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レイラ

ラデノセシオン

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<ラデノセシオン>

<王都ルデニオン>の西二十キロに位置し、国王の信の厚い公爵が統治する、<ベル・ルデニオーラ>においては五本の指に入るいわば<大都市>であった。

しかし……

『悲鳴と怒号。獣の咆哮。非常事態と推定』

レイラの聴覚センサーには、明らかに異常な状況が捉えられていた。彼女の方から見える範囲(街の東側)ではそれほど騒がしい様子も窺えないので、おそらく西側が襲撃を受けている状態なのだろう。

なのでレイラは再び高速で移動。賤民の街を覆う柵をハードル走のハードルのごとく軽々と飛び越え、少し心配げな表情も見せながらもさほど慌てる様子もない人々の間を走り抜け、城壁の近くまで来ると深く踏み込んで大ジャンプ。高さ十メートルはある城壁の上に飛び乗り、備えられていた大型弩砲の投擲体二本を拝借。

「え?」

「なんだ?」

自分達が配されている場所とは反対側が襲撃を受けているとはいえさすがに身構えてはいた兵士ですらやはり何が起こったのか認識できないままに城壁内に飛び降り、賤民街のそれとは違う石造りの頑丈な建物の屋根の上を走り、ルデニオンの<王城>よりは小振りだがそれでも十分に立派な城さえ僅か五歩で飛び越えて、最短距離を駆け抜けた。

すると、前方の城壁の上では兵士達が慌ただしく大型弩砲を絶え間なく放ち続けているのが確認できた。

さらに、上空には翼竜型のデモニューマ。その数、四。

大型弩砲は上空だけでなく地上にも向けて放たれているので、地上にもデモニューマがいるのだろう。

兵士の数も大型弩砲の数も、ルデニオンよりもはるかに多い。つまりこれは、ルデニオンには防衛用の最低限の戦力だけを残し、よりデモニューマの脅威に曝されている方に多くの戦力を回しているということを表している。

ここで討ち漏らしたデモニューマが、ルデニオンにまで到達しているというわけか。

しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。レイラは、兵士達が放つ大型弩砲の<弾幕>をかいくぐろうとしている翼竜型のデモニューマ目掛けて、城壁の上に着地したと同時に手にした投擲体を撃ち出した。

それらは、回避運動中で自由に動けなかった翼竜型デモニューマ二体の頭を立て続けに粉砕、撃墜し、レイラはさらにその場にあった投擲体二本を手に取り、やはり間髪入れず残る二体目掛けて放った。同じく、回避運動中で自由に動けない状態の時を狙って。

一体は頭を粉砕。最後の一体は、頭こそ外れたが翼に命中し大きく破損、と同時に姿勢を崩して地上へと落下した。

『やはり、あの翼が何らかの力場を発生させることで空を飛ぶわけですか』

情報を得つつ、レイラは一瞬たりとも止まることなく、城壁を飛び降りたのだった。

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