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悪役令嬢は他の婚約者と出会う

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ところで、私の護衛は当然私を守るのが仕事なのだが。
その姿が見えない。

さすがに授業中も教室内に待機するというわけにはいかないため席を外してもらっていたが、授業時間外は勤務時間だ。

どうしたものか。
しばし考えたものの、所詮私の移動範囲は学園内なわけだし、危険などないだろうと判断して食堂へと向かうことにした。

オルコット学園には2つの食堂がある。
もちろん生徒はどちらの食堂も使えるのだが、そこはそれ、暗黙の了解があり、レストランのようにサーブしてもらえる第1食堂は高位貴族が、ビュッフェスタイルの第2食堂は下位貴族が利用することが多い。

正直私は気楽な第2食堂に行きたいのだが、立場上初日は無難に第1食堂に行った方がいいのだろう。

ひとり飯も私自身は気にしないけれど、周りの目は若干痛いわね。
そう思いながら4人がけテーブルに着き、今日のおすすめランチなるものを注文すると私は周囲を観察し始めた。

ふむ。
やはり入学時点ですでにある程度の人間関係は構築されているようね。
まぁ、それはそうだろう。
なんと言っても、実は貴族の社交界なんて狭い世界なのだから。

そう思うとエレナは幾分出遅れた感があるわ。
これから仲の良い友だちなんてできるのだろうか。
珍しくも少し弱気になってしまうのは、いつも何だかんだと言いながらツッコミを入れてくれるダグラスがいないからか。

おそらくそれなりに著名なシェフの作ったせっかくのランチも味気なく感じてしまいそうだ。

「突然の声かけ失礼いたしますわ。相席よろしいかしら?」

そんな風に少しだけ意気消沈していた私に対して、不意に涼やかな声がかけられた。
見ればアッシュブラウン色の髪にガーネット色の瞳の美少女が立っている。

おお。
美人だ。
目の保養だ。
そしてスタイルも良い。

思わず感嘆の思いで上から下まで眺めてしまう。
おじさんのエロ目線とかではないので許して欲しい。
だって綺麗なものは眺めたいでしょう?

美術鑑賞と同じような気持ちなのだが、たしかに凝視されるのは嫌だろうと思い私は目の前の美少女に視線を合わせた。

「もちろんですわ」
私の返答に彼女が椅子に腰かけるのを見守りつつ、はて誰だっただろう?と頭の中の人物手帳をひっくり返す。

「はじめまして。私クレア・スタインと申します。不躾にもこちらから声をかけてしまい失礼いたしました」

オーダーを取りに来たウェイターに注文をしてから、クレアは丁寧に挨拶してくれる。

スタイン家といえばグラント国において伯爵の地位を賜っているはず。
その上で大切なのは…彼女が騎士団長の息子、そう、エマの攻略対象であるオーウェン・ブラントの婚約者だということだ。

ゲームでは名前しか出てこなかった彼女が、今まで何の交流も無かったエレナになぜ突然声をかけてきたのか。

いや待って。
そうだ、クレアもまた同じクラスの所属。

どう考えてもそのからみとしか思えない。

この出会いが吉と出るのか凶と出るのか、今の時点では私にはわからなかった。
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