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レイラ

デモニューマ

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それは、一見すると立派なたてがみを有したライオンのようにも見える獣だった。

ただ一般的には、ライオンの雄は狩りをしないと言われている。ましてや、群れでの狩りなど。

しかも野生の獣は、本来、臆病であり、多数の人間がいるようなところへは自ら望んで近付くことはまずない。あくまで、狩りが上手くいかず腹をすかして追い詰められて仕方なく近付くか、何らかの理由で迷い込むという形に限られるだろう。

けれどその獣は、明らかに人間を狙って、意図して柵を飛び越え、街へと侵入してきた。

シェイナを襲った<T-REX>に似た獣とは別の種のようだが、本質的には変わらない、非常に危険な存在であると、レイラは瞬時に察した。

しかし、危険なのはその獣だけではなかった。

てーっっ!!」

彼女の聴覚センサーが捉えたその声の直後、城壁の上から何かが高速で飛来するのも探知。一瞬、視線をそちらに向けるだけで、何が起こったのかも認識する。

城壁の上に、大型の弩砲と思しき装置と、それを操作する人間の姿。

空中には、弩砲から放たれたのであろう、明らかに金属製の投擲体。その数、二十以上。

獣を狙って放たれたのは分かるものの、人々の避難は済んでいない。このままでは、砲撃による人的被害が出る可能性が高い。

その状況を確認したレイラは、瞬時に、城壁の外に暮らす人々の<役割>を察した。

城壁の内側にも街があり、いや、本来はそこが<街>だったのだろう。しかし城壁の外にも人々が住み着いて、それが、新たに<街>を形成しているということだ。

だがその人々を、この地を管理する統治者は、獣の襲撃に備えた、まさに<肉の壁>として利用している。ここに住む人々が獣に襲われている間に大型弩砲の一斉射により、人々ごと獣を撃破する。

それが、この地の<戦法>か。

レイラが運用されていた世界ではおよそ許されないあるものの、現状で推測される防衛力から鑑みると、守るべきものの優先順位が厳しく設定されているのだろうというのは察せられた。

だから、ロボットである彼女は、人間のその判断に対しては異を唱えることはない。と同時に、目の前で危険に曝されている人命を蔑ろにすることもできない。

ゆえに、彼女は、この時点で発揮し得る最大稼働で状況に対処した。

たまたまその場に居合わせた子供に命中する軌道を取る投擲体を空中で掴み、それをそのまま、他の人間に襲い掛かろうとしていた獣の頭部に投げつけ、それが命中するのとほぼ同時に、別の獣の首に自らの<先にペグのようなものが付いた髪>を巻きつけると、ほとんど抵抗なく彼女の髪が首に潜り込み、一瞬で獣の頭部が胴体から切り離されたのだった。

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