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レイラ

職人

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こうして翼竜型のデモニューマさえ瞬く間に撃破したレイラの評価はさらに高まった。

「我々は最大限、貴女に協力いたします!」

軍の幹部達もやはり平伏せんばかりの勢いで敬意を示してくれた。

「お心遣い、感謝いたします」

レイラも深々と頭を下げ、謝意を示す。

これにより、さらに情報がレイラに集まってくるようになった。国に残る文献などに目を通す許可ももらえた。デモニューマや魔王なるものの詳細を知るためである。特に、デモニューマの襲撃の記録についてはまず確認する。そこには、現在、前線となっている街とそこでのデモニューマとの戦いについても詳しく記されていた。

『現状、ここ<ルデニオン>への攻撃が散発的なのは、やはり他に集中的に襲撃を受けている街があるからですか。急がなければなりません』

レイラは、自身の能力を把握している。<ルデニオン>を守りながら他の街を救うということはできないことも承知している。

『せめて小隊規模のタリアP55シリーズがいれば、即時対応も可能なのですが』

とは考えつつも、

『ないものを期待しても状況は変わりません。現状で可能な対応を行うだけです』

と、その辺りについては、冷酷なまでに合理的に対処できてしまう。

だからこそ、今は<戦略を練るための準備期間>とし、その一方で、シェイナの社会適応のための技能習熟期間ともする。

「はい。上手です。今はまだ時間がかかってもかまいません。一つ一つ丁寧に手順を踏むことを心掛けてください。反復練習により最適化が図られ、結果、早く行えるようになります」

夜。王宮での軍議の後、屋敷に戻ってシェイナの調理実習を行い、それを終えて彼女が眠りにつくと今度は、何度か空を見上げつつ、大型弩砲をはじめとした各種兵装を製造している工房へと赴き、それらの再設計と改良、及び製造まで担当した。

<魔王討伐>のために、<ルデニオン>そして<ベル・ルデニオーラ>を離れることになるのを見越し、防衛力を高めるのが目的だった。

「こいつはすげえ……」

朝、兵装の開発・製造を担当している職人達も、彼女が再設計、改良を加えた新型の大型弩砲のテストに参加。自分達でも実際に使ってみて、百メートル先の的に全弾命中した上に扱いやすさも向上していることを実感、感嘆した。

レイラは説明する。

「ご覧の通り、命中精度を二十パーセント上げ、次弾の装填に掛かる時間も六十パーセント削減しました。その分、工作の精度も高いものが要求されますが、皆さんであればこなせると私は考えます」

彼女の言葉に、職人達も奮起。

「おう! 任せてくれ! 俺達の国は俺達で守る! そのために協力してくれたことに感謝する!」

「ああ! 負けてられねえ!」

「やって見せてやらあ!!」

もちろん、中には、どこの誰とも知れない余所者の、しかも<女>に、自分達を超える仕事を見せ付けられたことを快く思わない者も少なからずいたものの、それについては人間達に対処を任せることにする。

『私はあくまで、この国を守るための手段を提示するだけです。実際に国を守るのは、人間達自身の手で行われなければならないでしょう。

私は一体しか現存しないのですから』

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