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第二十五章 終わりの、終わり
11 天王台四丁目にあるマンション。三階通路の、「令堂」
しおりを挟む天王台四丁目にあるマンション。
三階通路の、「令堂」と表札の出ている、玄関前である。
「いませんかー」
緑と黄色、宅配業の制服を着た青年が、小脇に荷物を抱えている。
呼び鈴のスイッチを押し、やや大きな声で呼ぶ。を、二度ばかり繰り返すと、小さくため息を吐いた。
すぐ背後のカートには、幾つかの段ボール。
オートロックの構内に入った上で、順番に回っているのだろう。
「日時指定されていたのになあ」
青年は小声で愚痴をこぼしながら、なんとはなしにドアのレバーハンドルへと指を掛けた。
施錠されているであろうドアを、まさか本気で開けようとしたわけではないのだろう。
が、つい指に力が入ってしまったようで、しかも物騒にも施錠されていなかったようで、がちゃり音を立て扉が僅か開いてしまう。
と、隙間からなにか、隼さながらの猛烈な速度で飛び出して、
「うわっ!」
宅配の青年は、のけぞりながら驚きの声を上げた。
猫、であろうか。
二匹だ。
全身ほぼ白いのと、全身ほぼ黒いのが、通路をもの凄い速度で駆け抜けて、あっという間に姿を消してしまった。
「やば……」
宅配の青年は、困った顔で帽子を取って頭を掻いた。
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