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第二章 本部編

34 パスカルの部屋

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 宿舎に戻ってきた俺は、夕飯を早々に済ませパスカルの部屋を訪れていた。今日あった出来事を話しながら、パスカルから聞いていなかった魔力のことについて問いただす。

「魔力が誰のものかわかるなんて聞いてないぞ、お陰でリズとソフィさんに俺の身体のことバレちゃったし」

「あー、そのことか。誰でも魔力の識別なんてできるわけじゃないから、話すの忘れてたわ」

 悪びれる様子もなくそう言ったパスカルは、俺に話していなかった魔力のことについて説明し始めた。



◇◇◇



 ややこしい話なので要約すると……魔力の識別は王族やエルフ、悪魔なんかの魔力に対して敏感な者だけができるらしい。他にも魔力の量や個性なんかもわかったりするらしく、特にエルフはその能力に長けているらしい。

 人間でもアルフレッドやギルバードのように膨大な魔力を持つものにも簡単な魔力量なんかはわかったりするみたいだ。
 そういえばテントに運ばれて狸寝入りをしていた時に俺の魔力がカラカラなのをギルも気づいていた。何よりパスカルはアルとの行為後魔力をたっぷり貰ったなと言っていた。エルフが魔力を見る力が秀でていることがよくわかる。

「なるほどねー、だからギルの魔力が流れていることがリズにわかったのか……でも待てよ、そういえばソフィさんはリズよりも詳しくわかっていたような」

「そりゃそうだろ、だってあいつハーフエルフだし」

 パスカルは随分と彼女を知っているような口振りでソフィさんがハーフエルフだと告げた。
 ハーフエルフって確か人間とエルフの混血の種族だったよな。なるほどね、だからパスカルみたいに詳しく魔力を見ることができたのか。耳も少しだけ尖っていたし、彼女の正体がようやくわかりスッキリしたが、もう一つだけ彼女に対して気になることがあった。
 別れ際に言った「叔父によろしく」という言葉だ。ハーフエルフの知り合いなんて俺にはいないし、兵士達を見ても彼女と同じ特徴の見た目の人物を目にした覚えはなかった。
 一応同じエルフの血が流れているパスカルならその叔父と呼ばれる人物を知っているかと思いダメ元で聞いてみる。

「そういえばさ、ソフィさんが帰り際に叔父によろしくって言ってたんだけど誰のことかわかるか?」

「……わしのことだけど」

「は? どゆこと」

「だからわしがソフィの叔父だけど、言い方を変えるならソフィはわしの姪っ子だ」

「──ええぇぇ!! そうなのかよ!」

 でも、ソフィさんはハーフエルフだけどパスカルはエルフだから……

「はぁ……わしの妹が人間と結婚して生まれたのがアイツなんだよ」

「な、なるほどな……」

 俺が混乱していることに気づいたパスカルは、ため息をつきながら分かりやすく説明してくれた。
 それにしてもパスカルに妹か、こいつの見た目から想像すると妹もだいぶロリっ子な見た目になるのだが……犯罪の匂いしかしないので考えるのはやめておこう。

 姪っ子の方が大人に見える不思議な現象が起きていて、言われてもあまり実感がわかない。むしろ一緒にいるリズの方が性格がパスカルに似ている気がする。でも、ソフィさんもすごく真剣にアルとギルの話聞いてたし変態の血が流れているのはなんとなく感じた気がする。

 もしかしたらソフィさんのせいでリズが下品なことも平気で言っちゃう変態になってしまったのかもしれない。色々な憶測が俺の脳内を駆け巡るが、考えても仕方ないしあまり知りたくないので考えるのをやめておこう。

「その話だけして帰ってきた訳じゃないだろ、あの変態二人がお前の身体のことを知って黙って帰すわけがない」

「あ、ああ、そうだけど……」

 やはりパスカルにもあの二人が変態に見えているようだ。パスカルもだいぶセクハラじみたこと言ってくるけど、そんなパスカルが呆れるぐらいの変態ってどんなよ。二人がだんだん怖く思えてきた……

 とりあえず二人のことは置いといてだ。今日リズとソフィさんと話をし一番の収穫だったレオンハルトのことをパスカルに話した。

「あー、レオに頼んだのか……」

「だめ……だったかなぁ」

 ギルバードが最近疲れていること、レオンハルトという人物に話をしてくれとリズに頼んだことなどパスカルに話しをすると、いつもの可愛い顔を崩しなんとも言えない微妙な顔をした。勝手にこんなことして怒っているのかもと少し心配になる。

「別にダメじゃない、アイツには話すつもりだったし、話さなくてもアイツは鼻が効くからどうせバレる」

「じゃあどうして微妙な感じなんだよ……」

 怒っているのでないのならこの反応はなんか怖い。やっぱり怖い人なのかな。獅子の獣人って言ってたし、魔法軍の風紀を取り締まる厳格な人物なのかも知れない。

「楽しいことには目がないから、わし以上にサタローのことをもてあそぶぞ」

「……なにそれ怖いんだけど」

 レオンハルトという男は俺の想像していた人物とはだいぶかけ離れた人物のようだ。かけ離れすぎて違う意味での恐怖が襲ってくる。あとパスカルが俺のことを弄んでいると自覚していたことに多少なりともイラッときた。

 弄ばれるとは一体どんなことをされるのだろうか……よく聞くのは女を弄ぶ男とかだよな。そういうのだとチャラくてホスト的な軽い男なのかも。だとしたらある意味頼みやすいのかもしれない。とにかくポジティブに考える俺、異世界にきて得た能力スキル(勝手に思ってるだけ)を発動する。

 とにかく会ってみないと始まらない。明日には本部内をふらふら歩いているだろうと言っていたから探してみよう。
 
 久しぶりになかなか充実した一日を送った俺は、パスカルの部屋を後にし自分の部屋に戻り眠りについた。




 




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