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第五十六話 セントヘレナ島でも死なない? 死期がかわった? 意外なスザンヌの証言

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集中治療室から、ナポレオンが外に運ばれてきた。


どうやら、違う病室に移されるようだ。容態は安静みたいだ。


病室に運ばれて、楓たちは隣に椅子を構え座っていた。


その時だった。ナポレオンの表情が変わり、目が見開いた。


「うう……」


「あ、ナポレオン、気がついたの?」


 楓が心配そうな顔で言う。香織も同じ気持ちで目線をやっていた。


 自分に非があると責めていたからだ。


「ここはどこだ?」


「病院だよ」


「布団? 俺は病院にいるのか?」


 ナポレオンは顔を横に向け、手で布団を引っ張った。


 病室は光りが射し込んできて明るかった。


「そうだよ、ナポレオン、急に公園で倒れたんだよ。びっくりしたよ。心配でさ」


「ナポレオン、ごめんなさい。あたしがあんなことしなければ」


 香織は目を潤ませ、指で拭った。友達がこんなになれば辛いのは当たり前だろう。


「香織、泣くことなんてない。お前の責任じゃない。俺がいけないんだ」


 そういい、ナポレオンはポンポンと合図するように香織の手を叩いた。


 だが終始、香織は辛そうだった。


「倒れたのか。どうやら、俺の持病に気がついただろう、お前なら」


「もしかしてなんだけど、ナポレオン、心臓病なんでしょ?」


「そうだ。小さい頃からそうだったんだ。急に発作が起こったりして、倒れたりすることがあるんだ」


 ナポレオンは口を閉ざした。


「俺の時代の医者には治らないといわれた」


 一瞬、ナポレオンの言葉に部屋の雰囲気が変わった。ナポレオンは暗いムードの中、俯いてる香織を気遣い言葉を紡いだ。


「はは、香織、気負うことはない。これは昔からの俺の持病がさせたことだ。お前は何も悪くない。昔から激しい運
動をすると、心臓がせこくなって、こうなることがある」


 その時だった。病室のドア手から、スザンヌが心配そうな顔で入ってきた。


「スザンヌさん、起きたんですね。疲れ取れましたか? ナポレオン意識回復しましたよ」


「少し寝たから、疲れは大丈夫よ。話は少し聞こえたわ。変ねぇ、わたくしが、付き合っていた、ナポレオンは持病なんて持っていなかったわ」


「えっ、どういうことそれは? じゃぁ、未来のナポレオンは病気が治っていたっていうこと?」


「まぁ、そういうことになるでしょうね」


「未来の俺は、心臓病が治っていたのか?」


 スザンヌの言葉に皆、顔を見合わせた。ナポレオンも面食らっていた。


「(もしかして、ほんとに歴史が変わったんじゃ。セントヘレナ島でも、死なないってことなのか? 死期が変わったりしてるんじゃ)」


 楓の直感は当たっていたかもしれない。現に違う病気を持ったナポレオンがいたのだから。


 誰しも可笑しいと想っていた。
























☆☆

また更新します。
何回も見てくださっている読者さまには感謝です。
ほんとにありがとうごうざいます。
読み物としてがんばっていくのでよければブックマークなどしていただけるとうれしいです。
またおあいしましょう。
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