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教育委員会
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『あっち行っててくれる?』
生意気な態度で自分にそう言ってくる琴羽に対しても、玲那はまるで揺るがなかった。穏やかな笑顔のままで、それでもほんの少しだけ困ったような顔をしながら手を合わせ、
「ごめんなさい。先生は真猫さんの傍を離れる訳にはいかないの。そういう決まりだから」
と言った。
そんな玲那に琴羽は、不機嫌そうに口を歪めて、
「なにそれ!? それってつまりこいつをエコヒイキしてるってこと!? 先生がそんなことしていいの!? 教育委員会に訴えてやるわよ!」
とすごむ。
なのに玲那はただ困ったように微笑みながら、
「あら~、それは困りましたね。先生はその教育委員会から真猫さんの傍にいるように言われてきたんです。どうしましょう?」
と受け流してしまった。
すると、教育委員会を盾にとるという、教師にとっては無視できない<怖い手段>である筈のそれを難なく凌がれてしまったことで、琴羽は一気に追い詰められた。これまでは、そう言えばだいたいの教師は怯むか、逆に頭に血を上らせてキレるかするだけだったのだ。もしそれでキレて手でも上げてくればそれこそ教育委員会に訴えるか、マスコミにでも密告すればいいと思っていた。
今より幼い頃、母親や二人いる姉達に散々殴られてきたので、教師に殴られる程度のことは怖くもなかった。手加減なく腹を蹴られて部屋の端から端まで吹っ飛んだこともある。それに比べれば教師の体罰など屁でもない。むしろそうやって殴ればそれが<弱み>になることを、琴羽は知っていたのだ。
なのに、今、絵の前にいる教師は、そんな自分の挑発に乗ってこない。
もしこれが、ビビッてるだけならもうそれでよかった。苦も無く手玉にとることができた。なのに、こいつはビビってる様子さえ見えないのだ。平気なフリをしてるだけなら琴羽はそれをあざとく見抜く。が、この教師にはそれがない。
『おかしい…! こいつ、頭がおかしいんじゃないの!?』
そう混乱しながらも必死に頭を巡らせて次の手を繰り出す。
「バ…、バカじゃないの!? そんなウソ、バレバレなんだから! ネットに流してやる! 晒してやる!!」
そうだ。ネットに晒してやれば、世間がこの教師をボッコボコに袋叩きにしてくれる。実際、姉の同級生がそうやって追い詰められて転校していったと聞いた。それならこいつだって……!
などと思っていたのに、目の前の教師はそれでも、
「まあ、それは怖いですね」
と、少しも怖そうな様子もなく言ったのだった。
生意気な態度で自分にそう言ってくる琴羽に対しても、玲那はまるで揺るがなかった。穏やかな笑顔のままで、それでもほんの少しだけ困ったような顔をしながら手を合わせ、
「ごめんなさい。先生は真猫さんの傍を離れる訳にはいかないの。そういう決まりだから」
と言った。
そんな玲那に琴羽は、不機嫌そうに口を歪めて、
「なにそれ!? それってつまりこいつをエコヒイキしてるってこと!? 先生がそんなことしていいの!? 教育委員会に訴えてやるわよ!」
とすごむ。
なのに玲那はただ困ったように微笑みながら、
「あら~、それは困りましたね。先生はその教育委員会から真猫さんの傍にいるように言われてきたんです。どうしましょう?」
と受け流してしまった。
すると、教育委員会を盾にとるという、教師にとっては無視できない<怖い手段>である筈のそれを難なく凌がれてしまったことで、琴羽は一気に追い詰められた。これまでは、そう言えばだいたいの教師は怯むか、逆に頭に血を上らせてキレるかするだけだったのだ。もしそれでキレて手でも上げてくればそれこそ教育委員会に訴えるか、マスコミにでも密告すればいいと思っていた。
今より幼い頃、母親や二人いる姉達に散々殴られてきたので、教師に殴られる程度のことは怖くもなかった。手加減なく腹を蹴られて部屋の端から端まで吹っ飛んだこともある。それに比べれば教師の体罰など屁でもない。むしろそうやって殴ればそれが<弱み>になることを、琴羽は知っていたのだ。
なのに、今、絵の前にいる教師は、そんな自分の挑発に乗ってこない。
もしこれが、ビビッてるだけならもうそれでよかった。苦も無く手玉にとることができた。なのに、こいつはビビってる様子さえ見えないのだ。平気なフリをしてるだけなら琴羽はそれをあざとく見抜く。が、この教師にはそれがない。
『おかしい…! こいつ、頭がおかしいんじゃないの!?』
そう混乱しながらも必死に頭を巡らせて次の手を繰り出す。
「バ…、バカじゃないの!? そんなウソ、バレバレなんだから! ネットに流してやる! 晒してやる!!」
そうだ。ネットに晒してやれば、世間がこの教師をボッコボコに袋叩きにしてくれる。実際、姉の同級生がそうやって追い詰められて転校していったと聞いた。それならこいつだって……!
などと思っていたのに、目の前の教師はそれでも、
「まあ、それは怖いですね」
と、少しも怖そうな様子もなく言ったのだった。
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