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【 3章 】
10話 〔33〕
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「ええっと、確かこのあたりに……昔、何かの修理に使ったやつが……」
準備室の机にある、工具が片付けられた引き出しを漁る。
「あー、よかった。やっぱりここにあった」
部室の物の位置は自分の部屋のように把握していたので、精密ドライバーのセットを探り当てるのに手間はかからなかった。
「これで楽勝っと」
ケースの小さなネジをドライバーでひとつずつ外していく。
そして、最後の一本を外し終え、慎重にケースの蓋を開ける――。
…………!
「何なの、これは……」
否が応でもその奇妙に戸惑わされる。
基盤と思える部品はあまりにも緻密で、これまでの電子機器では見たこともない構造だった。その心臓部には大きな結晶の振動子らしき塊がひとつ、圧倒的ウソくささで鎮座されていた。
「電子部品って感じじゃないわよね……」
結晶は、『ねじれ双五角錐』の特殊な形状。長さ四センチぐらいでケースになんとか収まる大きさだ。
アメシストに近い紫のガラス光沢で、興味深いのはその中心にはシンプルな指輪のようなリングが浮いた状態で、ゆっくりと自転している。
更には、リングを取り巻く無数の粒子が磁界のごとく対流しているのが、透けた内部に覗き見える。
「どんな仕組なの? こんなことって……」
本物の原子時計の中身を見たことは無いけれど、きっとこれは違う。とても現代科学の技術で作られたとは思えない。
世界舞台が異世界だったなら、古のクリスタルとして神秘的なパワーぐらいはありそうな気さえする。
「まさか、『オーパーツ』ってやつ?」
ネットやオカルト系雑誌などでちょくちょく目にしたりはする言葉ではあるが、大抵はいわくつきで眉唾なものだったりする。
だが、この謎の結晶はいままさに、生きているかのように動き続けている……。
あまりに幻想的で優美なフォルムに、思わずケータイのムービー機能で撮影することにした。
この中身のことを、マリアは知っていたのだろうか?
昨日の様子はとてもそんな風じゃなかった。だけどこの装置を持ってきたのは、マリア本人なのは確固たる事実だ。
仮に知っているなら、マリアはこれまでの天真爛漫な言動とは裏腹に、只者ではない秘密を抱えていることになり。
例え真相を知っていなくても、こんな怪しげな代物を持っていることは、謎の存在が身近にいる可能性が極めて高いということにもなる。
この結晶の正体を明らかにすることは、マリアが何者かを必ず追及することになる。
シュウや由那に相談したほうがいいか……? それはふたりを巻き込んで未知なる危険に晒すことになるかもしれない。
そう思うと躊躇わざるを得なかった。
準備室の机にある、工具が片付けられた引き出しを漁る。
「あー、よかった。やっぱりここにあった」
部室の物の位置は自分の部屋のように把握していたので、精密ドライバーのセットを探り当てるのに手間はかからなかった。
「これで楽勝っと」
ケースの小さなネジをドライバーでひとつずつ外していく。
そして、最後の一本を外し終え、慎重にケースの蓋を開ける――。
…………!
「何なの、これは……」
否が応でもその奇妙に戸惑わされる。
基盤と思える部品はあまりにも緻密で、これまでの電子機器では見たこともない構造だった。その心臓部には大きな結晶の振動子らしき塊がひとつ、圧倒的ウソくささで鎮座されていた。
「電子部品って感じじゃないわよね……」
結晶は、『ねじれ双五角錐』の特殊な形状。長さ四センチぐらいでケースになんとか収まる大きさだ。
アメシストに近い紫のガラス光沢で、興味深いのはその中心にはシンプルな指輪のようなリングが浮いた状態で、ゆっくりと自転している。
更には、リングを取り巻く無数の粒子が磁界のごとく対流しているのが、透けた内部に覗き見える。
「どんな仕組なの? こんなことって……」
本物の原子時計の中身を見たことは無いけれど、きっとこれは違う。とても現代科学の技術で作られたとは思えない。
世界舞台が異世界だったなら、古のクリスタルとして神秘的なパワーぐらいはありそうな気さえする。
「まさか、『オーパーツ』ってやつ?」
ネットやオカルト系雑誌などでちょくちょく目にしたりはする言葉ではあるが、大抵はいわくつきで眉唾なものだったりする。
だが、この謎の結晶はいままさに、生きているかのように動き続けている……。
あまりに幻想的で優美なフォルムに、思わずケータイのムービー機能で撮影することにした。
この中身のことを、マリアは知っていたのだろうか?
昨日の様子はとてもそんな風じゃなかった。だけどこの装置を持ってきたのは、マリア本人なのは確固たる事実だ。
仮に知っているなら、マリアはこれまでの天真爛漫な言動とは裏腹に、只者ではない秘密を抱えていることになり。
例え真相を知っていなくても、こんな怪しげな代物を持っていることは、謎の存在が身近にいる可能性が極めて高いということにもなる。
この結晶の正体を明らかにすることは、マリアが何者かを必ず追及することになる。
シュウや由那に相談したほうがいいか……? それはふたりを巻き込んで未知なる危険に晒すことになるかもしれない。
そう思うと躊躇わざるを得なかった。
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