魔双戦記アスガルドディーオ 神々の系譜

蒼井一

文字の大きさ
上 下
114 / 203
第二章 封印の書

第二十話 天使アスタルテ

しおりを挟む


ファイたちは、ベルフェゴールとの戦いの後、日が暮れ始めていたので、とりあえずエーコ村にエリューの記憶移動魔法で飛んできていた。
 エーコ村の魔法アイテム屋で一泊することになっていた。

 イーミ姫様が封印の書、天使アスタルテの書を片手にとって、古代魔法文字を読みだして言葉を述べた。
「昔、ソレイユの王立図書館で読んだコトがあるわ。封印の書って言うのは隠された、真実を映し出す、本当のコトを後世に伝えるために魔法を創り出した古の神様や天使なんかが、禁呪魔法を元に命を削って創り出したという古(いにしえ)の古文書らしいわ」

「きっと天使アスタルテが私達に伝えたいコトがあったのよ」
「…………」
しばし面子に沈黙がはしり、黙考する。
ファイが気がかりな表情をし、話を切り出した。

「……助けてって、いってた」
それを聞いた一同が驚いた表情を見せる。
「ベルフェゴールを倒した時、気を失っていて、そのとき、天使アスタルテが俺の精神世界、アストラルフォースに現れて、告げてくれた。天使アスタルテは『海中都市ビブロスが悪しき嵐に囚われの身です』っていってた。まだ記憶がはっきりしてる」

「海中都市ビブロス? 悪しき嵐?」
イーミ姫様が怪訝な表情でいい、そして、イーミ姫様は古代魔法文字が現れている封印の書のページをめくって疑念を深めて目で読んでいった。
「ファイ、他に何かいってなかった?」

「う~ん、たしかアスタルテは最後に『オーの国に行けば全てがわかります』っていってたと思う」
ファイは頭をかきながら、思い出していく。
「オーの国? 変ねぇ? オー王国にビブロスなんて都市あったかしら?」
イーミ姫様は疑った面持ちで言葉を返した。

「イーミ姫様、ここはフラム王国のエーコ村ですから、ここからだと、南西の方角です」
テアフレナは軽快に考察を述べた。
地理を恐らく熟知しているのは、宮神官として外交でいろんなところを訪れているためテアフレナが一番、知っているだろう。
「そう、行きましょう。天使アスタルテを助けにオー王国へ。みな、明日の明朝オー王国へ向かうわよ」
イーミ姫は率先した口調でいった。

「イーミ姫様、でもどうやって?」
ファイは魔法の知識がなく、どうやっていったらいいか、イーミ姫に尋ねた。
 イーミ姫様は嫌な顔ひとつせず、ニコリと微笑みながら、ファイに言った。
「以前にオーの国に外交でテアフレナと行ったコトがあるの。記憶移動魔法でなら、行った所を本人が覚えていればそこまでは、飛んで行けるわ」

「なるほど、じゃぁ、さっ……」
ファイが言いかけた時だった。怪訝な顔つきでテアフレナが言葉を紡いだ。
「しかし、姫様、そこに行くには、魔王アガスラーマが大地に呪縛を施した、あの死の境界線(デッドライン)を一つ通らないといけません」

「…………!」
ファイはためらい急に無口になって、際どい表情をした。
ファイもそれはなんとなくだが、わかっていた。
 この三大世界構造アスガルドに付された呪いの呪縛。
 誰しもが、危険を承知で通過しないといけないという恐ろしい結界だった。
 みな、言葉がでず、息をのんだ。ボンまで黙り込んだ。

「死の境界線(デッドライン)てあの呪いの?」
エリューも知っていたようで問いかけた。
 テアフレナがそのときしゃべりだした。
「私が説明するわ。死の境界線(デッドライン)っていうのは魔王アガスラーマがこの大陸に魔法陣と同じ六芒星の布陣で張り巡らした魔の結界線、そこを通ると必ず怪物(モンスター)が出るといわれている、死の境界線よ。あまたの人がこの境界線で死んでるわ」
「……ふ~ん、そうなんですか……」
エリューは首をかしげながら返答した。

ファイもじっと黙り込んだままだった。敵が出る、そう予測はできていた。
デッドラインを突破するのは命がけになる。誰しもそれは想っていた。

「……魔王が張り巡らした、魔の結界線を通る以上、必ず敵は出る」
ファイは敵が出る事を懸念し、重苦しい声で声音をあげた。
「だけど、そんなこといっていられないわ。助けを求められている以上、見逃せないわ。天使アスタルテを助けに行くわよ」
そういいながら、天使アスタルテの書をイーミ姫さまは懐にしまった。
「ですが、姫様、せっかく助かりましたのに国には帰らず、王様やお妃さまにはなんといえばいいか」
 アザレが言い寄った。
「魔法電話で私が直接、お父様に伝えるわ。私、天使アスタルテの願いを見捨てることなんてできないから。政務はお父様たちと、大臣に任せるわ。あなたたち、私についてきてくれる? 救出したいの」
「喜んでついていきます、姫様」
「自分もです」「俺も」「おいどんも」
「私もいきます」
「エリュー来てくれるのか」
 ファイが躊躇った表情でエリューにいった。
「はい、もちろんです。ともに戦った仲間じゃないですか。姫様とこうして出会えたのも何かの縁でしょうし」
 エリューのその言葉をきくと、ファイは頷いた。オネイロスが最後に首を縦にふった。

 誰もいいえとは一言も言わなかった。全員、満場一致だった。イーミ姫の信望の厚さを感じる。 

そうこうして、エリューの魔法アイテム屋で一行は一夜を明かした。






☆☆
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

処理中です...