魔法使い×あさき☆彡

かつたけい

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第一章 令和の魔法使い

08 両腕に顎を乗せて夜景を見ながら、緩やかに流れる空気の

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 両腕に顎を乗せて夜景を見ながら、緩やかに流れる空気の流れを身体に感じている。

 八階建てマンションの、三階ベランダだ。
 三階ではあるが、周囲ほとんどが一軒家であることと、天王台地区が高台であることから、なかなかに夜景が綺麗なのである。

 だけど、まだそれが気に入るかは分からない。
 引っ越してきたこの町でや、転校してきた学校で、どういった生活を送ることになるのか。それにより、この夜景が綺麗に思えるかどうか、大きく変わってくるのだろう。

 などと思うものの、おそらくは綺麗な景色になること、疑っていない。

 だって……

 りようどうさきは微笑を浮かべた。
 今日の、学校でのことを思い出していたのだ。
 さっそく友達になれた、四人のことを。

 あきらはる
 その名の通り明るくて、面倒見の良い、嫌味なところのまったくない素敵な子だ。
 じゃろ、とか変な言葉で喋るけど、そこもなんだか可愛らしい。

 おおとりせい
 おっとりしてて、でもしっかりしてそうで、言葉遣いも丁寧で、落ち着いている。
 なんでも受け止めてくれそうな、頼りがいがある子だ。

 へいなる
 日本史に出る貴族みたいな名前だけど、なのに正香ちゃんと反対に落ち着きがなくて、ほんと元気一杯で。
 一緒にいるだけで、こっちまで元気を貰えそうだ。

 あきかず
 態度が乱暴で怖いけど、授業サボるのやめた方がいいと思うけど、場所わきまえず大きな声で喋るのもどうかと思うけど、でも、ひねたとこがなくて真っ直ぐそう。
 多分、根はとても優しくて純情なんじゃないかな。

 彼女たちは、中学に入ってすぐ意気投合した、仲良し四人組ということらしい。
 共通項を見付けることなど不可能なくらいに個性的な四人。一見するとチグハグなのだが、上手くピースが噛み合ってまとまっている。

 転校初日である今日の朝、前の席になった治奈が話し掛けてくれたことから、他の三人とも知り合いになることが出来たのである。

 学校帰り、通学路が分かれるところまで五人で会話をしながら歩いたのだけど、とてもくつろげる楽しい時間だった。

 既に関係が出来上がっている四人組のようなので、これ以上は入り込みにくいけど。
 だから自分は、友達を作れずに浮いているような子がいたら、そういう子と仲良くなった方がいいのかも知れない。

 まあ、それは明日からの話だ。
 とりあえずは、

「そろそろまた、ミルクをあげますか」

 公園に捨てられていた子猫を二匹、明木治奈と一緒に動物病院に連れていって診てもらった。
 とりあえず生命に別状はないだろうと診断をされたのだが、その二匹をここへ連れ帰ってきているのだ。

 部屋に戻ろうと、くるり夜景に背を向けるアサキであるが、

「!」

 ふとなにかの気配を感じて、再びくるり振り返っていた。

 その瞬間、驚愕に目が見開かれていた。
 小さく開かれた口から、やがて、かすれるような声が漏れた。

「嘘だ……」

 眼下に、白い影のようなものが、すーっと疾っていくのが見えたのである。
 そこまでの間に透明シートが何枚も何枚も張られているかのような、そんな歪み濁った向こう側に、その白い影が見えたのである。

「ここでも……なんだ」

 この白い影を見たのは、初めてではなかった。
 以前に住んでいたいくつかの町でも、度々このようなことがあった。

 単なる偶然かも知れないが、それを見てしまうと翌日か翌々日に近場でよくないことが起こる。身内が、というわけではないが、殺人事件や行方不明など。

 これもまた偶然かも知れないが、それを目撃するのは学校や家庭のことで辛い気持ちになっている時が多く、だからその都度アサキは自分を責めた。辛い、苦しい、という自分の怨念が悪霊を呼び寄せているのではないか、と。

 今回の転校では良いクラスに入れたし友達も出来た、義父母との生活にも慣れてもうギクシャク感もないし、だからこの地でそれを見てしまうことなどないだろう。と思っていたのに……

 心臓が、どきどき高鳴る。
 息が苦しくなってきた。

 絶望感、
 焦燥感、
 消失感に。

 ここでもまた、なにか嫌なことが起きてしまうのだろうか。

 張り裂けそうな胸にそっと手を当てて、不安定な呼吸をしていると、また眼下で驚くべきことが起きた。
 今度は、先ほどの怪物のようなものとは違う人影が見えたのだ。

 濁った透明フィルムを重ねたような、その向こうを走るのは、

「治奈……ちゃん?」

 そう、新しい中学校で同じクラスになった女子生徒、あきらはるであった。

 白と紫の、和風なのか洋風なのか、古風なのか未来的なのかが漠然とした、身体にぴったりした服を着て、音も立てず走っているのだ。

 白い影を追うように。
 右手に長い槍のような武器を持って。

「まさか……」

 アサキは引きつった笑みを浮かべると、両のまぶたを手の甲でこすった。
 目を開くと、眼下にはただ闇と静寂があるばかりだった。

「疲れてるんだ。わたし」
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