133 / 142
番外編 その後の二人<お茶会での思惑>
しおりを挟む
「不快ですわ。私はゲストですのよ?ゲストに対しておもてなしする側がこんな対応ってあるかしら?」
アイラが鼻に皺を寄せて不快を表現する。
その様すら子供っぽく、アリシアは一瞬アイラが何歳だったのかもう一度確認したくなった。
「それは失礼しましたね。せっかくのお茶会ですので、まずはお茶を楽しみましょう」
ひとしきりアイラに好きにさせた後、ディミトラが場をとりなす。
皇太子妃にそう言われてはアイラとしてもそれ以上何も言えなかったのか口を閉じると、傍の侍女に指示して先ほどのお土産をディミトラの侍女に渡した。
「言い忘れてしまいましたが、中のお茶に関する詳細はこちらになりますわ。一緒にお渡ししますわね」
アリシアに言い返すことでうやむやになっていたが、お茶の詳細に関してはアイラもちゃんと持参していた。
(そもそも口に入れる物を土産にすることは好ましくないのだけれど、トウ国の一番の特産品はお茶。自国のアピールだったのかしら?)
そう心の中でアリシアが考えている内に、三人の前に新しいお茶が振る舞われた。
「アイラ王女は勉学と交流のために来られたということですけれど、学園には留学しないのでしょうか?」
ゆったりとした動作でカップを持ち上げながらディミトラが聞く。
「そうですね。それほど長くこちらに滞在することはできませんので正式な留学は難しいと思います。でもせっかくですので体験という形で少しお邪魔する形になると思いますわ」
アイラの返答にアリシアはディミトラとの会話を思い出す。
やはり王女は降嫁先を探しに来たというのが今回の来国の理由として一番考えられることなのだろう。
そして王女が興味を持っているのがルーカスであるということも。
それでも、他の候補者も見つけるためにも学園へ行って同じ年頃の令息と交流を持つのだと思えた。
アイラのロゴス国の滞在期間をアリシアははっきりと聞いていない。
通常の留学であれば一年間が一般的だ。
逆に体験ということであれば長くても一ヶ月。
そう考えると、アイラの滞在期間は二~三ヶ月くらいと推察された。
「我が国の同じ年頃の学生と交流を持つのは良いことだと思いますよ」
ディミトラが言外に『既婚者のルーカス公を追い回すよりよほどね』と匂わしたことにアリシアは気づく。
「もちろん、良い交流を持ちたいと思っておりますわ」
そこで一旦言葉を切ると、アイラはさらに続けた。
「アリシア様には申し訳ありませんが、王都の視察にも学園での交流にも、ルーカス様に付き添っていただきますのでよろしくお願いしますわね」
ディミトラが言外に込めた思惑に気づいたのか気づかなかったのか、アイラはさらにそう言い募る。
「夫はそれがお仕事であれば付き添うと思いますわ」
逆に、仕事でなければ付き添わないということだ。
「そういえば、ルーカス公の愛妻ぶりは有名ですものね」
アリシアの言葉にディミトラが微笑ましげに続ける。
「そうですね。いつでも仕事が終わればすぐに帰ってきますし、言葉を惜しまずに思いを伝えてくれるのでありがたいと思っていますわ」
いつもであればアリシアはそんな言い方はしない。
誰かにそういったことを言われると恥ずかしくてついつい否定してしまうくらいだ。
でも、今この場は愛されているのだと胸を張って言うところなのだと思った。
「…っ」
アリシアの言葉にアイラがどう思ったのかはわからない。
ただ、アイラは悔しそうに唇を噛んだ。
「せっかく我が国に交流に来ていただけたのですもの。学園で良き出会いがあることを願っておりますわ」
ディミトラがそう言って、その話題は締め括られた。
その後は当たり障りのない話が続き、最初はどうなるかと思われたお茶会はなんとか無事に終わったのだった。
アイラが鼻に皺を寄せて不快を表現する。
その様すら子供っぽく、アリシアは一瞬アイラが何歳だったのかもう一度確認したくなった。
「それは失礼しましたね。せっかくのお茶会ですので、まずはお茶を楽しみましょう」
ひとしきりアイラに好きにさせた後、ディミトラが場をとりなす。
皇太子妃にそう言われてはアイラとしてもそれ以上何も言えなかったのか口を閉じると、傍の侍女に指示して先ほどのお土産をディミトラの侍女に渡した。
「言い忘れてしまいましたが、中のお茶に関する詳細はこちらになりますわ。一緒にお渡ししますわね」
アリシアに言い返すことでうやむやになっていたが、お茶の詳細に関してはアイラもちゃんと持参していた。
(そもそも口に入れる物を土産にすることは好ましくないのだけれど、トウ国の一番の特産品はお茶。自国のアピールだったのかしら?)
そう心の中でアリシアが考えている内に、三人の前に新しいお茶が振る舞われた。
「アイラ王女は勉学と交流のために来られたということですけれど、学園には留学しないのでしょうか?」
ゆったりとした動作でカップを持ち上げながらディミトラが聞く。
「そうですね。それほど長くこちらに滞在することはできませんので正式な留学は難しいと思います。でもせっかくですので体験という形で少しお邪魔する形になると思いますわ」
アイラの返答にアリシアはディミトラとの会話を思い出す。
やはり王女は降嫁先を探しに来たというのが今回の来国の理由として一番考えられることなのだろう。
そして王女が興味を持っているのがルーカスであるということも。
それでも、他の候補者も見つけるためにも学園へ行って同じ年頃の令息と交流を持つのだと思えた。
アイラのロゴス国の滞在期間をアリシアははっきりと聞いていない。
通常の留学であれば一年間が一般的だ。
逆に体験ということであれば長くても一ヶ月。
そう考えると、アイラの滞在期間は二~三ヶ月くらいと推察された。
「我が国の同じ年頃の学生と交流を持つのは良いことだと思いますよ」
ディミトラが言外に『既婚者のルーカス公を追い回すよりよほどね』と匂わしたことにアリシアは気づく。
「もちろん、良い交流を持ちたいと思っておりますわ」
そこで一旦言葉を切ると、アイラはさらに続けた。
「アリシア様には申し訳ありませんが、王都の視察にも学園での交流にも、ルーカス様に付き添っていただきますのでよろしくお願いしますわね」
ディミトラが言外に込めた思惑に気づいたのか気づかなかったのか、アイラはさらにそう言い募る。
「夫はそれがお仕事であれば付き添うと思いますわ」
逆に、仕事でなければ付き添わないということだ。
「そういえば、ルーカス公の愛妻ぶりは有名ですものね」
アリシアの言葉にディミトラが微笑ましげに続ける。
「そうですね。いつでも仕事が終わればすぐに帰ってきますし、言葉を惜しまずに思いを伝えてくれるのでありがたいと思っていますわ」
いつもであればアリシアはそんな言い方はしない。
誰かにそういったことを言われると恥ずかしくてついつい否定してしまうくらいだ。
でも、今この場は愛されているのだと胸を張って言うところなのだと思った。
「…っ」
アリシアの言葉にアイラがどう思ったのかはわからない。
ただ、アイラは悔しそうに唇を噛んだ。
「せっかく我が国に交流に来ていただけたのですもの。学園で良き出会いがあることを願っておりますわ」
ディミトラがそう言って、その話題は締め括られた。
その後は当たり障りのない話が続き、最初はどうなるかと思われたお茶会はなんとか無事に終わったのだった。
140
お気に入りに追加
2,784
あなたにおすすめの小説
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。
たろ
恋愛
幼馴染のロード。
学校を卒業してロードは村から街へ。
街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。
ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。
なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。
ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。
それも女避けのための(仮)の恋人に。
そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。
ダリアは、静かに身を引く決意をして………
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる