53 / 104
離れ
しおりを挟む
人間はとかく、自分から見える部分、自分が見たい部分だけで他人を評価しがちである。もとから<変わり者>という評価を周囲から受けていて、その上、祖父の葬儀にさえ姿を見せなかったことで、<恩知らずの薄情者>という評価が付け加えられてしまった。それもあって、両親すら彼のことをずっと避けている。
そんな両親にとっては、自分の息子以上に<変わっている>真猫などそれこそ受け入れられなかった。
真猫をどうするかということで親類が集まった時、
「まったく、桃弥も大概だったけど、それに輪をかけてなんて……」
とこぼしたことをきっかけに、
「そうだ。桃弥がいるじゃないか。もしかしたら変わり者同士お似合いかもしれないぞ」
などと親類の一人が桃弥に真猫を押し付けることを思い付いた時にも、反対はしなかった。
結果としてそれは正解だったものの、内心では『何かあっても桃弥の責任になる』と、責任を押し付ける気満々だったのも事実だった。
桃弥自身、そういう両親や親類の思惑を承知した上で真猫を引き取ったので、それについては気にしてない。
ただ、『浅ましいな』とは思っていた。
そういう両親や親類に係わられたくないので、彼は、自分が今、どれだけの収入があるのかといったことについては一切、教えていない。実は、真猫と一緒に住んでいるこの邸宅は、書類上は<離れ>であり、<母屋>となる家はすぐ隣に建っている、ごく標準的な2LDKの注文住宅で、表向きはそちらに住んでいることになっている。
だから、一度も訪問したことすらないほどに非常に疎遠なこともあり、両親や親類は、『若くして注文住宅を建てられるほどの収入はあるらしい』程度の認識しかなかった。
現在、そちらの家は実質的には<事務所>として使われており、彼に仕事を依頼してくる<工房>の担当者との打ち合わせや、普段は一切受け付けていないもののどうしても断り切れなかったマスコミなどからの取材を受ける場合などでたまに使われる程度で、維持管理についてはハウスキーパーらに任せきりであり、彼女らの待機場所にもなっていた。
ちなみに、公にされている<現住所>もそちらなので、ファンからの手紙やプレゼントの類も<事務所>に届くようになっている。
もっとも、彼がそれらに目を通すことも滅多にないが。丸ごと、雑事の処理を依頼している<会計士>に転送していたりするのだった。
そんな両親にとっては、自分の息子以上に<変わっている>真猫などそれこそ受け入れられなかった。
真猫をどうするかということで親類が集まった時、
「まったく、桃弥も大概だったけど、それに輪をかけてなんて……」
とこぼしたことをきっかけに、
「そうだ。桃弥がいるじゃないか。もしかしたら変わり者同士お似合いかもしれないぞ」
などと親類の一人が桃弥に真猫を押し付けることを思い付いた時にも、反対はしなかった。
結果としてそれは正解だったものの、内心では『何かあっても桃弥の責任になる』と、責任を押し付ける気満々だったのも事実だった。
桃弥自身、そういう両親や親類の思惑を承知した上で真猫を引き取ったので、それについては気にしてない。
ただ、『浅ましいな』とは思っていた。
そういう両親や親類に係わられたくないので、彼は、自分が今、どれだけの収入があるのかといったことについては一切、教えていない。実は、真猫と一緒に住んでいるこの邸宅は、書類上は<離れ>であり、<母屋>となる家はすぐ隣に建っている、ごく標準的な2LDKの注文住宅で、表向きはそちらに住んでいることになっている。
だから、一度も訪問したことすらないほどに非常に疎遠なこともあり、両親や親類は、『若くして注文住宅を建てられるほどの収入はあるらしい』程度の認識しかなかった。
現在、そちらの家は実質的には<事務所>として使われており、彼に仕事を依頼してくる<工房>の担当者との打ち合わせや、普段は一切受け付けていないもののどうしても断り切れなかったマスコミなどからの取材を受ける場合などでたまに使われる程度で、維持管理についてはハウスキーパーらに任せきりであり、彼女らの待機場所にもなっていた。
ちなみに、公にされている<現住所>もそちらなので、ファンからの手紙やプレゼントの類も<事務所>に届くようになっている。
もっとも、彼がそれらに目を通すことも滅多にないが。丸ごと、雑事の処理を依頼している<会計士>に転送していたりするのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
♪ 人生ランランラン ♪ ~妻と奏でるラヴソング~
光り輝く未来
現代文学
『あなたの仕事は誰の役に立っていますか? 誰を幸せにしていますか?』
先輩が手にしていたのは『お客様の幸せを売る営業マン』という本だった。
「モノを売っちゃダメなのよ。お客様の幸せを売るのが私たちの仕事なの」
その言葉が転機となった。食品会社の営業マンだったわたしは、顧客目線の提案を続けてバイヤーの信頼を勝ち取り、広域量販課で売り上げ上位の常連になった。更に、トップになると、出世の階段が目の前に現れた。課長、支店長、支社長と順調に上っていった。
しかし……、
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる