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悪役令嬢は秘密を暴く

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「ダグラス、マチルダはあなたの影の一員だったのかしら?」
「…は?」

私の問いかけに、ダグラスは何を言われたのかわからないとでもいうような顔をした。

ダグラスが第一王子だというのであれば、マチルダは影、もしくは影の関係者だったのではないか、そう思ったんだけど。
ダグラスとマチルダに年の差はあまりない。
マチルダが影だったとしたらちょっと若すぎる気もするけど、ああいう世界では年齢は関係ないともいうし。

子どもでも任務に従事するのだから。

「最初は二人がどこかのギルドで一緒になったことがあったのかな、とか、そこで恋人になったのかなと思っていたのだけど…」

そう、たとえば暗殺ギルドとか。
少なくとも二人は初対面ではなかった。
そして私が疑念を抱く程度には親密に見えたのだ。

「マチルダは恋人ではありません」

そうだろうね。
今ならその言葉も信じられる。

「それよりも、影って…。いったい何のことですか?」
心底わからないとでもいうようにダグラスは言う。

うん、やっぱりね。
ダグラスは平気な顔で嘘をつく。

私に見せていた顔はどこまでが本当だったのか。
すべてが嘘だったとは思わないけれど、本当のことばかりを言っていたとも思えない。

今になってみればわかる。
ダグラスは王子なのだ。
その姿勢はライアンよりもよほど、王子らしい。
おそらくダグラスがエレナの専属護衛になったのにも何か理由があるのだろう。

第一王子は王家を捨ててはいない。

私は友人に見せられた本を思い返す。

ダグラスルートで彼は王家を取り戻していた。
苦しむ国民を見捨てられず、ライアンの執政によって荒れた国をヒロインと共に立て直す。

私の起こした行動で多少の誤差が出ていたとしても、ダグラスというキャラクターの根本を変えることはないだろう。

「ダグラス・グラント。秘匿された第一王子は、あなたね」

私の声が、部屋の中に響いた。
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