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第十二章 真紅の魔道着
02 なんだろうか、この気味の悪い武器は。アサキは驚き不
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なんだろうか、この気味の悪い武器は。
アサキは驚き不安になりつつも、冷静にかわし、冷静に観察をしていた。
目の前にいる、銀と黒の魔法使い、嘉嶋祥子が右手に持っているのは、柄の無い、刃だけの巨大な斧である。
最初は、壊れているのをそのまま使っているのかと思っていたが、どうやら、これが完成形のようだ。
刃と反対側、峰の近くに拳大の穴が二つ空いている。
そこを持ち手として、縦横斜めに振り回したかと思えば、その穴を軸にくるり回転させたりして、まったく先の読めない攻撃を、銀黒の魔法使いは繰り出し続け、アサキはそれをかわし続けていた。
冷静に観察、といっても、現在のところこの攻防に観察は役立ってはおらず、ただ防ぐだけで精一杯だった。
アサキの手にする剣の方が、間合いが広いから、生かしてなるべく空振りを誘うようにしているが、その空振りすらも、それが次の攻撃に繋がっており、攻め込む隙がまるでない。
たまに受け流せずに、ガチンとまともに受け止めてしまうと、剣を握った指や腕を伝って、身体全体を削られているような衝撃に襲われる。
「二度目だよね。キミとこうして戦うのは」
刃を競り合わせながら、お互いの顔が接近したタイミングで、嘉嶋祥子は、さらに首を伸ばして、アサキの耳元へと囁いた。
彼女のいう通りだ。
以前にも、刃を交えたことがある。
だから、この不気味な形状の斧を見るのも初めてではない。
とはいえ、前回は、しっかりとやり合ったわけではない。
なにもせずとも倒れそうな疲労困憊気味の応芽に、自分が加勢をしたのであるが、加勢した途端に、嘉嶋祥子はとっとと立ち去ってしまったからである。
まともに向き合うと、この巨大な戦斧は、こうも不気味で恐ろしい武器であるのか。
それとも、この嘉嶋祥子という魔法使いが特別ということなのか。
おそらく、どちらもなのだろう。
以前に、三節棍という、折れ曲がる棍棒を持つ魔法使いと戦ったことがあるが、恐ろしさその比ではなかった。
武器も、魔法使い本人も。
現在、データ計測中の練習試合という建前ではあるが、油断などしていたら、大怪我を負わされても不思議はない。
この銀黒の魔法使いが、なにを目論んで自分へ接近してきたか、それがまったく分からないのだから、警戒するに越したことはない。
至近距離で刃を押し合いながら、顔を近寄せていた銀黒の魔法使いは、悪戯な表情で、次の言葉を囁いた。
「ぼくとウメが戦ったことも、ここでいうかい? どうせウメのことだから、口外しないよういわれてるんだろう? ただの喧嘩やねん、とかなんとかさあ」
その通りである。
ここで嘘を吐いても意味はないと思い、アサキは小さく頷いた。
どう見ても、あれは殺し合いだった。でも、ただの喧嘩だから黙っていてくれ、などといわれ、信じるしかなかったのだ。
なお、嘉嶋祥子と慶賀応芽の、そのような諍いについて、アサキが知っているのはその一回だけである。
つい先日にもまた、第三中の校長室で、二人は殴り合いをしているわけだが、そのことについては知らない。
「キミさ、ザーヴェラーをたった一人で倒したという話じゃないか」
斧を振るい、打ち合いながら、銀黒の魔法使い、祥子は楽しげな口調で質問をする。
反対に、アサキが少しムッとした顔になった。
また出るのか、その話。
もういい加減にして欲しいんだけど。
一体、この女性は、なにを考えているのだろうか。
と、鍔迫り合いの中、ちらり祥子の顔へと視線を向けるが、涼やかにも小バカにしたようにも見える薄い笑みを浮かべてるのみで、結局、なにを考えているのか、まったく分からなかった。
「それが、どうかしましたか」
だから、あえてその言葉に少しだけ乗った。
気持ちのよいものではなかったけれど。
これまで、褒められると迷惑に思いながらも照れた反応をしてしまっていたのに、なぜこの女性に対して自分は、こんな敵対的な態度、言葉を吐いてしまうのだろう。
謎めかした態度のせい?
ウメちゃんの知り合いのくせに、スタンスを明らかにせず、からかうようにこちらへ接してくるところ?
わたしが以前、二人が戦っていたのを見たから?
どれも正解な気がする。
「そうか。ザーヴェラーとの戦いの後だったから、ウメはあんな死にそうに弱っていたんだったね」
「お腹が裂けて、出血も酷かったのを、治療したばかりでしたから。……どうして、あなたたち二人は戦っていたんですか? どうして、あなたは、そんな状態のウメちゃんを攻撃していたんですか?」
ことと次第によっては……などと、物騒なことを考えたわけではない。
鍔迫り合いに押し負けて、後ろにちょっとよろけてしまい、距離が開いたので、なんとなく尋ねてみただけである。
望む回答どころか、なんの回答も得られなかったが。
質問などなかったかのように、嘉嶋祥子は、自分の言葉を続けたのである。
「そんな、束になっても勝てるかどうかの強敵であるザーヴェラーを、キミはたった一人で倒してしまった。今年からなんだよね、魔導着を着たのは。……さっきのグラフを見ても、気持ちが悪いくらいにぐんぐん実力が向上しているね」
嘉嶋祥子は、ふふんと鼻で笑った。
「頑張って、成長して、それがいけませんか」
肉体的な強さなど、さして求めてもいないくせに、なにをいっているのだろう、わたしは。
と、自分の言葉に矛盾を感じなくもなかったが、それはそれこれはこれだ。
このような態度を取られたら、誰だってムキになるに決まっている。
また、お互いに飛び込み、打ち合いが再開された。
「いやいや、全然。結構じゃないかな」
またもや、嘉嶋祥子の、人を小馬鹿にした仕草と表情。
剣と斧による二人の打ち合いが、だんだんと過熱していた。
まともに攻撃を受けたら、手足が吹っ飛んでもおかしくないくらいに、激しいものになっていた。
理由のほとんどは、アサキにあった。
アサキが一人でムキになり、感情を武器に乗せて叩き付けているのだ。
踏み込み、振り上げ、振り下ろし、受け、弾く、アサキの動作ことごとくが荒々しいものになっているのだ。
銀黒の魔法使い、彼女の取る態度言動に、なんだか存在をバカにされているような気がして。
自分だけなら別に気にもしないが、ウメちゃんのことまでバカにされている気がして。
だがそれは、
この、嘉嶋祥子という女性の態度への苛立ちは、
もしかしたら、すべて、思い違いによるものだったのかも知れない。
ムキになり過ぎるあまり、頭が真っ白になった瞬間、そのタイミングを待っていたかのように突然、どどっとイメージが流れ込んできたのである。
意識が、アサキの脳内に。
最初は漠然とした、感情の方向性、のようなものだった。ごっちゃごっちゃで、方向もなにもないのだが。
続いては、感覚。五感のどれにも例えようがなく、その感覚をどう捉えていいのか混乱しているうち、今度は映像に近いものが脳に流れてきた。
校長室。
見慣れた、天王台第三中学校の風景。
でも、映像ではない。
五感のどれにも当てはまらない、感覚のない感覚。
その感覚の示すものが、次々と矢のように頭に突き刺さる。
言葉にするなら、データ。
言葉にするなら、異空。
言葉にするなら、ヴァイスタ。
言葉にするなら、ザーヴェラー。
言葉にするなら、リヒト。
そして、メンシュヴェルト。
慶賀応芽。
彼女とまったく同じ顔をした少女。
妹。
慶賀雲音。
大阪。
病院。
闇。
闇。
魂。
砕。
滅。
魔法。
魔術。
呪い。
宇宙。
銀河。
神。
悪魔。
「いま、読んだよね?」
「え?」
アサキは、はっとした表情で、目を見開き、そしてしばしばと瞬いた。
眼前で、嘉嶋祥子が優しく微笑んでいる。
柄のない不気味な斧を、右手にだらり下げながら。
今のは……
わたしに、見せてきた?
わたしに、送ってきた?
なにかの、魔法?
読んだ、といっていたということは、この人の思念?
どうして、こんなものをわたしに送る……
見えたとも、聞いたとも、触れたとも違う、純然なる思考と呼ぶべきか、それともなにかしらの感覚であったのか。
とにかく強烈に感じたのは……
慶賀応芽への思い。
彼女を、助けてあげてほしい。
と、いってるような気がした。
どういうこと?
この人は、ウメちゃんの敵、ではないの?
アサキは、目の前で刃を競り合わせている嘉嶋祥子の顔に、ちらり、あらためて視線を向けた。
小馬鹿にしているとしか思えない笑みを、ずっと浮かべている祥子であるが、視線に気が付くと、ことさらに笑みを深めて、そして、
「うわあ、負けたあ!」
叫びながら、痛そうな悔しそうなのヤラレタ顔で、後ろへと吹っ飛んだのである。
アサキは驚き不安になりつつも、冷静にかわし、冷静に観察をしていた。
目の前にいる、銀と黒の魔法使い、嘉嶋祥子が右手に持っているのは、柄の無い、刃だけの巨大な斧である。
最初は、壊れているのをそのまま使っているのかと思っていたが、どうやら、これが完成形のようだ。
刃と反対側、峰の近くに拳大の穴が二つ空いている。
そこを持ち手として、縦横斜めに振り回したかと思えば、その穴を軸にくるり回転させたりして、まったく先の読めない攻撃を、銀黒の魔法使いは繰り出し続け、アサキはそれをかわし続けていた。
冷静に観察、といっても、現在のところこの攻防に観察は役立ってはおらず、ただ防ぐだけで精一杯だった。
アサキの手にする剣の方が、間合いが広いから、生かしてなるべく空振りを誘うようにしているが、その空振りすらも、それが次の攻撃に繋がっており、攻め込む隙がまるでない。
たまに受け流せずに、ガチンとまともに受け止めてしまうと、剣を握った指や腕を伝って、身体全体を削られているような衝撃に襲われる。
「二度目だよね。キミとこうして戦うのは」
刃を競り合わせながら、お互いの顔が接近したタイミングで、嘉嶋祥子は、さらに首を伸ばして、アサキの耳元へと囁いた。
彼女のいう通りだ。
以前にも、刃を交えたことがある。
だから、この不気味な形状の斧を見るのも初めてではない。
とはいえ、前回は、しっかりとやり合ったわけではない。
なにもせずとも倒れそうな疲労困憊気味の応芽に、自分が加勢をしたのであるが、加勢した途端に、嘉嶋祥子はとっとと立ち去ってしまったからである。
まともに向き合うと、この巨大な戦斧は、こうも不気味で恐ろしい武器であるのか。
それとも、この嘉嶋祥子という魔法使いが特別ということなのか。
おそらく、どちらもなのだろう。
以前に、三節棍という、折れ曲がる棍棒を持つ魔法使いと戦ったことがあるが、恐ろしさその比ではなかった。
武器も、魔法使い本人も。
現在、データ計測中の練習試合という建前ではあるが、油断などしていたら、大怪我を負わされても不思議はない。
この銀黒の魔法使いが、なにを目論んで自分へ接近してきたか、それがまったく分からないのだから、警戒するに越したことはない。
至近距離で刃を押し合いながら、顔を近寄せていた銀黒の魔法使いは、悪戯な表情で、次の言葉を囁いた。
「ぼくとウメが戦ったことも、ここでいうかい? どうせウメのことだから、口外しないよういわれてるんだろう? ただの喧嘩やねん、とかなんとかさあ」
その通りである。
ここで嘘を吐いても意味はないと思い、アサキは小さく頷いた。
どう見ても、あれは殺し合いだった。でも、ただの喧嘩だから黙っていてくれ、などといわれ、信じるしかなかったのだ。
なお、嘉嶋祥子と慶賀応芽の、そのような諍いについて、アサキが知っているのはその一回だけである。
つい先日にもまた、第三中の校長室で、二人は殴り合いをしているわけだが、そのことについては知らない。
「キミさ、ザーヴェラーをたった一人で倒したという話じゃないか」
斧を振るい、打ち合いながら、銀黒の魔法使い、祥子は楽しげな口調で質問をする。
反対に、アサキが少しムッとした顔になった。
また出るのか、その話。
もういい加減にして欲しいんだけど。
一体、この女性は、なにを考えているのだろうか。
と、鍔迫り合いの中、ちらり祥子の顔へと視線を向けるが、涼やかにも小バカにしたようにも見える薄い笑みを浮かべてるのみで、結局、なにを考えているのか、まったく分からなかった。
「それが、どうかしましたか」
だから、あえてその言葉に少しだけ乗った。
気持ちのよいものではなかったけれど。
これまで、褒められると迷惑に思いながらも照れた反応をしてしまっていたのに、なぜこの女性に対して自分は、こんな敵対的な態度、言葉を吐いてしまうのだろう。
謎めかした態度のせい?
ウメちゃんの知り合いのくせに、スタンスを明らかにせず、からかうようにこちらへ接してくるところ?
わたしが以前、二人が戦っていたのを見たから?
どれも正解な気がする。
「そうか。ザーヴェラーとの戦いの後だったから、ウメはあんな死にそうに弱っていたんだったね」
「お腹が裂けて、出血も酷かったのを、治療したばかりでしたから。……どうして、あなたたち二人は戦っていたんですか? どうして、あなたは、そんな状態のウメちゃんを攻撃していたんですか?」
ことと次第によっては……などと、物騒なことを考えたわけではない。
鍔迫り合いに押し負けて、後ろにちょっとよろけてしまい、距離が開いたので、なんとなく尋ねてみただけである。
望む回答どころか、なんの回答も得られなかったが。
質問などなかったかのように、嘉嶋祥子は、自分の言葉を続けたのである。
「そんな、束になっても勝てるかどうかの強敵であるザーヴェラーを、キミはたった一人で倒してしまった。今年からなんだよね、魔導着を着たのは。……さっきのグラフを見ても、気持ちが悪いくらいにぐんぐん実力が向上しているね」
嘉嶋祥子は、ふふんと鼻で笑った。
「頑張って、成長して、それがいけませんか」
肉体的な強さなど、さして求めてもいないくせに、なにをいっているのだろう、わたしは。
と、自分の言葉に矛盾を感じなくもなかったが、それはそれこれはこれだ。
このような態度を取られたら、誰だってムキになるに決まっている。
また、お互いに飛び込み、打ち合いが再開された。
「いやいや、全然。結構じゃないかな」
またもや、嘉嶋祥子の、人を小馬鹿にした仕草と表情。
剣と斧による二人の打ち合いが、だんだんと過熱していた。
まともに攻撃を受けたら、手足が吹っ飛んでもおかしくないくらいに、激しいものになっていた。
理由のほとんどは、アサキにあった。
アサキが一人でムキになり、感情を武器に乗せて叩き付けているのだ。
踏み込み、振り上げ、振り下ろし、受け、弾く、アサキの動作ことごとくが荒々しいものになっているのだ。
銀黒の魔法使い、彼女の取る態度言動に、なんだか存在をバカにされているような気がして。
自分だけなら別に気にもしないが、ウメちゃんのことまでバカにされている気がして。
だがそれは、
この、嘉嶋祥子という女性の態度への苛立ちは、
もしかしたら、すべて、思い違いによるものだったのかも知れない。
ムキになり過ぎるあまり、頭が真っ白になった瞬間、そのタイミングを待っていたかのように突然、どどっとイメージが流れ込んできたのである。
意識が、アサキの脳内に。
最初は漠然とした、感情の方向性、のようなものだった。ごっちゃごっちゃで、方向もなにもないのだが。
続いては、感覚。五感のどれにも例えようがなく、その感覚をどう捉えていいのか混乱しているうち、今度は映像に近いものが脳に流れてきた。
校長室。
見慣れた、天王台第三中学校の風景。
でも、映像ではない。
五感のどれにも当てはまらない、感覚のない感覚。
その感覚の示すものが、次々と矢のように頭に突き刺さる。
言葉にするなら、データ。
言葉にするなら、異空。
言葉にするなら、ヴァイスタ。
言葉にするなら、ザーヴェラー。
言葉にするなら、リヒト。
そして、メンシュヴェルト。
慶賀応芽。
彼女とまったく同じ顔をした少女。
妹。
慶賀雲音。
大阪。
病院。
闇。
闇。
魂。
砕。
滅。
魔法。
魔術。
呪い。
宇宙。
銀河。
神。
悪魔。
「いま、読んだよね?」
「え?」
アサキは、はっとした表情で、目を見開き、そしてしばしばと瞬いた。
眼前で、嘉嶋祥子が優しく微笑んでいる。
柄のない不気味な斧を、右手にだらり下げながら。
今のは……
わたしに、見せてきた?
わたしに、送ってきた?
なにかの、魔法?
読んだ、といっていたということは、この人の思念?
どうして、こんなものをわたしに送る……
見えたとも、聞いたとも、触れたとも違う、純然なる思考と呼ぶべきか、それともなにかしらの感覚であったのか。
とにかく強烈に感じたのは……
慶賀応芽への思い。
彼女を、助けてあげてほしい。
と、いってるような気がした。
どういうこと?
この人は、ウメちゃんの敵、ではないの?
アサキは、目の前で刃を競り合わせている嘉嶋祥子の顔に、ちらり、あらためて視線を向けた。
小馬鹿にしているとしか思えない笑みを、ずっと浮かべている祥子であるが、視線に気が付くと、ことさらに笑みを深めて、そして、
「うわあ、負けたあ!」
叫びながら、痛そうな悔しそうなのヤラレタ顔で、後ろへと吹っ飛んだのである。
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