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【 1章 】
1話 〔2〕
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放課後の科学研究部部室。部員のひとりである僕は、自分を含めた四人で、この日も集まっていた。
部とは言ってもこれといった名目などなく、青春という時間を持て余した仲間うちの集いの場でしかないのだが。
それぞれが校内の自販機で買った飲み物や、持参したお菓子などを広げてくつろいでいるところだ。
「ねぇ、シュウ。あんたはどう思うのよ? 時間移動ってできると思う?」
双子姉妹の姉。時乃世未那は、今日もまたとんでもないことを言い出したもんだ……。
シュウと呼ばれたのは、泡沫終で僕のこと。
また。と思ったのは、僕にとってはこれがいつものことだからだ。
時乃世未那について少しだけ説明させてもらうなら、僕の家とは近所だったこともあり、親達も懇意にしていたので、幼いときから付き合いが長く、所謂幼馴染というやつだ。
僕より、ひとつ上の十八歳。三年生で、この部の部長でもある。
綺麗に整った顔立ちと、ふわりと肩まで広がる髪。街を歩けば男女問わず、一度は振り返るモデルスタイル。
控えめに言っても美少女の部類だと思う。
未那には由那という双子の妹がいて、そちらが副部長であり、実は僕の彼女だったりする。
今日はやっかいなテーマだな……。と思いながらとりあえず、答えることにした。
「はぁ? 何なの突然! 時間移動って、タイムマシンとかでタイムスリップするってこととかの話?」
「わかりやすいとこで言えばそうね」
「それはアレだろう、あのアインシュタインの相対性理論からすると、未来方向には行けるけど過去方向には戻れない……っていう」
「えぇ、特殊相対性理論ね、光速に近づくと時間の流れは遅くなる。つまり遅く流れた時間からみると、早く流れた時間は未来になると」
未那はまるで、最初から僕がそう返すと想定していたかのように話しを繋げる。
「俗に言う、『ウラシマ効果』ってやつで、タイムマシンとは違うけど。主観者が先の未来世界を体験できるって意味では、時間移動って言えないかな」
僕がそう付け加えると、未那の口元が僅かに笑ったように見えたのは、彼女は僕を論破することを日々の生き甲斐としているからだ。
「その場合、主観者が移動中だった時間は、普通に生活していなかった未来が訪れるはずね?」
「まぁ、そうだろうな……。主観者が時間移動をしないで普通に生活した先の未来と、時間移動して世界と干渉せずに訪れた先の未来が同じになるわけない」
だとすると、本来訪れるはずだった未来はどちらか?
そして、この話の展開は、すでに未那の思惑か……?
「それを以って実用化するとしても現代科学じゃ不可能! 遠い未来なら、あるいは……って、ぐらいだろうね」
結論を簡単に言ってしまったが、今度は未那の口元がちょっとムッとしたように見えた。
どうやら、このテーマをもっと議論したいようだ。
部とは言ってもこれといった名目などなく、青春という時間を持て余した仲間うちの集いの場でしかないのだが。
それぞれが校内の自販機で買った飲み物や、持参したお菓子などを広げてくつろいでいるところだ。
「ねぇ、シュウ。あんたはどう思うのよ? 時間移動ってできると思う?」
双子姉妹の姉。時乃世未那は、今日もまたとんでもないことを言い出したもんだ……。
シュウと呼ばれたのは、泡沫終で僕のこと。
また。と思ったのは、僕にとってはこれがいつものことだからだ。
時乃世未那について少しだけ説明させてもらうなら、僕の家とは近所だったこともあり、親達も懇意にしていたので、幼いときから付き合いが長く、所謂幼馴染というやつだ。
僕より、ひとつ上の十八歳。三年生で、この部の部長でもある。
綺麗に整った顔立ちと、ふわりと肩まで広がる髪。街を歩けば男女問わず、一度は振り返るモデルスタイル。
控えめに言っても美少女の部類だと思う。
未那には由那という双子の妹がいて、そちらが副部長であり、実は僕の彼女だったりする。
今日はやっかいなテーマだな……。と思いながらとりあえず、答えることにした。
「はぁ? 何なの突然! 時間移動って、タイムマシンとかでタイムスリップするってこととかの話?」
「わかりやすいとこで言えばそうね」
「それはアレだろう、あのアインシュタインの相対性理論からすると、未来方向には行けるけど過去方向には戻れない……っていう」
「えぇ、特殊相対性理論ね、光速に近づくと時間の流れは遅くなる。つまり遅く流れた時間からみると、早く流れた時間は未来になると」
未那はまるで、最初から僕がそう返すと想定していたかのように話しを繋げる。
「俗に言う、『ウラシマ効果』ってやつで、タイムマシンとは違うけど。主観者が先の未来世界を体験できるって意味では、時間移動って言えないかな」
僕がそう付け加えると、未那の口元が僅かに笑ったように見えたのは、彼女は僕を論破することを日々の生き甲斐としているからだ。
「その場合、主観者が移動中だった時間は、普通に生活していなかった未来が訪れるはずね?」
「まぁ、そうだろうな……。主観者が時間移動をしないで普通に生活した先の未来と、時間移動して世界と干渉せずに訪れた先の未来が同じになるわけない」
だとすると、本来訪れるはずだった未来はどちらか?
そして、この話の展開は、すでに未那の思惑か……?
「それを以って実用化するとしても現代科学じゃ不可能! 遠い未来なら、あるいは……って、ぐらいだろうね」
結論を簡単に言ってしまったが、今度は未那の口元がちょっとムッとしたように見えた。
どうやら、このテーマをもっと議論したいようだ。
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