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番外編 剣術大会<14>

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2位のブライトンのことはルーカスも昔から知っていた。
第1騎士団の騎士団長であるピズマには入団した時から世話になっていたが、ブライトンとも同じくらいのつき合いになる。

人として尊敬できる者たちが上司だったことはルーカスにとって幸運だった。
微妙な立場のルーカスにとって、家の事情を知りつつも一騎士として他と同じ扱いをしてもらえたことは大きな意味を持つ。

「まさかまともに打ち合ってくれるとは思わなかった」
不意にかけられた声にルーカスは顔を上げた。

「一太刀だけでも当てるか、もしくはその場からルーカス公を動かすことができれば十分だと思っていたんだが…」
「ブライトン副団長と打ち合うことができて光栄です」

ルーカスの言葉に、ブライトンは一瞬驚いたような表情を浮かべる。

「ルーカス公に何があったのかは詳しく知らないが…私は今のルーカス公の方が好ましいと思う」
「それは…ありがとうございますと言うべきでしょうか」

ルーカスはなんとも答えづらくて煮え切らない返答をした。
困った感じが出ていたのだろうか、ブライトンは小さく笑う。

「ルーカス公自身はどう思っているのかわからないが、今の方が何を考えているかがわかりやすいし親しみやすくなったのではないだろうか」

それだけ言うと姿勢を正した。

「第1騎士団の一部の者たちが統率できていなかったこと、申し訳なく思う」
「いえ。私が統括者として未熟だったせいです。信頼を得るための努力もしてきませんでしたから」

ルーカスとしてはここで謝られてしまうと逆に自身の不甲斐なさを感じてしまうところだ。

「今大会でルーカス公の実力も理解できただろうし、今後はそのようなことがないようさらに努めるつもりだ」
「私も私自身について周りに知ってもらう努力をするべきだったと実感していたところです」

「そうか。では古巣のよしみで時々訓練をつけてもらおうか?」
ブライトンはきっと冗談半分で言ったのだろう。
しかしルーカスはそれもまた一つの方法だと思った。

「いいですね。私も体を動かしたいと思っていたところですので、時々訓練に参加させてもらえればと思います」

意外な返答を聞いたと思ったのだろうか、ブライトンは再び驚きの表情をした。

「いや、しかし第1だけ稽古をつけてもらうわけにもいかないだろう」

ブライトンは思いのほか真面目な性格らしい。

「もちろん近衛騎士団と第3騎士団にも顔を出すつもりですので心配無用です」
「…そうか、それはきっと良い結果をもたらすだろうな」

ピズマも喜ぶだろう、そう続けてブライトンは言葉を切った。

そろそろ優勝者の表彰だ。
表彰式はそれぞれの順位の間に準備が挟まるため多少の待ち時間があった。

ブライトンの言葉にルーカスもまた表彰台の方を見やる。

「ああ、そろそろですね」
「アリシア夫人に祝福を願うのだろう?」

「もちろんです」
それもまた目的の一つなのだから。

そう心の中で呟いて、ルーカスは自身の名が呼ばれるのを待つのだった。
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