虹色のネコ

おみや

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虹色のネコ

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 街はずれの森のずっと奥に大きな山があった。
 その山の真ん中に、やっぱり大きな泉があって、そこに一匹のネコがいた。

 そのネコは、毛が虹色に輝くネコだった。

 誰もいない山の中で、毎日花の道を散歩したり、虫を追いかけたりしていた。

 ずっと一人ぼっちだったから、寂しいと思うこともなかった。でも、小鳥やうさぎが仲間と楽しそうにしているのを見ると、胸がちくりと痛くなった。

 そんな時は大きな木のくぼみに入る。そうすればあったかくなる気がした。

「お前さん、仲間の所にいかなくていいのかね?」

 ある日、ミミズクがそうネコに聞いた。

「ずっと1人だもん。仲間なんてどこにもいないよ」
 
 するとミミズクがこう言った。

「そうかい?山をおりて、そこに広がる森をぬけた先にお前さんのようにキラキラ輝くのがたくさん見えたがの。もしかしたら、そこにお前さんの仲間が居るかもしれないよ」

 ミミズクはそう言うと、目を閉じた。

 ネコはピューと山をかけあがり、山の上から森の先をみた。

 ミミズクの言うとおり、赤や緑、黄色や青、たくさんの色がまばゆくきらめいていた。
 手を見ると、自分も同じようにきらきらと輝いてる。

「仲間が居るのかな…」

 ネコはさっきの道をまた、ピューとかけ降りると、ミミズクに元気に声をかけた。

「仲間のところにいく事にした!」
「そうか、それがいい。最近、空も森もなんだか様子がおかしい。仲間が居るなら、一緒にいた方がいい 」

 ミミズクはそういうと、ホーと安心したように一鳴きして飛び立った。
 
 そうして、ネコは仲間を求めて旅にでた。



 森を歩いているとどこからか、しくしくと泣き声が聞こえてくる。

「ねえ、どうしたの?なんで、泣いてるの?」
「私は太陽。赤をどこかに落としてしまったのさ。もう、みんなを優しくてらせない」
「赤があればいいの?」

 ネコはそう言うと、体から赤をとって太陽にあげました。

「いいのかい?」
「うん。あっちに仲間が居るなら、大丈夫」

 太陽はニコニコ笑顔になり、空に帰っていきました。



また、歩いているとやはり泣き声が聞こえてきます。 

「ねえ、どうしたの?なんで、泣いてるの?」
「私は月。黄色をどこかに落としてしまったの。黄色がなければ、空にぽっかり穴があいたみたいになっちゃうよ」
「黄色があればいいの?」

 ネコはそう言うと、体から黄色をとって月にあげました。

「いいのかい?」
「うん。あっちに仲間が居るなら、大丈夫」

 月はニコニコ笑顔になり、空に帰っていきました。


 
ネコが歩いていると、空からポタポタと雨が降ってきました。

「ねえ、どうしたの?なんで、泣いてるの?」
「私は空。青をどこかに落としてしまったの。空が青くなければ鳥がまっすぐに飛べなくなってしまう」
「青があればいいの?」

 ネコはそう言うと、体から青をとって空にあげました。

「いいのかい?」
「うん。あっちに仲間が居るなら、大丈夫」

 空はニコニコ笑顔になり、雨はすっかりあがりました。



 雨で濡れた森は、太陽に照らされてキラキラ輝いています。
 でも、なんだか、元気が無いように見えます。    
「どうしたの?」
「私は森。緑が少なくて、森に元気がないんだ元気がないんだ」
「緑があればいいの?」

 ネコはそう言うと、体から緑をとって森にあげました。

「いいのかい?」
「うん。あっちに仲間が居るなら、大丈夫」

 森は嬉しそうに木をゆらしました。



 それからもネコは自分が持っている色をあげました。
 もう、虹色のネコではありません。

 夜の闇に溶けそうなほど真っ黒な黒猫になり、仲間と共に今日もにゃーと、鳴きました。

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