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離れ

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人間はとかく、自分から見える部分、自分が見たい部分だけで他人を評価しがちである。もとから<変わり者>という評価を周囲から受けていて、その上、祖父の葬儀にさえ姿を見せなかったことで、<恩知らずの薄情者>という評価が付け加えられてしまった。それもあって、両親すら彼のことをずっと避けている。

そんな両親にとっては、自分の息子以上に<変わっている>真猫まななどそれこそ受け入れられなかった。

真猫まなをどうするかということで親類が集まった時、

「まったく、桃弥とうやも大概だったけど、それに輪をかけてなんて……」

とこぼしたことをきっかけに、

「そうだ。桃弥とうやがいるじゃないか。もしかしたら変わり者同士お似合いかもしれないぞ」

などと親類の一人が桃弥とうや真猫まなを押し付けることを思い付いた時にも、反対はしなかった。

結果としてそれは正解だったものの、内心では『何かあっても桃弥とうやの責任になる』と、責任を押し付ける気満々だったのも事実だった。

桃弥とうや自身、そういう両親や親類の思惑を承知した上で真猫まなを引き取ったので、それについては気にしてない。

ただ、『浅ましいな』とは思っていた。

そういう両親や親類に係わられたくないので、彼は、自分が今、どれだけの収入があるのかといったことについては一切、教えていない。実は、真猫まなと一緒に住んでいるこの邸宅は、書類上は<離れ>であり、<母屋>となる家はすぐ隣に建っている、ごく標準的な2LDKの注文住宅で、表向きはそちらに住んでいることになっている。

だから、一度も訪問したことすらないほどに非常に疎遠なこともあり、両親や親類は、『若くして注文住宅を建てられるほどの収入はあるらしい』程度の認識しかなかった。

現在、そちらの家は実質的には<事務所>として使われており、彼に仕事を依頼してくる<工房>の担当者との打ち合わせや、普段は一切受け付けていないもののどうしても断り切れなかったマスコミなどからの取材を受ける場合などでたまに使われる程度で、維持管理についてはハウスキーパーらに任せきりであり、彼女らの待機場所にもなっていた。

ちなみに、公にされている<現住所>もそちらなので、ファンからの手紙やプレゼントの類も<事務所>に届くようになっている。

もっとも、彼がそれらに目を通すことも滅多にないが。丸ごと、雑事の処理を依頼している<会計士>に転送していたりするのだった。

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