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第九章 神玉の冒涜
閑話回想10 憧れと夢の狭間
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☆☆
あれから、ヒョウたちは馬車を飛ばし、近郊にあるラーバンクルの祠にきていた。
シエラ様がちょうど祠の中に入り、結界が敷かれてあるような場所の中に入ろうとしていた。
「あなたたちは、ここで待ってて、神聖で、祠の奥には武装している人は入れないの」
「は、わかりました」
クエスが頷いた、その時だった。
急に、霧のようなものが立ち込めてきた。
シエラ様はもう建物の中に入っている。その場には警護のもの三人しかいなかった。
みな、その霧を受け、容態が変わってきていた。
☆☆
ヒョウが斬り靄の世界にうつ伏せで倒れこんでいた。
そして、気が付いた。
「なんだ、ここは、確か俺は、ラーバンクルの祠にいたはず」
ヒョウは辺りを見回した。切り靄以外、何もない世界だった。
明らかにおかしいのは、ヒョウにも判った。だが、ちゃんと体と意識もある。
「ガスも、クエスもいない、一体ここはどこだ?」
ヒョウが言ったそのときだった。
「ヒョウ、私よ、シエラよ。あなたとこうして、二人で話がしたかったの」
「シエラ様?」
シエラ様がどこからか、やってきて、ヒョウに笑顔で手を差し伸べた。
ヒョウは戸惑っていた。
シエラは続けざまにヒョウにいった。
「私ね、お父様が不治の病で死ぬのじゃないかって、ずっと心配だったの」
「それで、祠に魔法をかけに行くのは知っています」
「あなたとこうして、ずっといることができたら、私は幸せだわ」
シエラはヒョウに近づいて手を握った。
ヒョウはためらった。
「シエラ様、どうしたのですか、貴方は俺なんかに幸せなんていわないはず」
「いいえ、同じ人間よ、身分は違えど、恋愛に身分は関係ないわ」
「ねぇ、あの大きな木の下まで一緒に走っていきましょ」
シエラはヒョウの手を引っ張りそのまま木のある方へ走り出した。
「ちょっと待ってくれ(あんなところに木が? さっきはなかったはず。それにシエラ様が俺の手を引っ張るなんて? おかしい)」
シエラたちはあっという間に走って大きな樹の下についた。
「ねぇ、ヒョウ、こんな、世界樹みたいな、おっきな木の下でちぎり交わせたらよくない?」
シエラはそういい、ヒョウにニコリと笑みを見せた。
「ねぇ、目を瞑っていて」
ヒョウに命令するようにシエラは言った。
そのときだった。
「(おかしい)」
「しねぇ、魔剣士!」
なんと、シエラの姿が豹変し、魔物に姿を変えた。
ヒョウは魔物の首を切ろうとした斬撃を上手く紙一重でかわし、後ろに飛び退いた。
「やはり、魔物か。お前は夢魔だな!」
魔物は悔しそうな顔をする。
「くそ、シエラに上手く化けて、殺してやろうと思っていたのに、勘のいい奴だ」
「幻影? もしや、ガスとクエスも」
「ふはは、二人は睡眠魔法で眠ってもらった。今はシエラの警護はいない。お前だけだというわけだ。現世に帰ることができればな、クハハ」
「やろう、薄気味悪い声出しやがって。一つお前には誤算があるぞ。ラーバンクルの祠は神聖で結界が張られている。そう簡単に侵入することはできない」
だが、魔物はヒョウの言葉を聞いても、動じずニヤリと不敵な笑みをみせた。
「この精神世界、アストラルフォースで、お前を乗っ取り、シエラを殺すというわけだ。この世界からは我を倒さない限り出ることはできん」
魔物は目を光らせ、舌を啜り、牙をうならせた。
ヒョウは表情を一つも変えなかった。
「フン、いい度胸だ」
「乗っ取るなら乗っ取ってみろよ、そう簡単にはいかないぜ」
そして、首を掻っ切るジェスチャーをした。
ヒョウの挑発にも魔物は嘆息一つつかなかった。
「この夢魔ディーパスラ様が直々にお前に手を下そうというのだ」
その瞬間!
「なんだ、この甘い匂いは?」
「フハハ、かかったな、我の睡眠魔法に。その匂いを嗅げば、眠気から逃れることはできん」
辺り一面にディーパスラの魔法と思しき斬り靄が立ち込めた。
「く、意識がうつろう、朦朧とする」
「魔剣士と言えど、キャパシティは人間。ちょろいものよ」
いうと同時にディーパスラはヒョウに向かって地をけたたましく蹴った。
「もらったぁ」
「木魔弦弓(スリープアロー)」
bababa!
木に弦が巻き付いたようなオーラが立ち込めてる弓矢が無数にヒョウに放たれた。
その何発かが意識が朦朧としているヒョウにクリーンヒットした。
当たったところからは血が吹き飛んだ。
更にディーパスラはヒョウの首を掻っ切ろうと手刀で上から薙いだ!
「終わりだ、魔剣士!」
首を上から掻っ切ろうとしたその瞬間だった。
「ぐはぁ、なぜだ、スリープアローを喰らい、睡眠魔法までかかっているはずのお前が動けるなんて?」
なんと、意識が朦朧としていたはずのヒョウが動き、ディーパスラを魔剣で下から串刺しにしていた。胴体、胸の部分を貫通していた。致命傷だ。
ヒョウはニヤリと笑った。
「フン、生憎だったな。俺はそんなにヤワじゃない」
「ディーパスラ、不眠永遠の眠りにつけ」
「アイスブリザード!」
「ぐあぁあ」
それがディーパスラの最期の断末魔となっていた。
冷たい冷気の吹雪が吹き、ディーパスラを見事に氷漬けの標本にしていた。
ヒョウが死ぬ以外解除方法はない。永久に精神世界で眠りにつく。
「この精神世界で一生氷漬けで寝てろ」
そのとき、左手の奥の方から光りが差し込んできた。
「ん、光り? あそこが出口というわけか。シエラ様が心配だ」
ヒョウは手傷を負っていたが、力を振り絞って、光の差す方へ向かった。
☆☆
11/30更新予定。感想おまちしてます。キャラ物語などきにいってもらえたら、お気に入りお願いします。
あれから、ヒョウたちは馬車を飛ばし、近郊にあるラーバンクルの祠にきていた。
シエラ様がちょうど祠の中に入り、結界が敷かれてあるような場所の中に入ろうとしていた。
「あなたたちは、ここで待ってて、神聖で、祠の奥には武装している人は入れないの」
「は、わかりました」
クエスが頷いた、その時だった。
急に、霧のようなものが立ち込めてきた。
シエラ様はもう建物の中に入っている。その場には警護のもの三人しかいなかった。
みな、その霧を受け、容態が変わってきていた。
☆☆
ヒョウが斬り靄の世界にうつ伏せで倒れこんでいた。
そして、気が付いた。
「なんだ、ここは、確か俺は、ラーバンクルの祠にいたはず」
ヒョウは辺りを見回した。切り靄以外、何もない世界だった。
明らかにおかしいのは、ヒョウにも判った。だが、ちゃんと体と意識もある。
「ガスも、クエスもいない、一体ここはどこだ?」
ヒョウが言ったそのときだった。
「ヒョウ、私よ、シエラよ。あなたとこうして、二人で話がしたかったの」
「シエラ様?」
シエラ様がどこからか、やってきて、ヒョウに笑顔で手を差し伸べた。
ヒョウは戸惑っていた。
シエラは続けざまにヒョウにいった。
「私ね、お父様が不治の病で死ぬのじゃないかって、ずっと心配だったの」
「それで、祠に魔法をかけに行くのは知っています」
「あなたとこうして、ずっといることができたら、私は幸せだわ」
シエラはヒョウに近づいて手を握った。
ヒョウはためらった。
「シエラ様、どうしたのですか、貴方は俺なんかに幸せなんていわないはず」
「いいえ、同じ人間よ、身分は違えど、恋愛に身分は関係ないわ」
「ねぇ、あの大きな木の下まで一緒に走っていきましょ」
シエラはヒョウの手を引っ張りそのまま木のある方へ走り出した。
「ちょっと待ってくれ(あんなところに木が? さっきはなかったはず。それにシエラ様が俺の手を引っ張るなんて? おかしい)」
シエラたちはあっという間に走って大きな樹の下についた。
「ねぇ、ヒョウ、こんな、世界樹みたいな、おっきな木の下でちぎり交わせたらよくない?」
シエラはそういい、ヒョウにニコリと笑みを見せた。
「ねぇ、目を瞑っていて」
ヒョウに命令するようにシエラは言った。
そのときだった。
「(おかしい)」
「しねぇ、魔剣士!」
なんと、シエラの姿が豹変し、魔物に姿を変えた。
ヒョウは魔物の首を切ろうとした斬撃を上手く紙一重でかわし、後ろに飛び退いた。
「やはり、魔物か。お前は夢魔だな!」
魔物は悔しそうな顔をする。
「くそ、シエラに上手く化けて、殺してやろうと思っていたのに、勘のいい奴だ」
「幻影? もしや、ガスとクエスも」
「ふはは、二人は睡眠魔法で眠ってもらった。今はシエラの警護はいない。お前だけだというわけだ。現世に帰ることができればな、クハハ」
「やろう、薄気味悪い声出しやがって。一つお前には誤算があるぞ。ラーバンクルの祠は神聖で結界が張られている。そう簡単に侵入することはできない」
だが、魔物はヒョウの言葉を聞いても、動じずニヤリと不敵な笑みをみせた。
「この精神世界、アストラルフォースで、お前を乗っ取り、シエラを殺すというわけだ。この世界からは我を倒さない限り出ることはできん」
魔物は目を光らせ、舌を啜り、牙をうならせた。
ヒョウは表情を一つも変えなかった。
「フン、いい度胸だ」
「乗っ取るなら乗っ取ってみろよ、そう簡単にはいかないぜ」
そして、首を掻っ切るジェスチャーをした。
ヒョウの挑発にも魔物は嘆息一つつかなかった。
「この夢魔ディーパスラ様が直々にお前に手を下そうというのだ」
その瞬間!
「なんだ、この甘い匂いは?」
「フハハ、かかったな、我の睡眠魔法に。その匂いを嗅げば、眠気から逃れることはできん」
辺り一面にディーパスラの魔法と思しき斬り靄が立ち込めた。
「く、意識がうつろう、朦朧とする」
「魔剣士と言えど、キャパシティは人間。ちょろいものよ」
いうと同時にディーパスラはヒョウに向かって地をけたたましく蹴った。
「もらったぁ」
「木魔弦弓(スリープアロー)」
bababa!
木に弦が巻き付いたようなオーラが立ち込めてる弓矢が無数にヒョウに放たれた。
その何発かが意識が朦朧としているヒョウにクリーンヒットした。
当たったところからは血が吹き飛んだ。
更にディーパスラはヒョウの首を掻っ切ろうと手刀で上から薙いだ!
「終わりだ、魔剣士!」
首を上から掻っ切ろうとしたその瞬間だった。
「ぐはぁ、なぜだ、スリープアローを喰らい、睡眠魔法までかかっているはずのお前が動けるなんて?」
なんと、意識が朦朧としていたはずのヒョウが動き、ディーパスラを魔剣で下から串刺しにしていた。胴体、胸の部分を貫通していた。致命傷だ。
ヒョウはニヤリと笑った。
「フン、生憎だったな。俺はそんなにヤワじゃない」
「ディーパスラ、不眠永遠の眠りにつけ」
「アイスブリザード!」
「ぐあぁあ」
それがディーパスラの最期の断末魔となっていた。
冷たい冷気の吹雪が吹き、ディーパスラを見事に氷漬けの標本にしていた。
ヒョウが死ぬ以外解除方法はない。永久に精神世界で眠りにつく。
「この精神世界で一生氷漬けで寝てろ」
そのとき、左手の奥の方から光りが差し込んできた。
「ん、光り? あそこが出口というわけか。シエラ様が心配だ」
ヒョウは手傷を負っていたが、力を振り絞って、光の差す方へ向かった。
☆☆
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