異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

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レイラ

狂気の沙汰

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「……」

パティリエカとシェイナ、それぞれが作ってくれた<外套>を、まるで我が子からの贈り物を自慢するかのようにエギナ達の前で披露しつつ笑顔で語るレイラを、エギナや兵達は唖然としながら見ていた。

この時の彼女の<心理>を、誰も理解することができなかった。

当然だ。彼女はロボットであって人間ではない。ロボットである彼女に<心>はなく、人間のように別れを惜しんだり悲しんだりもしない。必要なことをただこなすだけの<道具>なのだ。ゆえに理解するべき<心理>がそもそもないのだ。

レイラも、自身の振る舞いが理解されるとは考えていなかった。でも、それでよかった。エギナ達にとって<異様な存在>であればこそ、単独で魔王討伐に挑むという、人間からすればそれこそ、

<狂気の沙汰>

とも言える行いをすることについても、むしろ納得してもらえるだろうという読みもあった。

その読み通り、

「……分かった……お前が私達とはやっぱりまったく違う存在だということがよく分かったよ……

お前が、神が遣わした<救いの手>なのか、はたまた魔王とは別の何かが寄越した<怪物>なのかは、もう問わない……」

エギナは、突き放すようにそう言った。だが、彼女は、キッとレイラを睨みつけ、付け足す。

「だが、今回、シェイナとパティリエカを欺いたことについては、お前自身が二人に説明しろ…! 二人の前に跪いて詫びろ……! 私は、二人に恨まれるなぞまっぴらごめんだ!! お前が自分で、二人に謝罪するんだ! 絶対に……!」

それが、エギナの本音だった。レイラに対する不信感も込みで、それもひっくるめて、今の彼女が言葉にできるすべてをそこに込めた。

『絶対に帰ってこい』

と……

そんなエギナの<想い>を受け、レイラは、シェイナが作ってくれた外套を背嚢に仕舞いながら、

「承知いたしました。ご命令とあらば私は、それを果たすべく最善を尽くします」

そう応えて、改めてエギナに向き直り、まっすぐに見つめて、

「魔王の撃破は、確定しています。私であれば、それは確実に果たせます。その上で帰還を果たすというのは困難なミッションになりますが。人間ひとからそれを命じられたのであれば、果たさないわけにも参りませんね」

にっこりと、これまでで最高の笑顔できっぱりと告げた。一切の迷いのない姿だった。ロボットだから迷うことなどないのは当然なのだが。



「では、こちらを預かっていただけますでしょうか? 可能な限り取りに戻りますので」

「違うだろ。『可能な限り』じゃないだろ。絶対に取りに戻れ。絶対にだ!!」

「ご命令、承りました」

こうしてレイラは、シェイナとパティリエカが作ってくれた外套を収めた背嚢をエギナに預けて改めて笑顔で応え、いよいよ、魔王討伐へと向かったのであった。

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