、瞬速移動で二つほど俊敏に躱す。
ついで、ファイは正面から向かってくる七個の魔月輪に向かって動いた!
次の瞬間!
「炎殺拳(フレアフィスト)!」
向かってくる魔月輪、七個に向かって右手から弾丸のように撃ち落とそうと対空で十発程度、炎の弾球を叩き込んだ。
Dowooooooooooon!
爆音を立て、見事に全て命中した!
だが、撃ち落とす依然に、撃ち落とすどころか、唸りを上げて壊れることもなく、魔月輪は、空を切り、箆棒に勢いを上げて音を立ち上げ、向かってくる。
ファイは対空しようと動く!
エウリュアレはまた、ファイが飛んだ方に手をクイっと動かす。
すると、自由自在に空を切りながら、猛スピードでファイの方に向かい、猛追していく。
凄まじいスピードだ。
「くそっ、きりがねー!」
GUWOOOOOOON!
魔月輪は空を切り、追撃していく。
ファイは奥手の方に翔(と)び退り、縦横無尽に、空中旋回する。
エウリュアレはファイの動く方、動く方に手をクイっと動かし、誘導させて、執拗に魔月輪は猛スピードで後を追っていく。
「クケケ、残念だったな! そんなちゃちな炎では、俺様の魔装具(まそうぐ)は壊せネーぜ!」
エウリュアレは罵り、手で思うように動かし、飛ばさなかった大型魔月輪(デビルチャクラ)を一個だけ手元に戻した。
次の瞬間だった。
「ケケケ!」
何と手元に戻した魔月輪にエウリュアレの闘気(オーラ)が付加し、大型魔月輪に無尽に紅い闘気(オーラ)がまとわり付いた。
爆ぜ満ち溢れる!
追われているファイのところに助太刀しようと、瞬速移動でヒョウが割ってはいる。
「!」
「『氷魔風(アイス・ブリザード)!』」
瞬時にヒョウは氷が風になった魔風(ブリザード)を魔月輪、七個に向けて放った。
結果的に小型魔月輪、六個が瞬く間もなく凍りつき動きを一瞬、止めることに成功した。
「しまった! 一つ逃したかッ!」
見切り、ヒョウの脇を、大型魔月輪が突っ切る!
段々、距離を縮めていく。
「今更、遅いわぁぁぁぁ! ケゲェ、死ねやぁぁぁぁぁッ!」
エウリュアレは大きく肩を振り、その魔月輪に追われ旋回中、ファイの真っ向から大気が揺れるくらい素早く放った。
甚大にエネルギーが満ち溢れ散り急ぎ、猛スピードで向かっていく!
後ろからはヒョウが止められなかった大型魔月輪が一つ瞬足に後を追い、熾烈に追撃してくる!
前後、挟まれた!
挟撃だ! 一体どうする?
GYUIIIIIIIIIIIIIINN!
「クッ!」
魔剣を消した状態で、素手でファイはエウリュアレの闘気(オーラ)付きの魔月輪を受け止めた!熾烈に弾けぶつかる!
「グッ、ググゥッ!」
ファイは力み声を出し、力で無理に抑え付けようとするが、莫大なエネルギーに圧倒され、空中で後押しされ弾けて、反発力が伯仲し、抑え付けたまま、音を切り居合わせる!
後ろから瞬足にもう一つの大型魔月輪がファイに空を切り向かってくる。
距離がもうない!
このままでは身体を真っ二つに斬られるのは間違いなかった。
「ッ!(やべぇ)!」
ファイは切羽つまり、危険を察知し、後ろをチラリと一瞥した。
「炎闘気(イフリートラスタ)ッ!」
緊迫し危機感がはしる。
キュラがどうにかしようと、魔法剣レイジングライアに魔法力をかけ、振りかざそうとした。
橙色の魔闘気が出て、眉間にしわを寄せ制御する力が強まっていく。
その間にも間合いは一刻一刻と縮まっていく。
もう、躱す余地もない。
「ファイさーんぅぅッ!」
エリューがそれを瞻(み)、見兼ねて足を踏み出し、飛翔魔法で翔(と)び出そうとする!
「ええい、仕方ない、私が助ける!」
「行っちゃダメ!」
キュラが踏み込んだ瞬間にイーミ姫さまが必死にエリューの傍でその行動を止めようと腕をつかみ、血相を変えて止めにはいった。
Doooooooooooonn!
思いっきり弾けると思いきや?
ファイは自身の前からきていた闘気(オーラ)付きの刃を右手だけで受け止め、後ろからぶつかってきた大型魔月輪を後ろ側に左手を伸ばし、薄い刃(は)を挟んだ状態で横十字みたいな格好で水平に伸ばし、挟撃を難なく受け止め回避するのに成功した!
魔月輪の反発する力と制御するファイの力で腕がギシギシ奮え耐え拉(ひし)ぐ!
「うらぁぁあっぁぁぁぁッ!」
掛け声を上げ、ファイは瞬時に両腕を動かし、握っていた二つの魔月輪を身体の側面側で、同時にぶつけた!
DOOOOOOON!
エウリュアレの闘気(オーラ)の力、反動もあるのか、それは爆発し、見事に粉々に大型魔月輪は、二つとも、弾けて空中分解したように一瞬で砕け散った!
魔月輪の破片が燃えながら、散逸し下に落ちて行く!
「砕いただと?」
一瞬、動揺が生まれる。
瞬時に、それを悟ってか、看破し、エウリュアレは間髪を入れずに動いた!
「破動砲!」
投げ終わってすぐに充填(チャージ)していた獅子の牙を開かせて、真横で爆発展開中のファイのいた場所にフェイクで雪崩をうって撃ち放った!
強烈にスパークが散る!
「ッ!」
ファイは不敵な笑みを漏らし上手いこと、紙一重で躱し、瞬速移動で瞬時に消えた。
そして、エウリュアレの斜め前の真正面に宙を渡り飛び突如、凄まじき速さで現れた。
目をつむる隙もない!
「!」
「らいやぁぁっぁぁぁ!」
DOSUU!
空を切って、左手で魔闘気を付加した『炎拳(フレアナックル)』と思しき技、フックがエウリュアレの顔面に炸裂した!
「ぐはぁぁぁッ!」
エウリュアレは奇声じみた苦悶を吐き、殴られた箇所が燃えながら、真面に横手下の方にパンチの衝撃で吹っ飛んだ。
ファイは、間を於かずに魔闘気を紋章から噴出し、瞬時に空を蹴り、猛追する。
エウリュアレは勢いを削ろうと背中の羽で羽掻(はが)きする。
体勢を立て直そうとする。
だが遅い!
ファイが吹っ飛んだエウリュアレに空を切り風音を立て、追いついた。
身体が空中で横手で重なり、ファイは一瞬、ニヤリと薄ら笑いをした。
「フンッ!」
相手が羽で身体を起こそうとしたとき、ファイは雄叫びを上げ、エウリュアレの頭上から、横手に身体を一回転させて、空を回った右足で円を描き、回転蹴りを叩き込んだ!
真面にぶちあたり、言葉を濁す間もなく、地面に吹っ飛ぶ!
DOKAAAAAAAANN!
エウリュアレが地面と激突し、爆音を立てて、地面が割れ砕け、破片が飛び散り、砂塵が辺りに騒然と舞い散る。
「まだまだッ!」
ファイはエウリュアレをすっ飛ばした上空から炎(イフリート)の紋章を光らして、大きく身体を振り被り、右手に大きな橙色のエネルギーを瞬時に集束させ、バチバチ弾けさせた。
「くらえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇッ!」
間髪を入れずファイは、エネルギーを溜めた状態からあふれ弾け、肩を思いっきり振って、掛け声を上げて、橙色の膨大なエネルギー弾をエウリュアレに向けて叩き込んだ。
それは凄まじいスピードで空を切り地盤とぶつかる。
DOWOOOOOOOOOOOOONN!
見事に炸裂し、爆熱が舞い散り、爆(は)ぜる!
けたたましい音を立てて、エウリュアレを一呑みにし、物凄い爆発が生じた!
しばらく、爆発が続き収まりがつかなかった。
果たして、この相当な爆発でエウリュアレは生きているのか?
爆発が鳴り止むと炎や砂塵はまだ散っている物の、巨大な大型のクレーターがそこに出来上がっていた。
☆☆
第三十八話につづく。第三十八話、二章最終話。
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