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学校の体質

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椎津琴乃しいづことのが他人を敬えない、問題を抱えた子供であることは分かった。しかしさらに重要なのは、ここが<学校>であるということだ。今の時点で問題を起こしていない生徒を、『問題を起こすかもしれない』というだけで隔離することはできない。

実際には、既にこれまでも他の生徒と小さな諍いを何度も起こしてはいるものの、それらもここ吉泉きっせん小学校においては、<子供同士のケンカ>として、<イジメの疑い案件>とさえ認定せず、通り一辺倒な口頭注意だけで済ませてきた。

しかしそれらについて、琴羽は、

『反省してるふりだけしてれば安心するんだから大人ってちょろい』

と、一層、大人を舐めて見くびる結果に繋がっていただけだった。

玲那は、そういう吉泉きっせん小学校の対応に危惧を抱いたが、あくまで真猫まなの為の臨時驚委員でしかない彼女が、学校の方針、いや、それ以上に『厄介事は見て見ぬふりをして自然に収まるのを待つ』という、学校の<体質>そのものについて口出しできる立場になかった。

ドラマなどでは、熱意溢れる主人公がそういったことに敢然と立ち向かいやがて学校組織そのものを変えてしまうというのが定番の展開だろうが、そのようなことがそうそうできる筈もないことは、校内でのイジメについて見て見ぬふりをして被害者が自殺してから『イジメがあったとは気付きませんでした』『力が足りませんでした』と、カンニングペーパーでも読んでいるかのような定型文による謝罪が繰り返されることからも分かる筈である。

そこまででなくとも、ネットなどを見るだけでも、対処してくれなかった学校への恨み節が溢れていることから、現実では滅多にあることでないのは分かるだろう。

そういう事例を基にした映画などで、『感動の実話!』などと銘打たれるのは、そう言えば耳目を集めると思われている程に例外的なことだからだ。

玲那には、そういう形で学校を変えてしまえるほどの熱意も力量もない。あくまで、一対一で子供と向き合った時に、その子の為に並々ならぬ集中力と情熱を発揮できるだけである。これでも十分に例外的なことかもしれないが。

故にこれまでは、椎津琴羽しいづことはのような生徒がいるのは分かっていても、そちらまでは手が回らなかった。だが、現在担当している真猫まなに関わってくるのであれば話は別である。

椎津琴乃しいづことのさんですね。真猫まなさんと仲良くしてあげてくださいますか?」

と、柔らかな笑顔で話し掛けたのだった。

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