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レイラ

早期警戒網

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ブルーディスが案じるように、普通の人間であれば完全に不眠不休のレイラの様子に心配もするだろう。しかし、シェイナとパティリエカには余計な心配を掛けないように工房の件については話していない。工房の職人達にも、一応は口止めしてある。

さりとて『人の口に戸は立てられぬ』という言葉もあるようにいずれはシェイナやパティリエカの耳にも入るだろうが、その時はその時で対応すればいい。『ですが、ご覧の通り私は平気ですよ』と、実際に何の問題もない状態なのもアピールできるというのもあるだろう。

そのために、完全に寝入ってから外出するようにしているわけで。シェイナとて、『大人は子供が寝る時間になっても起きていて子供が起きる時間には起きているもの』という程度の認識はある。

ただ、夜中に目が覚めてしまうことが何度もあってその度にレイラがいないのではさすがに『いつ寝ているのか?』と思われる可能性があるので、その場で寝かしつけてもらえるようにニューティを手配したという事情もあった。

そしてニューティも、怖い夢を見て眠りが浅くなってしまったシェイナを、

「大丈夫ですよ、あなたはもう安全なんです……」

と、レイラの口調を真似てなだめてくれたので、シェイナはしっかりと睡眠をとれるようになっていた。

なお、パティリエカの方は、今よりずっと幼い頃から一人で寝るようにされてきたので、慣れてはいるようだ。



そうしてシェイナとパティリエカが屋敷で眠りについている一方で、レイラは、工房で、新型弩砲の制作を急ピッチで進めていた。職人達も自発的に二交代制で新型弩砲の制作を行うようになった。

『デモニューマとの本格的な<戦争>が始まる』

と、肌で感じているのだろう。

それまでは、割と雑談交じりで行っていた作業も、ほとんど口を開く者もなく、緊張感をもって臨んでいる。

王宮からも『レイラ殿の望みには極力応えるように』という通達も出ていた。そして、兵士達による新型弩砲の完熟訓練もすでに始まっている。



なお、ここまでレイラ達を中心に扱ってきたため触れてこなかったが、城壁の外に暮らす<賤民>達も、まったく無防備にデモニューマの脅威に曝されているわけじゃない。彼らは彼らで自主的に備えて、夜なども、<自警団>を結成して見回りを行っている。

腕自慢の男達十人が一つの<隊>となり、松明を手に賤民達の街を取り囲む柵に沿って哨戒作業を行っていた。そしてそれは、実質的に、

<王都ルデニオンとしての早期警戒網>

でもあったのだった。

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