61 / 142
幕間ー悔恨ー
しおりを挟む
(なぜこんなことになってしまったのかしら)
セルジオスとニコラオス、そしてイレーネを一緒に描いた絵画を手に持ち、イレーネは半ば呆然と考える。
先ほどから荷物の整理をしていたが一向に進まない。
侍女に手伝わせても良かったが、イレーネは自らの手で一つ一つの物を分けていた。
基本的に修道院へは何も持ち込みができない。
持っていけるのは思い出の品だけだ。
イレーネはセルジオスからもらった手紙、ニコラオスが幼い頃に作ってくれた栞などを丁寧に鞄にしまっていく。
しかし思い入れのある物を手に取るたびに、同じ考えが頭の中を巡っていた。
(私はどうすれば良かったのかしら)
もちろん、今ではイレーネも自身が間違いを犯したことを理解していた。
冷静に考えればなぜフォティアを害そうなどと思ってしまったのか。
まるで憑き物が落ちたように、あの激しかった思いは今ではもうイレーネの中には無い。
セルジオスを失ったのもニコラオスが亡くなったのもイレーネにはどうすることもできなかった。
自らできるのは唯一、自身の心をコントロールすることだけだったのに。
イレーネは現実を許容できなかったのだ。
(ああ、でも…ニコラオスの子は可愛かった。ニコラオスの産まれた時を思い出したわ)
自分の行動次第であの愛らしい孫と一緒に暮らす未来もあったのだろうか。
今ではもう望むべくもないけれど。
過去からの思いに囚われるあまり、建設的な未来を思い描けなかった。
修道院へ発つまであと3日。
一つの品を手に取るごとに、イレーネは過去の妄執を捨てていく。
これから先は亡くなった二人への祈りを捧げ続けよう。
いつか、また孫に会えるかもしれない日を夢に見ながら。
セルジオスとニコラオス、そしてイレーネを一緒に描いた絵画を手に持ち、イレーネは半ば呆然と考える。
先ほどから荷物の整理をしていたが一向に進まない。
侍女に手伝わせても良かったが、イレーネは自らの手で一つ一つの物を分けていた。
基本的に修道院へは何も持ち込みができない。
持っていけるのは思い出の品だけだ。
イレーネはセルジオスからもらった手紙、ニコラオスが幼い頃に作ってくれた栞などを丁寧に鞄にしまっていく。
しかし思い入れのある物を手に取るたびに、同じ考えが頭の中を巡っていた。
(私はどうすれば良かったのかしら)
もちろん、今ではイレーネも自身が間違いを犯したことを理解していた。
冷静に考えればなぜフォティアを害そうなどと思ってしまったのか。
まるで憑き物が落ちたように、あの激しかった思いは今ではもうイレーネの中には無い。
セルジオスを失ったのもニコラオスが亡くなったのもイレーネにはどうすることもできなかった。
自らできるのは唯一、自身の心をコントロールすることだけだったのに。
イレーネは現実を許容できなかったのだ。
(ああ、でも…ニコラオスの子は可愛かった。ニコラオスの産まれた時を思い出したわ)
自分の行動次第であの愛らしい孫と一緒に暮らす未来もあったのだろうか。
今ではもう望むべくもないけれど。
過去からの思いに囚われるあまり、建設的な未来を思い描けなかった。
修道院へ発つまであと3日。
一つの品を手に取るごとに、イレーネは過去の妄執を捨てていく。
これから先は亡くなった二人への祈りを捧げ続けよう。
いつか、また孫に会えるかもしれない日を夢に見ながら。
101
お気に入りに追加
2,784
あなたにおすすめの小説
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。
たろ
恋愛
幼馴染のロード。
学校を卒業してロードは村から街へ。
街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。
ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。
なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。
ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。
それも女避けのための(仮)の恋人に。
そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。
ダリアは、静かに身を引く決意をして………
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。
たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。
その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。
スティーブはアルク国に留学してしまった。
セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。
本人は全く気がついていないが騎士団員の間では
『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。
そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。
お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。
本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。
そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度……
始めの数話は幼い頃の出会い。
そして結婚1年間の話。
再会と続きます。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる