上 下
65 / 104

お絵描き

しおりを挟む
日葵ひまりも、真猫まなと同じで、精神的に落ち着いてさえいれば気性の穏やかな朗らかな女の子だった。

決して巧いとは言い難いものの絵を描くのが好きで、以前から休憩時間などには真猫まなの近くに来ては絵を描いていた。

真猫まなちゃん、今日はお魚の絵、描くね」

そう言って日葵ひまりは自分のスケッチブックにプラスティック色鉛筆で大きく魚の絵を描き始める。ニコニコと楽しそうに絵を描く姿がほほえましい。

すると真猫まなも、自分のスケッチブックにプラスティック色鉛筆でぐりぐりと線を描き始めた。しかしそれはやはり到底<絵>と言えるものではなかったけれど、日葵ひまりにとっては『真猫まなちゃんと一緒にお絵描きしてる』というのが大切だったのだろう。

ちなみに日葵ひまりは、学習面ではそれほど顕著な遅れはなかった。事情を知らない人間から見ても『あまり勉強は得意じゃないんだな』と思われる程度だと考えられる。

ただ、話してみるととても<天真爛漫>と言うか、物事を深く考えていないのが分かるので、勘のいい人間だと『あれ?』と察してしまうことはあるかもしれない。

しかし二人にとってはそんなことの方が些細な問題だった。

真猫まなちゃん、上手に色鉛筆使えるようになったね」

感心したことは素直に口に出る日葵ひまりがそう声を上げると、それが気持ち良かったのか、真猫まなはさらにぐりぐりとプラスティック色鉛筆を調子よく走らせた。

そんな様子も玲那はしっかりと見守っている。

こうやって、桃弥とうやや自分以外の人間とも交流できるようになるというのは喜ばしいことだった。

そして日曜日の午後。笹蒲池家の<母屋>の方に訪ねてきた人物がいた。

インターホンが鳴らされ、母屋の方で待機していたハウスキーパーがそれに出る。

「どちら様でしょうか?」

その問い掛けに対して返ってきた返事は、

真猫まなちゃん、いますか?」

そしてインターホンのカメラに写っていたのは、にこやかな表情をした日葵ひまりだった。

自宅にまで遊びに来たのだ。

玄関を開けて改めて応対に出ると、日葵ひまりの脇には、いかにも人の良さそうな中年の女性が立っていた。

その女性が、ハウスキーパーの姿を見た途端、会釈して、

「すいません。うちの娘が真猫まなさんと遊びたいと言うので、もしご迷惑でなければ遊んでやっていただけませんか?」

と切り出した。

日葵ひまりの母親であった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。 「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」 「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」 「・・・?は、はい」 いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・ その夜。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...