上 下
79 / 104

大人を舐める子供

しおりを挟む
『教師が生徒を殴れなくなったから舐められるようになった』

そんな風に言う者がいる。しかし、それは本当だろうか? 教師が殴らなくなったから生徒は教師を舐めるようになったのだろうか?

実際に教師を舐め切っていた生徒達は、教師が殴ってこないから舐めているのだろうか?

確かにそういう者もいるかもしれない。しかし、少なくともここにいる椎津琴羽しいづことははそれには当てはまらなかった。

何故か? 理由は簡単である。『殴られ慣れている』からだ。だからそもそも教師が殴ろうと殴るまいと彼女にとっては大した問題ではなかった。むしろ『体罰が禁じられている』今なら、殴ってくれた方が大きな弱みを握れるからありがたかった。

『体罰された』と訴え出れば、その教師はお終いなのだから。

『だから体罰禁止とかしちゃダメなんだ』

そう言う者もいるだろう。しかしそれで本当にこの椎津琴羽しいづことはを大人しくさせることができるのか? 部屋の端から端まで吹っ飛ばされるほど腹を蹴り飛ばされても、逆に、蹴り飛ばした姉に『いつか復讐してやる』と恨みを募らせるような彼女を怯ませることができるほどの<体罰>とは、果たしてどれほどのものなのか?

体罰が明確に禁止されていなかった頃でさえ、生徒に大怪我をさせればそれは問題になった筈である。そして、確実に大怪我をするほどの暴力でなければ、椎津琴羽しいづことはは屈しない。

それを、玲那はよく知っていた。何故なら彼女自身がそうだったからである。小学校を卒業する頃にはもう、両親に殴られてもそれはただ恨みを募らせることにしかならなかった。真っ向から歯向かっても体力的に勝てないのは分かっていたから<従っているフリ>を、<親の言うことを聞く良い子のフリ>をしていただけだった。

その、<良い子の仮面>の裏で、両親の殺害計画を練りながら。

そんな状態だったから、教師の体罰など、蚊が刺した程度にしか感じなかった。ひるみもしないしおびえもしない。

人間は、暴力にさえ、ある程度までは慣れることができてしまうのだ。そして暴力に慣れてしまった者を暴力で本当に従わせることはできない。暴力で抑え込まれたら、より強大な暴力で反抗することを画策するだけである。

そしてそれは結局、『力で相手を従わせようとした』ことが招いた結果なのだ。

玲那はそのことを骨の髄まで思い知ってきた。だから彼女は生徒を叩かない。そんなことをすれば自分の首を絞めるだけだと知っているから。そんなことをする大人や教師を舐め切っていたのだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...