らいむ

かつたけい

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あとがき

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 「らいむ」を最後まで読んで下さった方々、ありがとうございます。

 この物語は、なでしこリーグ(正確にはチャレンジリーグ)小説という位置付けではあるものの、あるテーマの上にサッカーという薄皮を被せただけの、単なる青春小説です。
 従いまして、サッカー小説と考えてしまうと、かなり物足りないところがあるかと思います。
 なおそのテーマとは、実に月並みではありますが、夢を持って全力で生きることの素晴らしさ、です。


 夢を追い続けたいがために悩み、苦しみ、喜び、笑い、その生を駆け抜けた来夢ですが、実在のモデルがいます。
 それは、東日本大震災で亡くなった、岩手県のあるサッカー選手です。
 名前は伏せますが、検索すればすぐに見つけられるでしょう。

 彼女は、岩手県選抜などにも選ばれる逸材で、そのままいけば間違いなく将来なでしこリーガーになっていたでしょうし、なでしこジャパンへも選出されていたかも知れません。
 しかし、高校二年生の時、そうした夢をかなえる一歩手前といったところで、巨大地震が起こした大津波に飲み込まれ、帰らぬ人となりました。

 震災から少しして、たまたまネットニュースでその記事を知り、他人事ではありながらそのもの悲しさに胸が苦しくなり、それと同時に災害に対してなにも出来ない自分、というべきか人間の無力さを改めて実感しました。
 そのニュースを見ながら思ったのが、彼女の生涯は絶対に無駄などではないよな、という肯定したい気持ちでした。おこがましいにも程があるとは思いますが。

 文章を書くくらいしか出来ない自分は、すぐに物語の構想に取り掛かっていました。そうして誕生した小説の主人公が、広瀬来夢です。
 すぐ取り掛かったといっても、実際の執筆開始は、同じ世界の数年後が舞台である「優衣」を書いていたためにずれ込んでしまいましたが。

 この物語で伝えたいことですが、これは最終章のサブタイトルにある通りです。夢を見続け全力で走り続ければ、例え志し半ばにして倒れようとも、必ずその夢は誰かに受け継がれ、廻って行く。ということです。

 震災で亡くなった方々や、遺族の方々の無念は尤もなれど、ただ、その死は決して無駄ではなく、また決して無駄にしてはいけない。
 そうした思いから勢いで書き綴った、拙い文章による本作品ではありますが、もしもこの作品が、読んで下さった人の心に落ちかかっていた陰を僅かながらでも取り払い、

 自分の生を少しでも肯定出来るようになった、
 元気が出た、

 と思って下さる方が一人でもいるのであれば、それだけで充分過ぎるほどに執筆した甲斐があるというものです。


2013年3月11日
かつたけい

(作品執筆期間 2012年3月~6月)
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