【本編完結】たとえあなたに選ばれなくても【改訂中】

神宮寺 あおい@受賞&書籍化

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幕間ー考察ー

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イリア・カリスはカリス伯爵家の次男だ。
大らかで穏やかな両親の元、比較的自由人な兄と芯の強い姉を持つ。

特に姉は一見極めて普通の人のように見えてその実とても懐が深く、どんな噂があろうとも自分の目で見たもの聞いたものしか信じないあたり、嘘や建前が蔓延する貴族社会においては珍しい性格だった。

高位貴族であればあるほど社交界では本音で話すことが難しい。
また、相手に取り入るためには媚を売ることや裏表のある態度で接することを躊躇わない人種が近づいてくるため、精神的に疲弊する場面が多かった。

もちろん、貴族にはそんな中でも如才なく立ち回る能力も求められる。

カリス家の兄弟は、兄はのらりくらりとかわし、姉は全てを正面から受け止めながらも動じず、そしてイリアは周りを観察してうまく立ち回る性格だった。

そんなイリアだが、今度から通うことになる学園には一抹の不安を抱いていた。

ロゴス国では貴族の女性が働くことはほぼない。
学園の在学中に婚約を決めて卒業後に結婚するのが一般的だった。
そのため女性たちは在学中に少しでも良い相手と縁づこうとする。

婚約は家同士の政略的な目的で決められることもあるが、自由恋愛で決めることも多い。
そのためにも学園での出会いというのが女性にとってとても大切になる。

だからだろうか、学園内では真偽不明な噂が流されたり、裏で嫌がらせをされたりというのがままあった。

イリアはその話を聞いた時点で若干げんなりしてしまったものだが。

選ばれるために、女性は着飾り美しさも磨く。
持って生まれた容姿を変えることは難しいが、化粧をし体型を整える。
それは彼女たちが少しでも良い未来を手に入れるために自分でできる精一杯のことだった。

だからこそ、いわゆる普通の容姿のアリシアは妬まれた。

ルーカス・ディカイオ公爵子息はロゴス国で4家しかない公爵家の次男だ。
その産まれとロゴス国では異色と言われる色を持っていたために社交界では数多くの噂や中傷に晒されてはきたが、結婚相手としては優良な相手だった。

ましてや文武に長け、美しい容姿をしているなら尚のこと。

また、年々国外との貿易が増え他国の国民がロゴス国に来ることも多くなったことにより、若い世代であればあるほど見た目の色の違いを気にしなくなっている側面もある。

ルーカスは本音と建前に晒され続けたせいか、特に裏表のある人間を嫌悪していた。
そして高位貴族や、ご令嬢方の視線を集めるような魅力のある男性もまた同じような考えを持っていることが多いというのがイリアの考えだ。

(実は素直に接するのが恋愛関係に至れる一番の近道ってことに気づけばいいのに)

着飾るよりも先に本音で話せる相手になることの方がよほど重要だということを、多くのご令嬢はわかっていない。

そして期せずしてそれを素でやってしまうアリシアは、一定の男性にとってとても魅力的なのだろう。

(とはいえ…なぁ)

最近のイリアの悩みの種である相手が向こうから歩いて来る。

(知っていてどうすることもできないのってなかなかつらい)

一つため息をついてイリアは座っていた椅子から立ち上がった。
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