上 下
58 / 71
【 6章 】

3話 〔58〕

しおりを挟む
 それから、ことあるごとに利用している駅前に到着すると、こちら(といっても私自身のことは含まないんだけど)の三人を見つけたマリアが大きく手を振って迎えていた。

「おはよう。マリア」
「おはようございます! みなさん遅いですよー!」

「シュウがぐずぐずしてるからよねぇ」
「変なこと言うなって、時間どおりだろ」
「えへへ、待ってないです。実はマリアもいま来たところでした!」

 仲良くからかい半分で、シュウをいじり合っている。いまとなってはそれも羨ましい光景だった。

 合流した四人は改札を抜けてホームに上がると、間もなくはいってきた予定の電車に乗り込んだ。
 私は構わず後からそれに続いて、車内で邪魔にならないように注意する。

(確かこのときは、他県の海水浴場まで足を延ばしたんだったわよね)





 二時間半ほど電車に揺られて目的の海水浴場にやって来ると、もうお昼近くになっていて、ビーチはすでに大勢の人でごったがえしている。

 長い砂浜が続く美しい海岸で、遠浅の海辺は天気のいい日は波も穏やか、海の家やレジャーも豊富。この時期は若い男女の他に、ファミリー・海外旅行の観光客からの人気も高い。

 四人も早速近くの更衣室を利用して、水着に着替えるとビーチに繰り出した。

 先日、みんなそろって買いに行った水着を身に着けている。

(なかなか似合ってるわね)

 シュウは無難な膝上丈のサーフ型水着ながら鮮やかな色使いの柄で、選んであげたのセンスの良さが光る。



 ミナの水着は……大人っぽい黒のヒモビキニ。我ながら若い肢体がはちきれんばかりに眩しい。
 どうやら久々の海で気合を入れすぎていたらしい。
 こうやって客観的に見るとかなり刺激的だ。いまにも胸がこぼれそう、見ているこっちの顔が赤くなるくらいだった。

(これは……やりすぎだわ)

 シュウも目のやり場に困ったように視線をそらしているのがわかる。

 一方、由那は持ち前の長い黒髪をトップで纏め、大きなお団子が仕上がっている。それに合わせるのは、上下のフリルが可愛らしい控え目な白ビキニ……のはずが、元々私と変わらぬボリュームのポテンシャルを隠し切れていない。

(これは由那にしてやられたわね、周りの男どもの注目をあたしに向けさせて自分から注意をそらす計算だったとは……)

 当時、気に留めていなったことが、いまこの視点だからこそわかることもある。

 それは、最後に登場したマリアのことがそうであったようにである。

 長いツインテールを半分に折り曲げて、頭の後ろでひとつに合わせて留めている。
 そして、マリアに至ってはあまり胸が目立たないタンキニのレディースビキニの装いだった。気になる下半身は付属のパレオスカートで隠れていて、ちょっとやそっとではバレることはない。

 なんてことだ、あのときはあまりに違和感がなくて完全に無防備だった。当然のように女性用更衣室を使用して、私の体も見られていたということに……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

アンダーヒューマン

ガム
SF
この世界はふざけている。 そう豪語するのはシム軍事養成学校中等部を主席で卒業した九条沙織。 恋愛に無頓着であった少女はとある出来事から爆発するようにその感情が溢れ出す。 そして一人の男性を追うように異能訓練施設の門を叩く。 しかし、そこで待っていたのは訓練とは名ばかりのバトルロワイヤルであった。 武器一つ持たずに荒野に放り出された三千名。 当の沙織は銃の腕には自信があったが、異能の力には全く知識が無かった。 自分の能力に躍らされながらも知識を絞り、仲間を増やしていくが、日を追うごとにこの世界の真実が明らかになっていく。 だが、沙織がこの舞台に参加したのはとある男性と出会うため。 現実を突き付けられながらも、仲間の説得を振り切り、一人の男性と再会することを果たした沙織は突如、窮地に陥ってしまう。 最愛なる人からの銃弾《贈り物》を受けながらも、沙織が取った行動とは!? 数多な絶望を乗り越え、仲間の力を糧にこのふざけた世界をぶっ壊せ! ――私には絶望も苦しみも悲しみも全て受け入れるだけの「覚悟」がある。私は生き続けなければならない。あいつをこの手で殺すまでは。

 女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】

m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。 その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする

コネクト・フロム・アイアン・エイジ

@p
SF
荒廃した世界を旅する2人。旅には理由があった。 片方は復讐のため、片方は自分を探すため。 片方は人間、片方は機械。 旅の中で2人は様々な人々に出会い、葛藤し、互いに変化していく。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

【完結】本当に愛していました。さようなら

梅干しおにぎり
恋愛
本当に愛していた彼の隣には、彼女がいました。 2話完結です。よろしくお願いします。

処理中です...