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【 2章 】

7話 〔18〕

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「ここでぼさっとしてたらほかのお客の迷惑になるから、向こうへ行きましょう」

 フロアの案内表示に従って、少し場所を移動するようにみんなに促した。

 現時点ですでに原子時計にほんのちょっとでも違いが現れているのか気になるところだけど、この実験ではエレベーターによる速度の影響よりも、重力の影響のほうが強い。
 よって、長くこの場に留まったほうが結果が出せるはずだった。
 フロアの展示品を鑑賞したり、都内のビル群をひととおり眺めて楽しんでもまだ時間があり余る。そこで、今思いついたことを題材にして、タイミングを見計らって切り出すことにした……。

「ちょっと時間があるみたいだから、暇つぶしにひとつ問題を出してあげるわ」
「あぁ、そろそろ来ると思ってたよ」

 私の毎度の厄介事にも、シュウはイヤな素振りは見せない。

「ここ、三百五十メートル天望フロアでケータイはどうして使えると思う?」
「何を言ってるんだ? ほら、普通に使えるだろ……それをどうして、って?」

 私からの不鮮明な出題に、シュウは少し首をひねってから自分のケータイを取り出して、その画面で電波状態を確認してみせた。アンテナはバッチリ三本立っている。

「確かそれって、ツリーに基地局があるんじゃなくて……、周辺ビルの基地局とで通信してるんだったよね……?」
「…………?」

 なんの疑問もいだかなかったマリアは、問題の意味すらわからずにキョトンとしている。

「いや。よくよく考えるとおかしいような感じもする」

 シュウの目つきが鋭くなり、そこからやや考え込んでから話を続けた。

「何度も言うようだけど、一般相対性理論が正しければ、ここは地上よりほんの僅かだけど未来になるはずなんだ」
「空にある軌道衛星だとその差はより大きくて……、それをきちんと補正しているって聞いたことがあるけど……」

 GPS衛星はその補正が正しくされているからタイムラグが無い。由那はそのことを付け加えようとしていた。

「それは衛星内の装置としての時計を補正してる。ってことだろ?」
「……? それなら何も問題無いんじゃないですか!?」

 どちらかを基準にしてズレが出ているほうを修正する。それ自体はたいした問題ではない。

「不思議なのは、実際に飛ばされている電波のほうだ」
「電波……? 目に見えないけど、電磁波の振幅なんだよね……光もその一種っていうけれど」

 電波が空間を伝搬する速度は光速とほぼ同等だ。

「地上より僅かでも未来にあるここからケータイの電波を送って、地上までそのデータがいっさい欠損しないで受け取れるってことは? ようするに」
「それって、もしかして! 送れてるってことですか!?」

 いままで何の支障も無く普通にやれていたことだから、誰も疑問に思わなくても無理はない。
 ここでやっと、マリアが問題を理解して一段階テンションをあげた。
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